株式会社メディアリンクスは、株式会社毎日放送、セイコーソリューションズ株式会社、株式会社TBSテレビの計4社で共同実施した実証実験において、キャリア5Gを用いた放送TSとPTPの長距離伝送に国内で初めて成功したと発表しました。期間は2026年6月10日から12日で、Interop Tokyo 2026のShowNetにおける特別企画の一環として行われ、会期中に実際の伝送環境とともに成果を紹介しています。実験は大阪から千葉の幕張メッセまでを対象区間とし、NTTドコモが提供する5G回線とMECダイレクト、5Gスライシングを活用しました。さらに、NTTネットワークサービスシステム研究所が開発したマルチパス転送ゲートウェイを用い、複数回線を束ねる安定伝送を目指した構成です。従来は専用線やダークファイバー相当の回線が前提だった区間を、キャリア5Gで置き換える取り組みとして、コストと運用の両面で意義を示しました。6社調べによると、こうした方式での成功は2026年6月時点で国内初とされています。
実証の概要と構成。5GスライシングとMECダイレクト、MP転送GWで安定性を確保
今回の実証は、ドコモビジネスが提供する大阪の検証ルームから幕張メッセまでの実伝送を対象に実施されました。ネットワークにはNTTドコモの5G回線が用いられ、スライシング技術により帯域や遅延特性の確保を図っています。MECダイレクトによってエッジ区間の経路を最適化し、伝送の低遅延化と安定動作を狙った体制です。加えて、マルチパス転送ゲートウェイが複数の通信回線を組み合わせ、回線品質に応じたパケット振り分けや再送制御、誤り訂正を動的に行いました。これにより、帯域向上と遅延やジッタの抑制、パケットロスの低減を同時に実現し、モバイル回線特有の品質変動が大きい環境でも放送映像の安定伝送を可能にしています。構成には、放送TSの伝送とPTPによる高精度時刻同期が含まれ、放送品質を実運用に近い条件で検証することができました。期間中はShowNetのMedia over IP企画の場で、結果とともにシステム全体像が紹介されています。
コスト削減とBCP強化の可能性。専用線依存からキャリア5G活用への転換を示唆
放送TSとPTPの長距離伝送では、これまで専用線やダークファイバー相当の回線が必要とされ、高い運用コストが課題でした。実証の成功により、キャリア5Gを活用した代替が現実的なコスト削減に寄与する可能性が示されています。加えて、災害などの非常時に現地で迅速に回線を構築できる点は、BCPの観点から大きな価値を持ちます。特定の物理回線に依存しないため、復旧作業の初動で放送ネットワークを暫定的に確保する選択肢が広がります。マルチパスとスライシング、エッジを組み合わせる構成は、品質変動に強く、運用現場の要件に即した柔軟性を提供します。今回の結果は、放送ネットワークの運用における次の標準像を検討するうえで有用な実データとなります。放送と通信の協調が、コストと機動性の両立につながることを具体的に示した形です。
参加企業と役割。放送と通信、機器ベンダーの連携で実運用に近い環境を構築
共同実施は株式会社メディアリンクス、セイコーソリューションズ株式会社、株式会社TBSテレビ、株式会社毎日放送の4社で構成されています。協力企業として株式会社NTTドコモとNTTドコモビジネス株式会社が参加し、ネットワーク回線や検証環境の提供に関与しました。マルチパス転送技術はNTTネットワークサービスシステム研究所が開発したもので、品質変動が大きいモバイル回線での安定化に寄与しています。時刻同期ではPTPが用いられ、IPネットワークでの同期安定化技術としてRPTPが参照されています。RPTPはRPTP Allianceにより確立され、株式会社メディアリンクスや株式会社インターネットイニシアティブ、セイコーソリューションズ株式会社、株式会社ユニ・ポイントが構成メンバーです。実証はInterop Tokyo 2026の会期に合わせて実施され、ShowNetのMedia over IP特別企画の枠組みで公開されました。
今後の展望。放送ネットワークの低コスト化とBCP即応を実装へ
実証で示された成果は、放送ネットワークの低コスト運用と迅速なBCP対応の現実解につながる可能性があります。専用線に代わる手段としてキャリア5Gを活用することで、設備投資や回線費の負担軽減が見込まれます。エッジとスライシング、マルチパスの組み合わせは、拠点間の臨時回線やイベント会場での放送運用にも適合します。運用現場では、回線の冗長化設計や監視手順を5G向けに最適化し、品質変動時のハンドリングを標準化することが重要です。導入段階では、伝送要件に応じたスライス設計と、MEC区間の経路設計を事前に検証するアプローチが有効です。今回の共同体制で得られた知見は、放送事業者と通信事業者、機器ベンダーの協調を促し、実装フェーズに向けた具体化を後押しすると見られます。
詳しくは「株式会社メディアリンクス」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部





















