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日本オムニチャネル協会は2023年12月19日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「売れるエシカル~ダイバーシティ、フェムテック、ヴィーガン。消費者に求められるために~」。環境や社会に配慮した“エシカル”を全面に打ち出す商品をどう訴求し、販売を軌道に乗せればよいのか。セミナーでは、消費者から共感を集めるための方法を解説するとともに、エシカルを謳う実際の商品例、販促方法などを紹介しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。

環境や社会、消費者への影響に配慮することを意味する“エシカル”。環境保全の機運が世界的に高まる中、エシカルを全面に打ち出す製品やサービスが数多く登場するようになりました。

とはいえ、エシカルさえ謳えば製品・サービスが売れるわけではありません。消費者から高い支持を集める製品・サービスはごく一部に留まるのが現状です。

では、“エシカルな商品”をどう売るべきか。消費者からの共感をどう集めるべきか…。今回のセミナーでは、エシカルな商品展開を成功させるポイントを解説しました。

ゲストには、実際に“エシカルな商品”を手掛ける企業の担当者が登壇。各社の取り組みや工夫、売るときに気を付けていることなどを紹介しました。さらに商品開発のポイントや情報発信方法、購入者へのアフターフォローなど、プロセスに応じた工夫や注意点にも踏み込みました。

2030年の国内エシカル食品市場規模は6兆円の見込み

そもそも「エシカル」を取り巻く市場はどんな状況なのか。セミナー冒頭、スタイルビズ 代表取締役で日本オムニチャネル協会のフェローでもある青山直美氏がエシカルの現状について解説しました。

青山氏はエシカルを前提とした消費行動について、消費者庁の定義を引用しつつ「地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動を指す。環境問題や人権問題などの社会的課題を踏まえ、一人ひとりができることを考えたり行動したりすることがエシカル消費である」と紹介。具体的には、社会課題に配慮した製品・サービスを購入したり、地元商店街で買い物したり、地域で生産された農産物を購入したりするなどの行動がエシカル消費だと解説します。さらに、「環境や地域などの特定領域に限った動きではない。対象となる領域は広がりつつあり、さまざま分野でエシカル消費について考える機運が高まっている」(青山氏)と続けます。

写真:スタイルビズ 代表取締役 青山直美氏

市場規模も膨らみ続けているといいます。「中国と日本の調査会社によると、エシカル食品の2023年の世界市場規模は4502億ドル(約63兆円)に及ぶ。今後も成長し、日本だけでも2030年には6兆円規模の市場になる見込みだ。現時点で日本のエシカル食品市場は3.7兆円と推察される」(青山氏)と強調します。なお、消費者庁が実施したエシカルに関する意識調査では、「年代を問わず、エシカル消費を認識する動きを読み取れる。エシカルな製品・サービスの購入意欲も年々上昇傾向で、特に60歳以上の女性の関心度は他の世代より高い」(青山氏)と分析します。

 一方で青山氏は、「エシカルだからといって消費者の購買意欲が高まるとは必ずしも言えない。いかに良い製品か、優れたサービスかといった本質を追求しない限り、エシカルても売れないのは言うまでもない。さらに買い続けてくれる商品であることも重要だ。エシカル商品を展開するなら、利用者がいかに買い続けるか、使い続けるかを想定した製品開発やサービス設計、販売戦略を念頭におくべきである」と指摘しました。

障がいのある作家が描いたアート作品を世に発信

エシカルを全面に打ち出す企業は何を強みにし、どんな販売戦略を掲げるのか。セミナーではエシカルな商品を手掛ける3社の担当者が登壇。具体的な取り組みを紹介しました。

最初に登壇したのは、ヘラルボニー 執行役員COOの忍岡真理恵氏。同社は、国内外の主に知的障がいのある作家が描いたアート作品を使った事業を展開します。

忍岡氏はヘラルボニーの役割について、「日本では障がいがある方の人口は936万人(内閣府調べ)に及ぶ。家族や関係者を含めれば、関係人口はさらに膨らむ。しかし多くの人が、障がいのある人と日々接するわけではない。この時点で多くの人と障がいのある人とは隔離され、偏見や誤解を生みやすくなっている。こうした課題を解決するのが、当社の役割の1つだと考える」と指摘します。

写真:ヘラルボニー 執行役員COO 忍岡真理恵氏

同社では、153人の作家が描いた2000点以上のアートデータのライセンスを保有。高解像度データを使って企業のブランド構築や商品企画立案などの支援を手掛けます。「原画の販売も一部で手掛けるが、スケーラビリティを得にくい。そこで作品をデータ化し、企業などとデータを使用するためのライセンス契約を締結する。その使用料の一部を作家に還元するビジネスモデルを展開する」(忍岡氏)といいます。

同社が展開するアート作品への支持は極めて高いと忍岡氏は続けます。「顧客ロイヤリティを測る指標のNPSは56.3と突出して高い。これは、高い人気を誇るカフェチェーンや自動車メーカー、アミューズメント施設などを手掛ける企業の数値を上回る。それだけ多くのファンが、当社の事業を支持している」(忍岡氏)と、ヘラルボニーならではの強みと価値を強調しました。

女性から高い支持を集める吸水ショーツブランドを展開

次に登壇したのは、Bē-A Japan 代表取締役CEOの髙橋くみ氏。同社は「Bē-A(ベア)」と呼ぶ、フェムテックをキーワードにした吸水ショーツブランドを展開します。独自のテクノロジを駆使した構造で、装着時の安心感を生み出す点を特徴に打ち出します。

写真:Bē-A Japan 代表取締役CEO 髙橋くみ氏

ブランドを展開する背景について高橋氏は、「生理について話すのはタブーという社会的風潮は今なお根強い。しかし女性にとっては長く付き合うもの。今後はもっとフォーカスされるべきではないか。その思いでブランドを立ち上げた」と経緯を説明します。さらに、「プラスチックを含む生理ナプキンはゴミ問題に直結する。プラスチックゴミをどう減らすかが全世界で求められる中、こうした社会課題にも踏み込めればと考えた」(高橋氏)と、ゴミ削減を見込むビジネスも想定します。

同社は現在、「超吸収型サニタリーショーツ『Bē-A(ベア)』というショーツを販売。エシカルなものづくりを通じて世の中を変えるビジョンを描きます。ショーツの特徴について高橋氏は、「高い吸収力が特徴の1つで、世界最高レベルの120ml~150mlの吸水力を持つ。約2年以上の歳月をかけて生み出した縫製技術で、特許を取得する」と強調します。さらに「従来の生理アイテムは不要で、かぶれや蒸れから解放されるのもメリットである。もちろん洗濯すれば繰り返し使える。ゴミ問題に貢献できる新しい形のサニタリーアイテムと位置づく」(高橋氏)と続けます。

2020年7月に販売を開始し、ECのみで初日に3000枚を完売した実績を持ちます。さらに販売から3年の販売総数は15万枚以上となっています。「リピート率は96%と極めて高い。それだけ多くの人に支持されている。現在は直営ECや主要ECサイトに限らず、大手ドラッグストアチェーンでも取り扱ってもらえるようになった。テレビや雑誌で紹介される機会も徐々に増え、Instagramのフォロワーは合計1650万人に及ぶ」(高橋氏)と、高い反響と多くの支持に手ごたえを感じているといいます。なお、世界のフェムテック市場は2025年には5兆円規模になるといいます。「吸水ショーツや生理用品などの市場は、国内だけでも大きな伸びしろがある。市場の拡大に追随し、当社の事業を成長できればと考える」(高橋氏)とまとめました。

社交性や機能性、持続可能性を備えた服を通じて女性の経済参画を後押し

最後に登壇したのは、kay me 代表取締役の毛見純子氏。同社は、キャリア女性向けのワンピースやジャージースーツなどを販売する事業を展開します。ヴィーガンレザーを使ったジャケットを開発するなど、他社にはない独自性を強みに打ち出します。

写真:kay me 代表取締役 毛見純子氏

kay meを起業した背景について毛見氏は、「女性の経済参画を後押ししたい。女性がさまざまな分野に進出することで世界を活性化する。そんなパーパスを実現する事業を展開する」と、女性が働くことを想定した製品ラインナップを打ち出します。

同社の服は、ただ働きやすさを追求するだけにとどまりません。「華やかさやラクに着られる服であることはもちろん、10年以上着られる耐久性と普遍的なデザインにも配慮するのがkay me特徴であり強みである」(毛見氏)と、社交性や機能性、持続可能性を備えた服を展開する点を特徴に打ち出します。「女性が社会に進出し、頑張れば頑張るほど時間がなくなってしまう。そんな中でも華やかで、かつラクに仕事を続けられる服を提供することで、女性の活躍を後押しできるのではないかと考えた」(毛見氏)と、服のコンセプトについて話します。

kay meが提供する服のメリットにも言及します。「当社の服は、洗濯機で丸洗いでき、アイロンも不要な素材しか使用していない。忙しい女性でも手間なく着続けられる点が特徴である。さらに、ストレッチ性と機能性素材を使用し、伸びにくい素材を用いた服と違って体が疲れにくい。ワンピース主体で簡単にコーディネートできる点も服選びの手間をなくせる利点である」(毛見氏)と強調します。

なお、同社の服は国内生産のみで、「国内の縫製職人の技術継承も目的の1つと考える。国内の高い技術を売りにすることで、消費者からの指示も集められる」(毛見氏)といいます。さらに「当社が取り扱う服は、定価で販売される期中の消化率が95%となっている。一般的にアパレルの定価消化率は2~3割と言われることから、他の商品/ブランドより高い支持を集めていることを裏付けている。国内生産という強みを全面に打ち出し、衣料廃棄ゼロを今後も継続していきたい」(毛見氏)と続けます。そのほか、動物の毛皮や皮革を使わず、素材開発を積極的に進めたり、ジュートロスの刺繍技術を継承したりといった取り組みにも注力し、他社との差異化を図っていく考えです。


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