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三越伊勢丹が進めるDX、お客様に価値を提供できるよう自社を変革することが本質

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日本オムニチャネル協会は2023年7月18日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「三越伊勢丹HDのCX~顧客戦略再定義とコーポレートトランスフォーメーション~」。三越伊勢丹 伊勢丹立川店店長 北川竜也氏をゲストに迎え、顧客接点を踏まえた同社の取り組みを解説しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。

百貨店大手の三越伊勢丹。百貨店を取り巻く環境が劇的に変わる中、同社はどんな戦略を打ち出し、新たな顧客を獲得しようとしているのか――。

セミナーでは「三越伊勢丹HDのCX~顧客戦略再定義とコーポレートトランスフォーメーション~」と題し、同社の顧客戦略を紹介しました。ゲストには三越伊勢丹 伊勢丹立川店店長 北川竜也氏が登壇。顧客向けの戦略をどう見直し、全社の変革をどう断行したのかを詳しく解説しました。

店舗の強みを活かしつつオンラインとの融合で相乗効果を図る

北川氏は冒頭、百貨店を取り巻く現状を解説。「多くのメディアが百貨店の将来を危惧し、中にはすでに終わったなんて論調も珍しくない。しかし足元を見ると、富裕層の消費は早期に戻り、伸びている。伊勢丹新宿本店に限れば、2022年度は2008年度以降で過去最高の売上を記録した。今後も顧客を拡大し、売上高の継続伸長を図っていく」(北川氏)と、順調な成長を継続させる姿勢を示します。ロイヤリティの高い顧客に限れば、コロナに関係なくコロナ前の売上まで戻っているといいます。

そこで同社は2023年度の計画として、次の4つを掲げます。営業利益は統合後最高益となる350億円を見込みます。
・識別顧客の拡大により堅調な日本人売上高は更なる拡大を目指す
・インバウンドは直近の回復トレンドの継続を想定
・構造改革の推進による販売管理費の削減は継続
・物価上昇に伴うコスト増加は引き続き考慮

こうした取り組みを進める上で、北川氏はDXの重要性を指摘します。「オムニチャネル戦略や顧客データ分析、モバイルの活用、AI導入など、企業が取り組むべき施策の多くがデジタルに関与するものばかり。百貨店としてDXを成功させるためには、こうしたデジタルを積極的に活用することが欠かせない」(北川氏)と言います。もっとも北川氏の場合、こうした取り組みを主導してきたわけではありません。「私が多くの時間を割いて取り組んできたのは社内調整だ。百貨店の場合、いろいろなことに取り組まなければならない。必要な取り組みは5000以上あるはずだ。しかし、その中から優先度の高い取り組みに絞るには、さまざまな部署との調整が欠かせない」(北川氏)と、社内調整の必要性を訴求します。

セミナーでは、三越伊勢丹が進めるDX戦略の概要についても紹介しました。根底にある考え方として、「自社の特性を明文化し、強みを踏まえて戦略・戦術を絞り込む。限られたリソースを最大活用できるようにする。さらに顧客への提供価値を再定義し、超短期サイクルで仮説を検証、変化し続けることを前提とする」(北川氏)といいます。店舗、人、商品といった得意領域に対し、レバレッジを効かせられるデジタルサービスを具備し、リアルでもオンラインでも顧客の期待に応えられる状態を目指すようにするといいます。伊勢丹立川店の店長である北川氏は、立川店もこした根底の考え方に基づき、他にはない強みを洗い出し、立川店ならではの存在意義を打ち出すといいます。「西東京存在の高級感で、上質な生活を送るお客様にとって唯一無二の上質なお買い物サロンであることが立川店の存在意義だ。まずはこの意義を明確にし、優先度の高い施策をしっかり進めることに目を向けたい」(北川氏)と続けます。

地域に根付いた百貨店の強みに加え、オンラインを組み合わせた成長戦略を描くのも同社の特徴です。日本橋三越や新宿伊勢丹といった百貨店の場合、売上の50~60%は、近隣5~6区に住むお客様の購買で成り立っていると言います。こうした構図にオンラインの利便性を掛け合わせ、店舗事業との相乗効果を見込む成長戦略を描きます。「店舗の事業を強化するのに加え、店舗とオンラインの最適な融合を進める。その結果、三越伊勢丹独自のシームレス化を実現する。魅力度や熱狂度の高い企画をフックに新規顧客を獲得するほか、ロイヤリティの高い顧客に対し、シームレスな利用を促進してLTVのアップを図る」(北川氏)と、オンラインを駆使した施策実現も視野に入れます。

さらに顧客の考え方を見直し、顧客戦略も再定義します。「従来の顧客化の考え方は、いかに川上の流入量を増やすかに主眼を置いていた。さらに途中での離脱を防ぐかがフォーカスされがちだった。しかし現在、顧客化するには既存のコアなファン層の熱狂度を拡散させる方法に主眼が置かれている。コアとなるファンコミュニティにアプローチし、さらに拡大と継続させるよう取り組む。その結果、よりコアなファンを獲得できる」(北川氏)と言います。広告を展開する際も、獲得したい顧客層を明確に絞ることにも取り組むと言います。

同社がDXに取り組む上で大切な視点にも言及しました。「デジタルツールの導入がデジタル化では決してない。当社が考えるのはCX、つまりコーポレートトランスフォーメーションである。自社の変革こそがDXの本質だ。三越伊勢丹グループがこれまで築き上げたブランドや安全安心、信頼といった価値をベースに、お客様や市場の普遍的なニーズを捉えていきたい。こうしたニーズを汲んだ商品・サービスをお客様に提供できる仕組みづくりに取り組みたい。これらを支えるビジネスモデルを創出するとともに、変化し続けることを前提に仕事のやり方を作り出していきたい」(北川氏)と指摘します。顧客にとって価値あるものを提供する体制を目指し、自社を変えていく取り組みこそがDXの本質だとまとめました。

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