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第4回 システム課題対応

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 前回までは現状のシステムを見える化して課題を整理する手順について説明しましたが、第4回では課題に対してどのように対応していくかについて説明します。

優先度の高い案件から対応する

 課題を一覧で整理したら優先度をつけて優先度の高い案件から対応する、というのが一般的なやり方だと思います。その場合、優先度の基準をどうするかが問題になります。売上インパクトが高いものや、コスト削減につながるもの、すなわち利益への貢献度が高い案件から優先度をつけなければなりません。すべての課題に対応していくことは難しいので、効果の高いものから対応していくことはビジネスインパクトを考えても必要です。ただ、頭ではわかっていてもなかなかできないことが多いのも事実です。声の大きな人が言っていることや、クレームの声が大きい案件が必ずしも優先度が高いわけではない、ということに注意して優先度をつけることが大切です。

重要度・緊急度マトリクスで課題を整理する

 緊急度と重要度をつけて対応方針を決める方法も有効です。これは7つの習慣の第三の習慣「重要事項を優先する」の考え方を取り入れたやり方で、課題に対応するときに緊急性の高いものではなく、重要度の高いものから優先的に対応しなければいけない、という考え方です。図に示すように緊急度と重要度のマトリクスを作成し、課題が第1領域(重要かつ緊急なこと)、第2領域(緊急ではないが重要なこと)、第3領域(緊急ではあるが重要ではないこと)、第4領域(緊急でも重要でもないこと)のどの領域に入るのかを一つ一つ入れていきます。ここで大事なことは、優先しなければいけないのは、第1領域と第2領域で、緊急であっても重要ではない第3領域は優先度を下げる、もしくは捨てる判断をするということです。また、振り分けの際に気を付けなければいけないのは、なんでも第1領域に入れてしまう人が多いことです。自身の業務を当てはめたときに、自身の業務はほとんどが第1領域だと思っている人がよくいますが、上長から見ると、第3領域であることが多いものです。振り分けの際に内容をきちんと見極め、上長の意見等も取り入れたうえで、振り分けを行うことがポイントです。
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すぐに対応できるものと時間がかかるものを分けて考える

 緊急度と重要度で優先度を決めたら、あとはすぐに対応できるものと対応に時間がかかるものを分けて対応していくことも必要でしょう。システムの場合新たな機能を追加する、既存の機能を改修するといった案件は、要件を詰めるのにそれほど時間もかからないでしょうから、すぐに対応できるものについては、対応を進めたほうがいいでしょう。逆に現在のマネージメントの仕組みを変えることや、将来の基幹システムの仕組みを見直す、といった十分に議論を重ねていかないといけない案件は時間がどうしてもかかってしまいます。すべての案件の議論に時間をかけていてはスピードが犠牲になるだけですから、すぐに対応できるものはどんどん進め、並行して時間がかかる案件を計画的に進めていくことが大切です。

マネージメントフローを整理する

 承認フローが確立されていないなど、マネージメントルールが確立されていない会社も多いのではないでしょうか。特にシステムの導入フローがないために、会社として承認されている案件でも、他の部門は何も聞いていない、ということはよくあることかと思います。システム導入は投資が高額になることも多いため、会社として確立されたマネージメントフローを作る必要があります。システム開発においては工程というある程度固まった考え方がありますので、それに沿って、誰がどのタイミングで承認を行うかを決めたほうがいいでしょう。特に上流工程にあたる、方針の検討や、概要の検討については必ず経営層や他の部門の責任者がいる場で承認する必要があります。経営会議などがそれにあたる会社もありますが、別途プロジェクト審査会のような定例の会議体を設けることも必要です。プロジェクト審査会の場で、案件の詳細の説明を出席者全員に行なったうえで承認を受けるようにすれば、他部門が知らないというようなこともなくなり、かつ承認された案件に協力してくれるようになります。
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経営層へ報告し、プロジェクト化する

 現状のシステムの問題点と対応の方針について整理ができたら、ここまでの取り組みを経営層に報告します。企業によってシステムに詳しい経営者の会社もあれば、あまりシステムに詳しくない方もいらっしゃると思います。現状の課題点を大きく3点程度に整理して報告資料を作成するなど、分かりやすくまとめて報告をします。この取り組みが、将来のシステムの方向性を決めるプロジェクトとして経営層に承認されれば、他部門からの協力者も増え、メンバーのモチベーションも上がります。今後進めていくにあたっても、会社からの強力な後押しを得ることは重要です。  ここまででシステム診断を行い、経営層に報告を行って今後の方向性を決める説明をしてきました。次はいよいよプロジェクトのスタートになります。次回はプロジェクトを立ち上げ、将来のシステム化をどのように進めていくかについて説明します。

(つづく)
岡村 克久(Katsuhisa Okamura)

1993年(株)オービックにてSEとしてシステム開発に従事。2000年(株)イーショッピング・ブックスに入社しECサイト開発に携わる。2008年(株)セブンアンドアンドワイ システム開発部部長就任。2015年(株)セブンアンドアイネットメディア執行役員就任。オムニチャネル戦略の開発PMを務める。2017年同社を退社。2017年デジタルシフトウェーブ入社。同社取締役に就任。
■上記の著者へのDX相談・講演等の依頼は、こちらから

株式会社デジタルシフトウェーブ

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