近年、教育現場における働き方の改革が急務とされています。特に、教師たちは多くの業務に追われ、もはや教育そのものに集中できない状況が続いているのが現実です。そんな中、クラウドの導入が教員の働き方を根本から変える大きな鍵となっています。
山梨大学の三井一希教授は、「何度も行う業務は、わずかな効率化でも、繰り返すうちに大きな効果を実感できます」と述べ、クラウドがもたらす具体的な利点について触れています。例えば、ある学校では保護者へのアンケートをGoogleフォームを使って実施することにしました。かつては紙のアンケート用紙を子どもに配布し、回収する手法を採用していましたが、今やクラウド上で完結することができ、保護者に直接配信されたアンケートは自動的に集計されます。この新しい方法により、教員は保護者からの電話対応や未提出者への確認連絡から解放され、業務が大幅に効率化されました。さらに、集計結果はリアルタイムでどこからでも確認可能なため、職員室にいなくてもすむ働き方が実現しています。保護者も自分の端末を通じて通勤中やスキマ時間に回答できるため、負担が軽減されているといいます。
続いて、もう一つの実践例では情報の事前共有が行事練習や教員研修の時間を劇的に減らしています。年々卒業式の合同練習を6回以上行っていた学校は、Google Classroomを使い、過去の卒業式の動画をアップロードしました。これにより、子どもたちは事前に学ぶことができ、対面での練習は2回に減少しました。また、教員研修も同様に、事前に動画を視聴させることで当日の説明内容が削減でき、実践部分にもっと時間を割けるようになったのです。三井氏は、こうした取り組みが教員の負担を軽減し、教育現場の効率を高めると力説しています。
また、東北大学の教授である堀田龍也氏は、クラウドを使った小さな工夫が大きな変化を生むと述べています。「できる人が身の回りの困りごとに対して、少しずつクラウドを活用してみることで、改革が進む」とのことで、特に教員同士が情報を共有し、協力しながら実践していくことが重要だと強調しています。さらには、文部科学省によって、学校での働き方改革や校務環境のフルクラウド化が推進されていることも、教員の働き方に新たな風をもたらしています。
今回の取り組みから見えてくるのは、クラウド技術は単に業務をデジタル化するだけでなく、働き方の見直し、業務フローの改善を促す重要なツールであるということです。教員たちがより多くの時間を児童生徒と向き合うことができるよう、今後もクラウドの活用が推奨されるでしょう。三井氏と堀田氏が作成したクラウド活用の事例をまとめたハンドブックも是非活用し、どこから始めるべきか迷っている方は、まずは1つ実践することで新たな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。クラウドの力で、未来の教育現場に期待が寄せられています。
レポート/DXマガジン編集部海道