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セミナー

“時短”という価値基準でサービスを改善、モノタロウが重視する長期的な視点

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DXマガジンは2022年8月10日、定例のDX実践セミナーを開催しました。今回のテーマは「成長し続けるモノタロウ~その秘密はデータ&人材活用にあり~」。MonotaRO CXマネジメント部門部門長の米島和広氏が登壇し、同社が求める価値基準や長期的な施策の重要性などについて言及しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。
 MonotaROは、BtoB向けの間接資材をEC経由で販売する企業。取り扱う商品は事務用品や切削工具、空圧機器、自動車用品、建築金物など約1800万点に上り、顧客は製造業や建設・工事業者などの中小企業を中心に700万人を数えます。2021年度の売上は1824億円で、10年連続で約20%成長し続けています。
MonotaROの強みについて、CXマネジメント部門部門長の米島和広氏は「低価格などの価値を付与するより利便性を重視する。例えば、商品を探すまでの時間と、探して手に入るまでの時間を短縮することが価値だと考える。必要な時に必要な間接資材を届けられるのが当社の強みだと認識する」と述べます。同社では「価格透明性がある」「必要なものが全部ある」「すぐ見つかる、買える」といった価値を打ち出し、企業の調達プロセス簡略化を支援します。
写真:MonotaRO CXマネジメント部門 部門長 ...

写真:MonotaRO CXマネジメント部門 部門長 米島和広氏

図1:取り扱い商品が拡大することで顧客や在庫、売上も拡...

図1:取り扱い商品が拡大することで顧客や在庫、売上も拡大。スケールアップを軸にした事業成長サイクルを描く

 セミナーでは、米島氏が同社の事業内容を解説するほか、ビジネスモデルや組織体制なども紹介。さらに、モデレーターの日本オムニチャネル協会 理事の逸見光次郎氏と、同社の具体的な取り組みについてディスカッションしました。
両者は対談で、モノタロウの短期的なサービス改善と、長期的な提供価値について議論。逸見氏は米島氏の講演を聞いた上で、「目先の利益にこだわり、短期的なサービス改善を繰り返す企業は少なくない。こうしたサービス改善が不要とは言わないが、同時に長期的に改善し、自社が数年後、どんな価値を顧客に提供できようにするのかも考えなければならない。MonotaROのような長期的な視点で準備や施策を進めることが大切だ」と指摘します。
写真:日本オムニチャネル協会 理事 逸見光次郎氏

写真:日本オムニチャネル協会 理事 逸見光次郎氏

 米島氏も自社の考え方として、「販売促進などの施策に取り組むものの、短期的な売上向上を見込む施策には必ずしも注力しない。小手先の施策は課題の解決には何らつながらない。“顧客の時短”という当社が目指す価値につながるかを第一に考える。他社が提供しているサービスだからなどの理由で類似サービスを提供しようとは思わない」と断言します。これを受け逸見氏も、「月次の売上が目標に届かないからといって値引きするケースは多い。こうした値引き施策はまさに短期的な改善で、長期的に売上が成長する改善ではない」と、長期的に課題を解消する施策に目を向けるべきと指摘します。
商品の納期についてもMonotaROならではの考えがあると米島氏は続けます。「当社のECサイトでは、商品よって納期を明確に表示していないケースがある。商品が明日届くのか、明後日届くのかより、確実に届くことこそ価値だと考える。さらに、明確に納期回答するメーカーの商品だけ取り扱うと、限られた商品しか当社ECサイトで扱えなくなってしまう。例え正確に納期回答できなくても、顧客が求める商品を取り扱うこと、きとんと届ける体制こそ重要だと考える」(米島氏)と述べます。納期が明確に分かるサービスを実装するより、商品の品ぞろえや安定的に届ける信頼感が重要だと指摘します。
届けるための体制強化にも乗り出します。同社は2022年1月、受発注管理システムを刷新。サプライチェーンの高度化に取り組みます。「商品の配送方法やルート最適化を目指す。具体的には、商品到着までの時間短縮と、荷別れ抑制、オペレーションの負荷平準化による配送・物流コスト削減を図る」(米島氏)と言います。例えば、在庫が欠品した場合、商品を取り寄せてから配送するとリードタイムが長くなります。そこで、商品を取り扱うメーカーなどから直接、商品を配送する仕組みを用意すると言います。これにより、在庫がある場所から商品を出荷できるようにし、リードタイム短縮を図ります。さらに、商品を取り扱うメーカーの在庫だけでオーダーが完結する場合、まとめて直送する仕組みづくりも目指します。自社に在庫がある商品と、メーカーに在庫がある商品を別々に出荷することによる負担を減らすのが狙いです。「サプライチェーンを見直すのも、顧客の時短という付加価値を提供するための一環だ。コスト削減は大事なテーマだが、そのための改善を繰り返すだけでは長続きしない」(米島氏)と指摘します。
短期的な改善と長期的な価値提供のバランスを見極めるMonotaROですが、多くの企業が短期間の結果を求めがちです。中には長期的な施策を後回しにし、短期的な施策に注力する企業も少なくありません。短期的な施策と長期的な施策でギャップが生じることも懸念されます。こうした状況の解消方法を米島氏は、「短期的な施策を主導する担当者と、長期的な視野で施策を動かす担当者を別々にするのも手だ。例えばDXのような数年先のゴールを目指す場合、長期的な施策をDXプロジェクトのリーダーが担当する一方で、短期的な施策は各現場に一任するという方法もある」と指摘。逸見氏も「短期・長期の施策を同一担当者が主導すると、どの施策も中途半端になりがちだ。さらに2~3年後のための施策か、4~5年後のための施策なのかでも、指標となるKPIや進め方、目指すべきゴールは変わるだろう。MonotaROが自社の価値基準を明確に定めるように、何のための施策なのか、そのときどんな価値を提供するのかをきちんと示せるようにすべきだ。その上で実施すべき施策を正当に見極めたい」と述べました。
 前回のDX実践セミナーでは、ローランド・ベルガーの小野塚征志氏が、イメージしにくい新たなビジネスモデルの描き方を具体的な事例を交えて紹介しています。こちらの記事も合わせてお読みください。
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