半導体のボトルネックは、材料で解けるのか。米商務省がAIと量子技術のスタートアップ、SandboxAQに5億ドルを拠出。PFAS代替からレアアースフリー磁石まで、材料のゲームチェンジに踏み込む狙いが示されました。
CHIPSプラス法で材料イノベーションを直撃 強靭化と内製化を同時に進める米国
米商務省は6月17日、CHIPSおよび科学法に基づき、SandboxAQへの5億ドル助成を発表しました。対象はAI駆動の材料探索プラットフォームの加速で、半導体材料のボトルネックとサプライチェーンリスクへの対処を目的としています。SandboxAQは2022年にアルファベットから独立し、AIや量子暗号関連のソリューションを手がける企業です。助成プログラムは四つの柱で構成され、PFASを使わない化学物質、次世代高純度触媒、レアアースフリー磁性材料、半導体施設向けバックアップ電源の先進電池の開発が明記されました。特にネオジム系永久磁石の世界生産の九割超を中国が握る現状を踏まえ、米国内産元素による代替確立で海外依存リスクの低減を狙います。バックアップ電源についても、リチウムやコバルトなど中国依存が大きい重要鉱物からの脱却を見据え、国内で入手可能な材料を用いた固体またはハイブリッド電池の開発に資金が投じられます。
発表に際し、ハワード・ラトニック商務長官は、半導体サプライチェーンの強化と国家安全保障の確保へのコミットメントを強調しました。重要材料の発見とイノベーションを加速し、外国支配下の材料への依存を下げる意義が示されています。加えて商務省は、助成と同時にSandboxAQの少数株主として株式を取得し、支配権を持たない形で関与を深めます。商務省傘下のNISTは2025年9月に先端半導体やAI、量子技術の研究開発プロジェクト募集を開始し、2026年5月には量子コンピューティング関連の米国内企業9社に総額20億1,300万ドルを拠出しており、今回の決定はその流れを継ぐ動きです。プロジェクト申請の受付は2029年9月30日まで継続され、助成の継続性と裾野拡大が示唆されます。同社は今後、米国の製造パートナーと提携し、国内での量産と商用化を進める計画です。政権はAI、半導体、重要鉱物の分野で補助金を投じ、同盟国との協力も含めて調達先の多様化と強靭化を図る戦略を継続しています。
今回の助成の特徴は、デバイス性能そのものではなく、製造を支える材料と装置要素に焦点を当てた点です。PFASフリー化学は環境毒性や生物蓄積の懸念を回避しつつ、熱伝達や潤滑、絶縁コーティング、表面処理の要件を満たすことを狙います。高純度触媒の開発は、前駆体生成と排ガス低減に直結し、歩留まりと環境負荷の双方に効果を及ぼします。レアアースフリー磁石は装置部材の中国依存を減らし、供給リスクのボトルネックを緩和します。先進電池は中断の許されない半導体施設の電力品質確保に資するため、ローカルかつ高信頼なエネルギー貯蔵を国内材料で達成する狙いです。これらの開発テーマをAI駆動の材料探索で並行して前倒しすることで、時間軸を圧縮し、実装への移行を加速します。助成と資本参加の組み合わせにより、政策と市場を接続する設計であることも特徴的です。
見解 材料と装置要素へのテコ入れは、サプライチェーンの弱点に直接効く打ち手です。AI駆動の探索で実装速度を高められるかが、5億ドルの投資対効果を決める焦点になります。
詳しくは「日本貿易振興機構(ジェトロ)」の公式ページまで。 レポート/DXマガジン編集部





















