iPhoneの強固な「お庭(エコシステム)」が、また一つ国家の規制によって形を変えることになりました。欧州や日本での足並みに続くように、Appleがブラジル市場においてサードパーティ製のアプリストアや独自決済の導入を認めると発表。自由を手に入れたデベロッパたちと、安全性を盾に手数料の網を張り直すテック巨人との、新たな攻防の真実に迫ります。
欧州・日本に続きブラジルも。CADE合意で変わる「アプリ配信と決済」の選択肢
Appleは、ブラジルの競争規制当局であるCADE(ブラジル経済防衛行政評議会)との合意に基づき、ブラジル国内におけるiOSの仕様および取引条件を大幅にアップデートすることを発表しました。デベロッパは「iOS 26.5」の一部として、本日より新しい機能をアプリへ統合することが可能になります。
今回の規制対応によってもたらされる最大の変更点は、「App Store以外からのアプリ配信(代替アプリマーケットプレイス)」と、「Apple以外の決済システム(代替決済処理および外部Webサイトへのリンク決済)」の解禁です。これにより、デベロッパはAppleの決済システムに依存せず、ブラジルのユーザーに対して直接届ける手段を確保できます(ただし、すべてのアプリには「公証」という基本審査が適用されます)。
複雑すぎる新たな「手数料」の包囲網。ストア外配信にも5%のCTC
一見すると「Apple税」からの完全な解放のようにも見えますが、Appleが提示した新たな取引条件は非常に緻密に設計されています。売上に対する手数料の構造は、選択する配信・決済ルートによって以下のように再編されました。
| 項目 | 通常料金 | 優遇料金(Small Business等) / 2年目以降サブスク |
| App Store 手数料 (ストア内で配信する場合) | 21% | 10% |
| Apple決済処理料金 (Appleのアプリ内購入を使用する場合) | +5% | +5% |
| ストアサービス手数料 (アプリから外部Webサイトへリンクして決済する場合) | 15% | 10% |
| コアテクノロジー手数料(CTC) (App Store以外のマーケットプレイスで配信する場合) | デジタル売上の5% | デジタル売上の5% |
このように、App Storeを回避して独自のマーケットプレイスで配信したとしても、デジタル売上の5%が「コアテクノロジー手数料(CTC)」として徴収される仕組みになっており、デベロッパにとっては「どちらのルートが真にコストを抑えられるか」のシビアな計算が求められます。
ポルノや詐欺の流入を防げるか?「公証」導入と子どもを守る防衛線
Appleは、App Store以外のルートが開通することによって、マルウェアの拡散、不正行為や詐欺、不適切なコンテンツの流入といったセキュリティ・プライバシー上のリスクが急増すると強く警告しています。実際、先行して同様の規制緩和が行われたヨーロッパや日本では、これまでiOSの厳格なApp Reviewでは弾かれていたポルノアプリなどが流通し始めているのが現状です。
こうした脅威に対抗するため、Appleはブラジルで以下の保護策を講じます。
- 基本審査「公証(Notarization)」の義務化:すべてのiOSアプリに対し、自動チェックと人の手を組み合わせたウイルス・マルウェアの最低限の排除プロセスを導入。
- 18歳未満のユーザーに対する厳格な制限:
- 「子ども向け」カテゴリのアプリには、外部ウェブ決済へのリンク設置を全面禁止。
- 一般アプリで代替決済を利用する場合、保護者の承認を挟む「ペアレンタルゲート」の設置を義務化。
- 18歳未満のユーザーが使うアプリからの外部Web決済リンクへの遷移を遮断。
外部決済を利用した取引については、Appleによる返金サポートや購入履歴の一元管理の対象外となるため、ユーザー側にも「自己責任」の意識が求められる新たな時代が幕を開けようとしています。
見解として、独占の解体を迫る国家の規制に対し、プラットフォームの提供価値を「CTC(コアテクノロジー手数料)」という形で再定義して防衛線を張るAppleの動きは、エコシステムの主導権を巡る最高峰のプラットフォームガバナンスの攻防戦です。
詳しくは「Apple」のデベロッパ向け公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部 戸田





















