DXマガジンは2026年4月15日、定例の「DX経営セミナー」を開催しました。テーマは「伝えるだけでは届かない。体験が人を動かす〜LINEミニアプリがつなぐ体験型コミュニケーション〜」。LINEは今や単なるメッセージツールを超え、顧客体験を生み出すプラットフォームへと進化していますが、その本質はまだ十分に理解されていません。
LINEミニアプリは「ネイティブアプリの簡易版」と見られがちですが、その真価はどこにあるのか。企業はどのように顧客との関係を築くべきか。
本セミナーでは、フォーグローブ株式会社 取締役の加藤恭子氏をゲストに迎え、LINEミニアプリの本質や、リアルと融合した体験設計、マーケティングを成功に導く最新戦略について解説しました。
ネイティブアプリとミニアプリ、それぞれの強みと「共存」
セミナー冒頭では、日本において人口の約8割の1億人が日常的に利用するLINEの、圧倒的なインフラとしての強みが語られました。
スマートフォンのアプリ戦略において、企業はネイティブアプリの開発に注力しがちです。しかし加藤氏によれば、ネイティブアプリは各アプリストアからのダウンロードやそれぞれのOSでの開発が必要でコストも高くなることから、ネイティブアプリは一定の「ヘビーユーザーを抱える企業やサービス向け」であることが説明されました。一方、LINEミニアプリはアプリのインストールが不要でスムーズに起動でき、別途登録が不要であることから「初めてサービスや商品に触れるライトユーザー向け」という市場の違いが語られました。
両者は競合するものではなく、目的や会員数に応じた「共存」が成功の鍵となります。LINEミニアプリを、幅広い顧客との接点を生み出す「入口」として活用し、そこからネイティブアプリへと誘導する。こうした導線設計によって、段階的に顧客を引き上げ、強固な関係構築を実現することが可能になります。

オフラインから始まる「体験」
では、企業はどのようにしてLINEミニアプリで顧客との接点を構築すべきなのでしょうか。
かつてのLINEは、企業からのメッセージ配信を起点にオンライン購買やサービス利用を促す手法が主流でした。しかし現在では、イベントや店頭などのリアルな場での認知や購買行動を起点とし、そこから継続的な関係性を築いていくツールへと進化しています。
加藤氏からは、フォーグローブの過去実績として数百店規模の飲食チェーン店の事例が紹介されました。そこでの取組では、テイクアウト時の店頭での行列を回避するためのモバイルオーダーを軸に、会員証や会員ランクや購買回数に紐づいたクーポン機能をLINEミニアプリ上に設置し、新たな購買体験を提供しています。
また、スタジアムで開催されたスポーツイベントでの抽選参加やブースでのイベント参加の際に、NFCタグにスマートフォンをかざすだけで参加できるLINE上でその場で結果が出る抽選会を実施し、多くの方にご参加いただいたと同時に1日で500人近い友だち追加を実現した例も紹介されました。
ここで重要となるのが、LINEミニアプリの大きな強みである「UID(ユニークID)」の活用です。企業は、氏名や電話番号といった個人情報を直接取得し抽出をすることなく、一定の条件に該当するユーザーをLINEが発行するUID(ユニークID)をもとに識別し、属性や行動・購買履歴などに応じたセグメント配信を行うことができます。
個人情報取得のハードルを下げながら、精度の高いマーケティングデータを蓄積できる点は、企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
手軽に始められる独自ツール「ZooRM」
セミナー後半では、最適なコミュニケーションを実現するための具体的な手法が紹介されました。
要件に応じてゼロから開発する手法はコストや時間の面でハードルが高いものの、フォーグローブ社が提供する「ZooRM(ズーアールエム)」のようなLINEミニアプリとCRMを統合したフォーグローブ社独自ツールを活用すれば、月額5,000円からのスモールスタートが可能です。迅速に施策を試し、改善を重ねていく環境を整えることができます。
実際に日本オムニチャネル協会では、1,000人規模が集まる2026年2月に開催された「オムニチャネルDay」の受付時にこのZooRMを活用したチェックインシステムとLINEタッチを導入しました。鈴木氏は今年度のイベントを振り返り、「前回はQRコードの読み込みで受付を行ったが、1,000人規模になると全く対応しきれなかった。今回LINEタッチを導入したところ、タッチして数タップで入場が可能になったため、驚くほどスムーズに入場できた」と、その実用性の高さを絶賛しました。開発からローンチまで約1か月というスピード感も、手軽に始められるツールならではの魅力だといいます。

AI時代を見据えた多言語対応とボーダレスな未来
今後の展望について、加藤氏はAIを活用したさらなる進化についても語りました。少子高齢化に伴い、日本に滞在する外国人が増加する中、言語の壁を越えるコミュニケーションツールとして、日本国内で日常的に使われるLINEの役割は今後さらに重要になると指摘しています。
AIを用いた多言語対応に加え、各国の主要SNSであるWeChatやWhatsAppなどとの連携を進めることで、行政手続きや観光案内などをシームレスにつなぐ「オーケストレーション」の世界観を目指していると述べました。
「欲しい時に、欲しい情報が届く。」
そんな「ボーダレスマーケティング」の実現に向けて、LINEミニアプリは社会インフラとして進化を続けるビジョンが示されました。単なるメッセージツールという枠を超え、顧客との「体験」をつなぐプラットフォームへと進化したLINE。企業と顧客の関係性をより深く、豊かなものへと進化させるヒントが詰まったセミナーとなりました。
体験から“縁”へ。交流会で広がる「おむすびの会」
セミナー終了後には、参加者同士が気軽に交流できる「おむすびの会」が開催されました。本交流会は、「おむすび=縁を結ぶ」という意味を込めた取り組みであり、セミナーで知見を得るだけでなく、リアルな場で人と人がつながることを重視しています。業界や企業規模、年代の異なる参加者が一堂に会し、それぞれの立場から意見を交わすことで、多様な視点が交差する場となっていました。
交流の場では、「LINEミニアプリをどのように自社の体験設計に活かすか」「リアルとデジタルをどう融合させるか」といったテーマについて、実務に踏み込んだ本音の議論が展開されました。初参加者と会員企業が垣根を越えて対話する場面や、共通の課題を持つ参加者同士が次のアクションを模索する場面も見られ、新たなビジネスの芽が生まれていました。

セミナーで得た知識が、交流会を通じて“人との出会い”へと変わり、その出会いが次の価値創出へとつながっていく。「おむすびの会」は、体験から共創を生み出す日本オムニチャネル協会の思想を体現する場となっていました。
【関連リンク】
フォーグローブ株式会社
https://www.fourglobe.co.jp/
日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/






















