DXで事業を創出、もしくは事業を拡大した企業はどんな点に気を付け、成功へと突き進んだのか。「DXスタートアップ革命 第14回」は、建設業界の工事会社と職人をマッチングするアプリを提供する助太刀。業界の課題にどう切り込み、DXをどう進めていったのか。同社の取り組みを紹介します。なお、本連載は日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」の内容をもとに編集しております。
建設業界では職人と工事会社とのつながりは“人づて”なのが一般的。これをアプリでマッチングできるようサービス化したのが助太刀です。同社は建設現場で働く職人向けのアプリを開発。サービスリリースから約3年半で16万人超の登録事業者を獲得するに至ります。
代表取締役社長兼CEOの我妻陽一氏は、「建設業界は人手不足と言われるが、業者や職人の仕事は不安定。断るほど仕事があるかと思えばまったくないというときもある。こんな状況を変えたかった」とアプリ開発の経緯を話します。
建設業界は派遣が禁止されているという状況もアプリの必要性を後押しします。「派遣禁止のため、人が足りない現場に職人を手配しにくい。建設業界の“人”にまつわる課題をITを駆使して解決したかった」(我妻氏)と振り返ります。
アプリを使って仕事を探す職人向けに、使いやすいUI/UXに配慮したと言います。「例えばユーザー登録。メールアドレスを入力するだけでも敷居が高い。そこで携帯電話番号を入力するだけでユーザー登録できるよう簡略化した。二重認証によってセキュリティも高められる」(我妻氏)とメリットを強調します。
業者や職人を探しやすくするため、ゼロから業者や職人を検索せずとも、職種や地域で絞り込んだ業者や職人がレコメンドされるようにしています。独自のアルゴリズムを使い、仕事の相性をマッチ度として表示する機能も実装します。一方で、悪質な発注者や質の悪い職人と出会ってしまうという不安を解消するため、建設業向けに独自の指標を使って評価する機能も備えています。さらに悪質な業者や職人を報告する機能も設けており、悪質と判定された業者に対しては利用停止などの対応が可能になります。
今後は諸官庁との連携も行なっていきます。我妻氏は「より公共性の高いサービスになるための取り組みに注力したい」と言い、建設キャリアアップシステム(CCUS)との連携を進めるほか、大手ゼネコンの労務担当者や弁護士、国交省などと勉強会を実施し、「業界全体の健全化にも貢献したい」(我妻氏)と意欲を見せます。同社は“若い人が夢を持てる業界にしたい”というビジョンのもと、建設業界の課題解消を進める考えです。
Information | |
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企業/団体名 | 株式会社助太刀 |
所在地 | 東京都渋谷区 |
事業内容 | インターネットを利用したサービスの企画、制作及び運営 |
取り組む課題 | 建設現場で働く職人と工事会社をつないで業界の人手不足を解消したい |
解決策 | 建設業界の工事会社や職人を容易にマッチングするサービスを提供する |
本連載は、日本経済新聞出版刊行の「DXスタートアップ革命」の内容を一部編集したものです。
日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」(守屋実監修)
日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」(守屋実監修)
筆者プロフィール
守屋実
1992年、ミスミ入社、新規事業開発に従事。2002年、新規事業の専門会社エムアウトをミスミ創業者の田口弘氏と創業、複数事業の立ち上げと売却を実施。2010年、株式会社守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動。ラクスル、ケアプロの立ち上げに参画、副社長を歴任後、ジーンクエスト(ユーグレナグループ)、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、サウンドファン、ブティックス、SEEDATA(博報堂グループ)、AuB、みらい創造機構、ミーミル(Uzabase グループ)、JCC、テックフィード、キャディ、セルムなど数々の企業の役員、理事などを歴任。JR東日本スタートアップのアドバイザー、JAXA上席プロデューサー、博報堂フェロー、内閣府の有識者委員などを務める。2018年にブティックス、ラクスルを2カ月連続で上場に導く。著書に『新しい一歩を踏み出そう! 』(ダイヤモンド社)。近著は『起業は意志が10 割』(講談社)。