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コールセンターの役割は顧客の体験価値向上、オムニチャネルを前提とした機能がカギに

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日本オムニチャネル協会は2023年6月13日、定例のIT勉強会を開催しました。特定分野のITツールの動向や最新テクノロジを紹介するオンラインセミナーで、第3回となる今回はコールセンター向けのITツールやテクノロジを取り上げました。

 セミナーにはゲストとして、Zendeskの執行役員でカスタマーサクセス本部長の松田行正氏、Kiva 代表取締役の野尻航太氏、アイドマ・ホールディングス事業部長 兼 キーパーソンマーケティング上級執行役員の山崎恭平氏が登壇。日本オムニチャネル協会の林雅也氏と渡部弘毅氏を交え、コールセンターの動向を議論しました。

顧客体験向上に寄与するコールセンターを構築せよ

 セミナー前半は、渡部弘毅氏が登壇。日本オムニチャネル協会でこれまで「CS分科会」のリーダーとして活動してきたことから、分科会で議論した内容を中心にコールセンターの現状や課題を解説しました。

同氏はコールセンターの役割が変わりつつあると指摘します。「小売業に限ると、多くの企業がオムニチャネルに舵を切りつつある。店舗とECを融合し、顧客体験をさらに高めようとする動きが目立つ。そのためコールセンターは、顧客の体験価値を向上させる役割が求められるようになった。顧客と直接コミュニケーションを取れる部署だからこそ、その重要性が増している。これまでは商品やサービスを利用する顧客をフォローするといった“裏方”の役割にとどまっていた」(渡部氏)と述べます。コールセンターは顧客の購買体験や利用体験を高めるための機能を備えるべき、と渡部氏は強調します。

日本オムニチャネル協会  渡部弘毅氏

日本オムニチャネル協会 渡部弘毅氏

 こうした機能を包含するのが「CSオムニチャネルハブ構想」だと渡部氏は続けます。これは「CS分科会」が提唱するコールセンター向けのプラットフォーム。店舗かECかを問わず、コールセンターが顧客の体験価値を高めるタッチポイントとしての役割を担い、そのための環境を構築する必要があると渡部氏は指摘します。例えば、SNSを介して自社商品に興味を持った顧客に対し、チャットボットを使って問い合わせ対応するといった仕組みを構築します。商品についてさらに詳しく知りたい顧客に対し、オンライン接客ツールを使って接客するのも有効です。商品購入後の顧客に対しても、SNSやチャット、ビデオなどを使ってフォローします。チャネルを問わず顧客をフォローし、体験価値を高める施策を打てるようにする。これが「CSオムニチャネルハブ構想」の本質です。「ホームページやSNSなどのチャネルが増える中、各チャネルからアプローチする顧客の体験価値向上に主眼を置かなければならない。いかに効率よく効果を高めるか。手段の1つとなるのがデジタルだ。どんな顧客にどうアプローチするのかを考え、有効なデジタルを活用することが求められる」(渡部氏)と言います。

さらに渡辺氏は、顧客体験を高める方法にも言及。具体的には有人による対応と、無人対応に大別できると言います。「顧客が何を求めているかを探り、ニーズに応じた対策を講じることが必要だ。例えば顧客が迅速性や正確性を求めているなら、自動化ツールを使うのが有効だ。FAQサービスやチャットボット、音声認識サービスなどを駆使すれば、迅速性や正確性といったニーズを満たしやすくなる。これに対し、顧客が共感性や安心感を求めているなら、人による電話やチャット、メールなどを活用するのが有効だ。人とのコミュニケーションを通じ、共感性や安心感といったニーズを満たしやすくなる」(渡辺氏)と考察します。顧客のニーズに応じ、有人対応か無人対応かを使い分けるべきだと指摘します。もっとも最近は「ChatGPT」が登場し、「有人対応すべき領域も、ChatGPTを活用することで一部は自動化を見込めるようになった。今後、さらに適応領域は広がる可能性がある」(渡辺氏)と分析します。

AIを徹底活用し、コールセンター業務を効率化せよ

 では、コールセンター向けのIT製品・サービス、ソリューションにはどんなものがあるのか。どんな特徴を備えるのか。セミナー後半は、Zendesk、Kiva、アイドマ・ホールディングスの担当者が自社サービスの特徴や用途、効果を説明しました。

最初に登壇したのは、Zendeskの執行役員でカスタマーサクセス本部長の松田行正氏。同社のソリューション「Zendesk」の概要や強みを解説しました。

Zendesk 執行役員 カスタマーサクセス本部長 松...

Zendesk 執行役員 カスタマーサクセス本部長 松田行正氏

 「Zendesk」はコンタクトセンター向けのソリューションで、複数の製品群で構成します。マルチチャネルの問い合わせ管理やヘルプセンター(FAQ)、チャット、電話、さらには分析(BI)機能を備える製品などで構成します。これら製品を使って収集したデータを一元化するデータベースも用意。基幹システムやCRMツールなどとデータを連携する使い方を想定します。さらに同社はアプリケーションのマーケットプレイスを用意し、オリジナルのアプリケーションとデータを組み合わせた環境も容易に構築できる点を強みに打ち出します。「顧客接点は多様化し、非対面でのコミュニケーションが常態化しつつある。一方、サブスクリプション型のサービスが増え、顧客と継続的な接点を構築する必要性が増している。サービスを提供する事業者は、顧客との良好な関係を築かなければ解約さえあり得る。つまり、顧客満足度が売上に直結するようになった。それだけ顧客接点にどう向き合うかを真剣に考えなければならなくなっている」(松田氏)と指摘します。

一方、「Zendesk」はAI機能も売りの1つです。AI機能を活用することで、コンタクトセンター業務の効率化を見込めると言います。「例えばAIを使い、顧客の要望に適切に応えるFAQサービスを構築すれば、コンタクトセンターへの問い合わせ数を減らせる。具体的には15%の削減を期待できる。AIを使って顧客からの問い合わせ処理を早められれば、顧客満足度向上も見込める。当然、人材の有効活用も見込めるようになる」(松田氏)と、AIによる効果を説明します。さらに、「AIはコンタクトセンター業務のさまざまな活動を支援し、省力化を見込める。当然、コスト削減にもつながる。AIの活用を前提にコンタクトセンター業務を見直し、効率化を加速させるべきだ」(松田氏)と訴えました。

顧客の購買体験に安心感を付与する延長保証サービス

 続いて登壇したKiva代表取締役の野尻航太氏は、同社の延長保証サービス「proteger(プロテジャー)」を紹介しました。アフターサービスに特化したサービスで、商品を購入した顧客の購入後の体験価値を高めることに主眼を置いています。

ここで言う「延長保証」とは、商品を提供するメーカーとの保証期間終了後も、期間を延長してメーカー保証と同等の保証を提供するサービスを言います。代表的な延長保証サービスには、アップルが提供する「Apple Care」と呼ぶサービスがあります。大手家電量販店が独自に提供する延長保証も含まれます。

購入者に「安心」を提供できるのが「proteger」の強みです。例えばECサイトで商品購入を検討するユーザーに対し、延長保証を付帯サービスとして提供できるようにします。これによりユーザーの、[ECサイトでの買い物は不安」「商品を直接触れないから不安」「メーカー保証が切れた後が不安」などの心配を解消します。もし購入した商品が故障した場合、チャットに必要事項を入力するだけで故障対応するため、サポート先の電話番号やメールアドレスを調べる手間はかかりません。24時間365日、不具合対応を受け付けるのもメリットです。

ECサイトを運営する事業者のコールセンターにもメリットがあります。故障時の電話受け付けなどを減らせることから業務負荷軽減を見込めます。保証内容を充実させることにより、クレームも減少します。顧客満足度を高められることから、売上アップにも貢献します。「初めてECサイトを利用するユーザーに対し、安心した購買体験を提供できるのがprotegerの利点だ。protegerを導入することで、ECサイトのCVR(サイト訪問者の注文した割合)は、平均140%向上する」(野尻氏)と強調します。さらに、proteger利用ユーザーは非利用ユーザーに比べて、リピート率は2倍になるといった効果も見込めると言います。

Kiva 代表取締役 野尻航太氏

Kiva 代表取締役 野尻航太氏

 なお、protegerを導入するECサイト事業者から利用料などを受け取っていないと言います。「初期費用や月額費用は0円となる。エンドユーザーから受け取った保証料の一部を当社とECサイト事業者で分配するビジネスモデルを展開する。ECサイト事業者にとってはコスト負担がかからない上、保証料の一部を受け取れることから、新たな収益源も見込めるようになる」(野尻氏)とproteger導入のメリットを解説します。

在宅ワーカーを使って営業電話などの業務を支援

 アイドマ・ホールディングス事業部長で、キーパーソンマーケティングの上級執行役員である山崎恭平氏は、クラウドワーカーを活用したコールセンターの利点を解説しました。

アイドマ・ホールディングスでは、営業のアポイント獲得や商品案内などの電話案内業務を代行するコールセンター支援事業を展開します。同社の場合、約500人の在宅ワーカーを使い、毎日約4万件の営業電話を展開しているといいます。

一番の売りは、約47万人が登録する求人プラットフォームを構築する点です。リモートワークの仕事に特化した求人を扱い、この求人にマッチする適切な人材を47万人の中から探し出せるのが強みです。

営業担当者が足りない、電話要員が足りないといった課題を抱える企業向けに、コールセンター要員を派遣するときにも求人プラットフォームを活用します。約47万人の中から人材を派遣するほか、他社で積んだ経験やノウハウも人材派遣先に提供します。これにより派遣先企業は、ノウハウがない中でも営業電話を効果的に実施できるようになります。「在宅ワーカーを活用することで、電話のアポイントに要する人員やコストを削減できる。事業の成長に応じ、段階的に電話要員を容易に増やせるのもメリットだ。電話営業に注力する一定期間だけ利用するなど、在宅ワーカーの強みを活かした営業網を構築できる」(山崎氏)とメリットを指摘します。

株式会社アイドマ・ホールディングス事業部長/株式会社キ...

株式会社アイドマ・ホールディングス事業部長/株式会社キーパーソンマーケティング上級執行役員 山崎恭平氏

 なお同社では、営業先となる法人リストの作成から法人リストへのアプローチ、リモート商談まで、一気通貫で支援します。各業務に精通する在宅ワーカーで支援体制を構築し、クライアントの営業部門の弱点を補えるようにします。「営業業務を支援するさまざまなツールも用意する。シフト管理など、在宅ワーカーを活用することを想定したツールも提供する。在宅ワーカーとテクノロジの両輪で、クライアントの営業業務を支援できるようにしている」(山崎氏)と強調します。
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