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日本オムニチャネル協会は2023年10月10日、定例のウェビナー「IT勉強会」を開催しました。特定領域のITの動向や製品・サービスを解説する勉強会で、7回目となる今回はアプリやミニアプリの最新動向について解説しました。

アプリやミニアプリは、顧客との接点創出を目的に多くの企業が導入、活用しています。しかし、アプリの開発や運用には手間がかかりがちで、開発に踏み切っても提供開始までに時間を要するといった課題もあります。独自のネイティブアプリ開発に乗り出すべきか、それともLINEなどのプラットフォームを使ったミニアプリを用意すべきかに頭を悩ます企業も少なくありません。使いやすさを追求する一方でセキュリティを担保しなければならないといった制約も無視できません。

そこで今回のIT勉強会では、企業がアプリやミニアプリを活用するときの注意点や考え方、さらには最新の動向を取り上げ、解説しました。ゲストにLINEヤフー DXソリューション企画部部長の谷口友彦氏と、ネットスターズ 取締役COOの長福久弘氏を招き、モデレーターを務めるメグリ 代表取締役の田代健太郎氏を交えながら、各社の取り組みやソリューションを紹介しました。

アプリとミニアプリの特性を理解し、目的に応じて使い分けよ

メグリ 代表取締役 田代健太郎氏

まず初めに、モデレーターを務めるメグリ代表取締役の田代健太郎氏が登壇。アプリやミニアプリの特徴やトレンドを整理、解説しました。

田代氏は、企業がアプリやミニアプリを活用する利点について説明しました。「ECが台頭する中、多くの企業が顧客とのリアルの接点を喪失しつつある。顧客とのつながりをどう維持、拡充するかが企業の喫緊の課題だ。その解決策の1つとしてアプリやミニアプリに着目する企業は少なくない。消費者の大半がスマートフォンを携行する中、スマートフォン経由で顧客にアプローチすれば自社の情報や顧客を呼び寄せるキャンペーン情報などを容易に届けられる。顧客とつながる手段として、アプリやミニアプリの役割は大きくなりつつある」(田代氏)と指摘します。

ミニアプリとアプリそれぞれの特性や強みについても言及します。ミニアプリの実行基盤であるLINEプラットフォームを引き合いに出し、「国内に限ると、LINEは多くのユーザーが利用するコミュニケーション基盤だ。企業はLINEプラットフォームを用いたミニアプリを使えば、多くのユーザーにアプローチしやすくなる。新規でアプリをインストールしてもらうといったハードルがないのも利点だ。顧客を新規に獲得するための手段としても有効である」(田代氏)と考察します。さらに、「LINEの場合、ヤフーが収集するデータを利用できるのも大きな利点だ。マーケティング施策を立案したり検証したりする上でも、ヤフーが保有するデータを使えるのがLINEミニアプリの強みだ」(田代氏)と指摘します。

一方、ネイティブアプリについては、「自社サービスを申し込んだ顧客とのリテンションに向く。サービスを解約しそうな顧客にキャンペーンやクーポン情報を発信するなど、自由度の高い情報発信が可能だ。アフターサービスやサービス品質強化などの目的で真価を発揮するのがネイティブアプリだ」(田代氏)と指摘します。LINEやヤフーといった巨大プラットフォームを使わないことから大量データを収集しにくいものの、田代氏は「データを一度収集しさえすれば、より緻密で顧客ニーズに沿ったマーケティング施策を打ち出しやすくなる。ミニアプリのような制約もないことから、アプリをメディアとしてさまざまな情報を発信する手段として利用できる。マーケティング施策の可能性を広げられるのが何よりの利点だ」(田代氏)とネイティブアプリならではのメリットを分析します。アプリやミニアプリを使って何を目指すのか。主な目的や狙いは何か。こうしたニーズに応じてどちらを使うべきかを見定めるべきだと田代氏はまとめました。

LINEミニアプリで小売店や飲食店のDXを支援、効果的なマーケ施策も実施可能に

LINEヤフー DXソリューション企画部部長 谷口友彦氏

続いて登壇したLINEヤフーのDXソリューション企画部部長 谷口友彦氏は、LINEミニアプリのメリットや主な用途を解説しました。

LINEミニアプリは、小売店や飲食店などの利用を想定したアプリ。日本での利用が多いコミュニケーションツール「LINE」を基盤に使っているのが最大の特徴です。LINEアプリをスマートフォンにインストール済なら、新たなアプリをインストールする手間はなく、LINEアプリで登録した個人情報をそのまま流用できるといった利点もあります。コミュニケーションツールとして、利用者にメッセージを送信するなどの用途にも当然向きます。谷口氏によれば、LINEミニアプリは2023年8月時点で1万以上がリリースされているといいます。「LINEミニアプリの用途はコミュニケーションに留まらない。プリペイド機能やクーポン発行、モバイルオーダーなど、主に店舗の業務を支援する機能を豊富に備える。店舗のDXを促進する切り札としても有効だ」(谷口氏)とLINEミニアプリの強みを訴求します。

データを活用したマーケティング施策の展開にも向くと谷口氏は続けます。「LINEミニアプリを利用するユーザーが、店舗にいつ来店したのかといった情報を保持する。これにより、再来店を促したい人に絞ったキャンペーン施策を打ち出せるようになる。小売店なら新商品を入荷したタイミングで案内を送ったり、飲食店なら新メニューを提供開始するタイミングで案内したりといった用途にも使える。これまで情報を発信できずにいた店舗も、LINEミニアプリを使えばマーケティング活動を容易に実施できるようになる」(谷口氏)と指摘します。

なお谷口氏はLINEミニアプリの今後の展開にも触れます。「今後はショートカットの作成機能やブラウザでサービスを利用するためのランディングページの実装を予定する。機能強化を図ることで、LINEミニアプリ利用者の体験価値を高めることに主眼を置く」(谷口氏)と強調します。さらにLINEヤフーとして、「LINE公式アカウントを使って企業の集客や販促、CX、DXなどの取り組みを統合的に進められるようにすることも視野に入れる」(谷口氏)と、新たな構想を描いていることも明らかにしました。

日本でも導入進むWeChatミニアプリ、簡単に開発できるプラットフォームも

ネットスターズ 取締役COO 長福久弘氏

続いて登壇したネットスターズの取締役COO 長福久弘氏は、中国発のアプリ「WeChat」の機能を中心に解説しました。

WeChatは中国で高いシェアを誇るメッセージングアプリ。チャットを使えるのはもとより、音声チャットや「モーメンツ」と呼ぶタイムライン機能などを備えます。現在は、WeChatの公式アカウントを商業利用する動きが加速し、店舗向けとなる電子決済機能「WeChatPay」や、各種業務を支援するミニアプリも拡充しつつあります。

とりわけミニアプリは、国を支えるインフラとして使われた実績を持ちます。「新型コロナウイルス感染症がまん延したとき、国民の健康状態を把握する用途でWeChatのミニアプリが使われた。QRコードを使って利用者の健康情報を容易に確認できるようにし、健康なら店内への入店を認められるという用途で使われた。WeChatミニアプリは、アプリを迅速に展開したいというニーズに向く。必要最小限の機能さえ備えていれば十分というアプリの開発なら、開発期間の短期化を見込めるミニアプリは有効だ」(長福氏)と言います。

なお、中国で事業展開するウォルマートやスターバックスも、WeChatのミニアプリを利用します。ウォルマートの場合、商品のバーコードをスキャンするだけで商品を購入できるカート機能をミニアプリで提供します。スターバックスの場合、モバイルオーダーやデリバリーのサービスをミニアプリ経由で提供します。

肝心の日本でもWeChatのミニアプリは導入が進みつつあると長福氏は指摘します。「導入企業の多くは、販売促進目的でWeChatのミニアプリを利用する。決済機能であるWeChat Payと連携することで、ミニアプリの利便性を高めるケースが目立つ」(長福氏)と考察します。観光目的で来日する中国人の利用を想定し、中国では一般的なWeChat Payを決済手段の1つとして導入する店舗が増えていると言います。

セミナーでは、ネットスターズが提供するミニアプリ開発プラットフォーム「StarPay-mini」も紹介しました。これは、LINEやWeChat、Alipayといった主要プラットフォーム上でミニアプリを開発するためのプラットフォーム。ミニアプリで使われがちな機能をマイクロサービスとして部品化しているのが特徴で、必要なマイクロサービスを組み合わせるだけで簡単にミニアプリを作成できるのが売りです。「飲食店や小売店のDX推進の切り札として『StarPay-mini』を導入するケースが目立つ。マーケティング用途に利用するのはもちろん、飲食店ではセルフオーダーやキャッシュレス決済の仕組みを構築するのに使われることが多い」(長福氏)と、具体的な事例を交えて紹介しました。

長福氏は最後に、ネイティブアプリとミニアプリの可能性について言及しました。「ネイティブアプリかミニアプリのどちらか一方を選択利用する必要はない。最近はそれぞれの長所を生かし、両者を組み合わせて利用する事例が増えつつある。用途や長所に応じて使い分けられるようにすることで、利用者の利便性をより高められる。より使いやすいサービスを利用者に提供できるようになる」(長福氏)と述べます。最新のテクノロジを低コストで試験導入できるようになったことで、「試行錯誤しながら最良のユーザー体験を模索しやすくなった。ネイティブアプリやミニアプリを導入する敷居は低くなり、容易に導入できる素地が整いつつある」(長福氏)とまとめました。

サイネージやアプリに広告枠を設けて利益創出、小売事業者が運営するリテールメディアの可能性を模索せよ

メグリ 代表取締役 田代健太郎氏

最後にメグリ代表取締役の田代健太郎氏が再び登壇。同社が提供するアプリマーケティングプラットフォーム「MGRe(メグリ)」を紹介しつつ、小売事業者が運営するメディア「リテールメディア」とアプリの可能性について触れました。

MGReはアプリを開発するためのプラットフォームで、アプリ上のデータを収集、分析する機能を備える点を特徴に打ち出します。アプリの利用実績などをもとにマーケティング施策を実施したり、実施した施策を検証して次の施策改善に役立てたりといった使い方を可能にします。「アプリを開発するだけでなく、運用や施策の実施までをワンストップで提供できるのが強みだ。顧客体験を高める目的でアプリを開発、展開したい企業に向く」(田代氏)と、プラットフォームの利点を訴求します。なお、MGReは、同社が無印良品のアプリ「MUJIパスポート」の受託開発したときの知見をもとに開発したと言います。

一方、アプリを開発するなら「リテールメディア」の動向に注視すべきと田代氏は訴えます。「小売事業者が運営するメディア『リテールメディア』は一般的に、デジタルサイネージやアプリを使ってコンテンツを配信する。そこに広告枠を設けて出稿してもらうことで利益を上げる小売事業者が増えつつある。米国ではすでにデジタル広告の第三の波と位置付けられるほど、高い注目を集めている」(田代氏)と現状を説明。アプリを使って来店者に必要な情報を配信するだけではなく、広告枠を設けることで利益を生み出す源泉になると同氏は指摘します。田代氏はさらに、「2023年の市場規模は6兆円に及ぶという試算もある。日本でも2026年には市場規模が805億円に達すると見込まれている」(田代氏)と、今後は市場規模が膨らむ点にも言及します。

すでにリテールメディアを展開し、広告枠を設けて利益を上げる企業も登場していると田代氏は続けます。「大手電器店の場合、デジタルサイネージとネイティブアプリを連動させて広告枠を販売している。店舗を訪れる来店者には店頭のデジタルサイネージを使って広告を訴求、来店しない消費者にはアプリを使って必要なタイミングで広告を配信できるようにしている。これにより、場所を問わず効果的な広告配信を可能にする」(田代氏)と言います。

そのほか、コンビニエンスストアチェーンでもデジタルサイネージに加え、レジ前のモニタやチラシ、店内放送(ラジオ)を組み合わせた広告を展開。店内で取り扱う商品を案内したところ、売上を大きく伸ばしたといいます。

田代氏はリテールメディアの可能性を見逃すべきではないと強調します。「アプリを開発、展開したい小売事業者は、アプリを単なる顧客接点を創出する手段と捉えるべきではない。リテールメディアのコンテンツ配信先の1つと位置付ければ、広告出稿によって売上さえ見込めるようになる。米国でこうした動きが広まりつつある中、日本でも大きなトレンドになりかねない。小売事業者はアプリの新たな可能性を探り、自社の売上を拡大する手段としてリテールメディアやアプリの活用方法を模索すべきである」(田代氏)とまとめました。


関連リンク
日本オムニチャネル協会
メグリ株式会社
LINEヤフー株式会社
株式会社ネットスターズ

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