日本オムニチャネル協会は2022年7月6日、DXをテーマとした実践セミナーを開催しました。今回のテーマは「外食の未来~日本オムニチャネル協会が新次元へ挑む~」。飲食店などを展開する企業の担当者が集まり、各社の取り組みと外食産業の今後を議論しました。
当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。
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なぜ新たな施策を出し続けられるのか?/日本ケンタッキー・フライド・チキン
1100超の店舗を展開する日本ケンタッキー・フライド・チキン。セミナーに登壇した取締役 常務執行役員 開発本部長の小山典孝氏は新たな施策について、「必ずしも自ら新しいことに取り組んでいるという認識はない。店舗の約7割を占めるフランチャイズ店のオーナーなどとの会話の中で、新たな施策が次々生まれているのが現状だ。例えばドライブスルーの売上比率が高い店舗と駅前の店舗では、賑わう時間帯も売れ筋商品も異なる。施策も当然異なる。これらのシーンに応じた施策を具現化し続けた結果が、新たな施策を次々打ち出せる要因と捉える」と分析します。さらに小山氏はデータ活用にも言及し、「顧客起点で施策を考えるのは当然だが、顧客の裏の姿を探ることにも目を向ける。例えば、一人で来店しかたらといって一人分の商品しか買わないとは限らない。中には家族の分をまとめて買う一人客もいる。POSデータでは読み取れない購買行動をどう読み解くか。利用者に最適な商品を提案できるようにするためにも、データから購買行動の本質を洞察することが求められる」と述べました。
なぜお客様に愛されるのか?/スターバックス コーヒー ジャパン
国内に約1700店舗を展開するスターバックス コーヒー ジャパン。セミナーに登壇したデジタル戦略本部長の濵野努氏は愛される要因について、「大きく3つの要素が相まってブランドを築いている。1つは店舗従業員。もてなし力やコミュニケーション力が顧客とのエンゲージに強く作用している。2つ目が店舗。来店者の目的は、リラックス、仕事、休憩などさまざま。こうした人が心地よいと思える空間を提供することができているのではないか。『ここに行きたい』と思える店舗づくりも重要な要素だ。最後が商品。季節限定のフラペチーノを筆頭に、当社しか提供できない商品を心待ちにしてくれる顧客がいる。これらの価値が愛される要因につながっていると考える」と述べました。さらに、「近年は地球環境への配慮も訴求する。従業員や顧客、地域コミュニティに対し、この軸をぶらさない。こうした姿勢や取り組みにも共感してもらっているのではないか」(濵野氏)と考察します。
なぜ丸亀製麺が大躍進をすることが出来たのか?/丸亀製麺
国内に800超の店舗、さらには海外への出店を加速させる丸亀製麺。セミナーに登壇した丸亀製麺 執行役員 マーケティング本部長 兼 トリドールホールディングス マーケティング部長の南雲克明氏は、「当社は『顧客体験No.1」というビジョンを打ち出している。すべての戦略や戦術は、このビジョンを実現するために設計している。マーケティングはもとより、商品や営業などの全部署がビジョン実現を見据えた戦略を検討する。このブレない考え方が躍進を支えていると考える」と指摘します。マーケティングに限るとブランド力の向上とCX(顧客体験価値)の向上という2つテーマに取り組みます。その中の戦略の1つが、同社独自の「おせっかい戦略」です。南雲氏は、「良い意味のおせっかい。来店者の考えや気持ちを先回りして読み取る姿勢を戦略と位置付ける。これによりCXはもちろん、ブランド強化によって持続的な成長を見込めると考える」と述べました。
外食においてのファンの大切さ/カラビナハート
企業のSNSやマーケティングなどのコンサルティング事業を展開するカラビナハート。ファミリーレストランでSNSを本格運用するなどのキャリアを積んできた吉田氏はファンについて、 「ファンは数値化、可視化するのが難しい。定義も曖昧だが、『2回以上来店してくれた方』くらいの粒度でファンと定義してもいい。ファンとつながるには何より店舗での体験が重要だ。SNSやオウンドメディアはつながりを維持する、補完的に役割に留まる。一方でSNSやオウンドメディアは、必要情報を確実に伝える役割も担う。昨今はコロナによって営業時間やラストオーダー時間が頻繁に変わる。店舗ごとに異なるケースもある。こうした情報をきちんと伝えることも、ファンとのつながりを維持するには重要だ」と指摘します。例えば台風などの災害によって一部店舗が休業する場合も、「一部店舗ではどの店舗が休業しているのか分からない。顧客の立場になって、店舗ごとに休業中なのか営業時間を明確に示すことも大切である」(吉田氏)と続けました。
外食においてのDX/トリドールホールディングス
丸亀製麺などの外食チェーンを多数展開するトリドールホールディングス。執行役員 兼 CIO 兼 CTO 兼 BT本部長の磯村康典氏は同社のDX戦略を紹介しました。「当社は『DXビジョン2022』という方針を打ち出す。具体的には、店舗スタッフが『食の感動体験の探求』に集中できるように、業務プロセスとITシステムを最適化する。さらには、『グローバルフードカンパニー』に相応しい成長スピードと高い事業継続性を支えるビジネスプラットフォームをSaaS、BPO、ゼロトラスト、DaaSを組み合わせて実現する。店舗やマーケティング、データマネジメント向けのプラットフォームを構築してDXを加速させる」(磯村氏)と述べました。さらに自前でシステムを開発する内製化についても言及します。「当社はSaaSやBPOといった外部のリソースを徹底活用する。『SaaSでは自社のニーズを吸収できない』なんて声を聞くが、SaaSベンダーに本気で取り組んでもらえばSaaSでも十分活用できる。内製化によりシステムをスピード感を持って開発することができるが、SaaSやBPOを活用すればさらに事業を加速させられる。海外企業の成長スピードに追随するにはSaaSやBPOに目を向けることも大切だ」(磯村氏)と指摘しました。 なおセミナーでは、登壇者が視聴者からの質問に答えたり、日本オムニチャネル協会の外食部会での今後の活動内容にも触れたりしています。詳しくはセミナーの動画をぜひご覧ください。 セミナーの様子はこちらをクリック。
日本オムニチャネル協会
https://www.omniassociation.com/
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