MENU

連載

伝わる文章には「型」がある

  • URLをコピーしました!

新規事業を成功させるためには、周囲を巻き込み賛同を得られる企画書や資料のクオリティこそが重要。「意味が分からない」「理解しにくい」という文章を並べるだけでは事業推進すらままなりません。では簡潔で要領を得た文章で「伝える」ためにはどんな工夫が必要か。【DX時代を生き抜く文章術 第2回】は、分かりやすい文章を書くときの基本となる「型」について紹介します。なお、本連載は「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(CCCメディアハウス)の内容をもとに編集しております。

文章には「型」があり、伝えるためには「コツ」があります。その種類は多くありません。

「結論」あるいは「主張」を先に書き、それを補足する理由や客観的事実を重要な順に書いていく――ただそれだけです。

「えっ、それだけ?」という声が聞こえてきそうですが、本当にそうなんです。簡単ですよね。私自身、学生時代の国語の成績はほめられたものではありませんでした。新聞記者になりたての頃は「ベタ記事」のような短い文章を書くのに半日以上四苦八苦しました。しかし、「型」を覚えたから30年以上も新聞社に勤められているのです。

特にビジネスの現場で川端康成のような名文家やスティーブ・ジョブズのような名スピーカーになる必要はないのです。私たちは彼らとは違った「近道」を見つけ、「簡単に伝わる」文章のテクニックを身につけたいものです。その「近道」として、新聞記者のテクニックが役に立つのです。

長い文章ほど価値がある、というのは錯覚です。短い文章で伝わるなら、それに越したことはありません。文章の長さは目的に応じて使い分ければよいのです。

トヨタ自動車では、報告書や提案書をA3もしくはA4判用紙1枚にまとめる文化があるといわれます。まさに合理的な企業文化を映しています。日本経済新聞社でも、以前同様な指導がありました。忙しい経営幹部に何枚もの文章を読んでもらうのは現実的ではありませんから。

情報があふれかえる現代にあって、「読むか読まないか」は一瞬で判断されます。パッと見て「読みやすそう」と思ってもらえることはますます重要になってきているのです。

「文章は読んでもらえないもの」という前提で、コンパクトにまとめましょう。

コンパクトに書くために参考になるのが新聞記事です。新聞記事は重要かつ新しい情報を最初の方にもってくるのが大原則です。朝刊1部は新書2冊分の文字数があります。朝の忙しい時間にそんな文字数は読めません。時間がなくてもさまざまなニュースが目に飛び込み、内容を理解できる工夫がなされています。

新聞記事の文章は「逆三角形」構造になっています。多くの場合、記事の最初の段落に5W1Hの要素が含まれます。When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように、どうやって)という要素。こうした基本情報が冒頭に配置され、その後も重要度が高い情報から配置されていくのです。

新聞記事は紙面が限られているため、締め切り間際に重要なニュースが入ってきたりすると、スペースに収まらない場合もあります。そのため編集担当(整理部記者)が後ろから文章を削っていく原則があるからです。

逆三角形構造のポイントは、「何をどう伝えたいのか」を一言(一文)で要約し、伝えたい要素から優先的に並べていくだけのことです。

大切なのは、書き手が全容をきちんと理解していること。そうでないと、伝えたいことの優先順位がつけられません。当たり前のことですが、書き手が理解していないものを読み手が理解できるはずがありません。

分かりやすい文章を書くのは、「頑丈な家」をつくるのと同じです。

まず土台を固めて柱を立てていきます。土台が結論(主張)であり、柱や梁などの構造軀体(スケルトン)がそれぞれのファクト(客観的事実)です。ですから文章も結論を先に書く。その後に結論を補強するためのファクト、具体的には「理由」「事例」「詳細」をもってくる。理由や事例が複数あると、柱が増えて「頑丈な」文章ができあがるわけです。

見出しやタイトルを柱(スケルトン)と位置づける見方もできます。柱が小見出しやタイトルと考えれば、それに壁や窓枠などのファクトで肉付けしていくのです。そうすると段落ごとに同じ趣旨の塊ができ、丈夫な家ができあがるわけです。

小見出しやタイトルは段落の冒頭の文章になる場合があり、箇条書きで整理しておいた材料が生きてきます。



本連載は、CCCメディアハウス刊行の「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」の内容を一部編集したものです。
CCCメディアハウス「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(白鳥和生著)
 (4163)

筆者プロフィール
白鳥和生
株式会社日本経済新聞社 編集 総合編集センター 調査グループ次長。
明治学院大学国際学部卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。編集局記者として小売り、卸・物流、外食、食品メーカー、流通政策の取材を担当した。「日経MJ」デスクを経て、2014年調査部次長、2021年から現職。著書(いずれも共著)に「ようこそ小売業の世界へ」(商業界)「2050年 超高齢社会のコミュニティ構想」(岩波書店)「流通と小売経営」(創成社)などがある。日本大学大学院総合社会情報研究科でCSRも研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得。消費生活アドバイザー資格を持つほか、國學院大学経済学部非常勤講師(現代ビジネス、マーケティング)、日本フードサービス学会理事なども務める。
シェアはこちらから
  • URLをコピーしました!
  • 週刊SUZUKI
  • SUZUKI TV
  • DXセミナー

メルマガ登録

DXマガジンでは、DX成功のヒントを毎月約100本以上発信中!!
ご登録はこちらから!

メールアドレス (必須)

お問い合わせ

取材のご依頼やサイトに関するお問い合わせはこちらから。

問い合わせる