住友精化株式会社は、使用済み紙おむつに含まれる吸水性樹脂のケミカルリサイクル技術について、兵庫県姫路市の姫路工場内でパイロット設備の建設を完了し、稼働を開始しました。本技術は、2024年10月に公表した開発の次段階として位置づけられ、工業的製造法の確立を目的としています。日本では高齢化により紙おむつの消費が増加しており、一般廃棄物に占める使用済み紙おむつの割合は2030年度頃に約7%に達する見込みとされています。これまで多くが焼却処分となってきた中で、素材ごとのリサイクルが進む一方、紙おむつ用の吸水性樹脂を再び紙おむつへ戻す水平リサイクルは実現していませんでした。住友精化は、この課題に対する解として、吸水性樹脂の化学的循環を前提とするプロセスを構築し、実装に向けた検証段階に入りました。パイロット設備は、品質と安全性評価、プロセス確立、CO2排出削減効果の実証を並行して進める計画です。
パイロット設備の目的と検証スコープ
今回のパイロット設備は、本技術の工業的製造法を確立することを主目的としています。具体的には、再生された吸水性樹脂の品質評価と安全性評価、分解から再結合までの一連の再生プロセスの確立、そしてCO2排出削減効果の実証を行います。これらの検証は2026年度中を目途に完了を目指すとされ、段階的にデータ収集と評価を進める構えです。環境負荷の第三者評価として、早稲田大学 伊坪徳宏研究室が、パイロット設備で収集したデータに基づくライフサイクルアセスメントを実施する予定です。第三者による定量的評価を経ることで、環境面の有効性を客観的に示すことが期待されます。設備稼働の開始により、研究室レベルの検討から、工業化を見据えたスケールでの実証に軸足を移す段階に入りました。想定スケジュールに変更の可能性がある旨の記載はなく、現段階では計画通りの推進を掲げています。
技術のコアとなる化学プロセス 分解、分離・精製、再結合の三段構成
本技術は、吸水性樹脂の循環を実現するために、三つの工程を核としています。最初の工程では、使用済み紙おむつから分離した吸水性樹脂の架橋点のみを選択的に分解します。具体的には、エステル結合に対して加水分解を行い、中間体であるポリアクリル酸に戻します。次の工程では、分解後の混合物からポリアクリル酸以外の不純物を除去し、ポリアクリル酸を水に溶解した後に固体として析出させる分離と精製を実施します。最後の工程で、析出したポリアクリル酸の架橋点を再び化学的に再結合させ、吸水性樹脂として再生します。住友精化が実施した実験において、再生された吸水性樹脂は保水性や加圧下吸水性などで、同社が製造販売する紙おむつ用グレードと同等の性能が確認されています。これにより、水平リサイクルの実現に向けた材料性能面の見通しが示されています。
社会課題への適用範囲と水平リサイクルの意義
日本の一般廃棄物における使用済み紙おむつの割合は2030年度頃に約7%へ拡大する見込みとされ、自治体の焼却処理能力や処理コストの観点でも負荷増が想定されます。使用済み紙おむつの素材ごとのリサイクルは進みつつあるものの、吸水性樹脂を元の用途である紙おむつへ戻す水平リサイクルは未達でした。本技術は、素材の化学構造を分解と再結合の組み合わせで再生するため、同等性能を確保しながら再資源化を図れる点が特長です。焼却量の抑制と資源循環の両立に道筋を付けるアプローチとして、工業的手法の確立が実現すれば、廃棄物処理の高度化と資源効率の向上に寄与します。さらに、パイロット段階でCO2排出削減効果の実証まで対象に含める取り組みは、環境価値を測る上で実務的な妥当性を高めます。社会実装時には、品質と環境の両面における根拠が整備されることが想定されます。
実装に向けたスケジュールと連携体制
住友精化は、本技術の2030年度の社会実装を目指す方針です。パイロット設備を活用しながら工業的製造法を確立すると同時に、資材分離を担うパートナー企業や地方自治体などとの連携を通じて、使用済み紙おむつのリサイクルシステムの構築に取り組みます。素材の分離から再生までを一体で機能させるためには、収集、前処理、品質管理、出荷に至る実運用の設計が不可欠であり、その体制を外部パートナーとともに整える姿勢です。環境省の補助事業に採択された実証として位置づけられており、2026年度中を目途に品質と安全性、プロセス、CO2削減効果の検証を終える計画です。第三者によるライフライクルアセスメントを加えることで、社会実装の際の政策的・実務的な評価軸にも対応していく構えです。工場内でのデータ取得を継続しながら、最終的な生産スキームの確立を図ります。
住友精化の取り組みとパイロット設備の位置づけ
今回のパイロット設備稼働は、研究開発から実証フェーズへの移行を意味し、水平リサイクルの実現可能性を確認するための重要なステップとなります。化学的な分解と再結合の制御により、再生樹脂の性能を既存品と同等水準に引き上げる再現性の検証が焦点です。設備での連続運転や品質評価、安全性評価の結果が、工業化の可否を左右します。本件は、使用済み紙おむつの資源循環に対して、製造事業者としての実装責任を果たす試みとして位置づけられています。環境配慮型の材料循環の確立に向け、外部の学術機関や行政の枠組みも取り込みながら、段階的にエビデンスを積み上げていく進め方です。今後の成果により、紙おむつ分野での吸水性樹脂の循環モデルが具体化することが見込まれます。
詳しくは「住友精化株式会社」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部





















