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地方の広告代理店が抱える課題とDXを進める3つのポイント(前編)

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DX化の波は業界を問わず訪れています。広告業界も例外ではありません。多くの広告代理店がデジタルを駆使し、「ネット広告」に軸足を置きつつあるのです。しかし地方に限ると、「ネット広告で効果を出せない」「ネット広告が事業化できない」と踏みとどまってしまうケースが少なくないのです。何が原因なのか。ここでは地方広告代理店が直面する現状と、DXを進める上で圧し掛かる課題を整理します。※本記事で触れる「地方」とは、大阪と名古屋、福岡商圏を除く、首都圏以外の地域を指します。

地方の広告代理店の現状

 地方のネット広告の取り扱い状況を首都圏と比較すると、案件数や売上、市場規模はどれも下回っています。要因の1つに、ネット広告に関する情報や支援会社が首都圏や大都市に集中していることが挙げられます。2017年時点では、日本のインターネット広告の年間売上高の85%以上が東京という調査データもあるほど、首都圏に集まっています。  ネット広告の存在感は年々高まり、そのニーズは地方にもあります。しかし、地方にはネット専業の広告代理店が少なく、広告を出稿する広告主の知識も不足しているのが現状です。こうした状況から、地方の広告代理店は次の2つの特徴が見られます。 ・Web制作会社や総合広告代理店がネット広告運用を受託している
・ネット広告に精通した人材への投資に消極的
 それぞれの特徴を詳しく解説します。

「Web制作会社」や「総合広告代理店」がネット広告運用を受託している

 結論から言うと、餅は餅屋と言うように、ネット広告の運用は「ネット専業広告代理店」に依頼するのが一番です。しかし、地方ではネット広告を主に取り扱う「ネット専業広告代理店」は多くありません。そのため、広告主がネット広告を依頼する先は、Webページを作る際にオプションとして広告出稿を「Web制作会社」に頼むケースが目立ちます。元々新聞やテレビ、チラシなどの広告で取引のある「総合広告代理店」にネット広告運用を任せるケースも少なくありません。  顧客である広告主からネット広告の運用を依頼された「Web制作会社」や「総合広告代理店」の営業担当者は当然、顧客の力になりたいという思いでネット広告の依頼を引き受けます。しかし、Web制作会社や総合広告代理店にとってネット広告は本業ではありません。運用に関する知識やノウハウが不足していることが多く、営業担当者が調べながら対応することも多々あります。結果として、効果的に広告運用できず、期待するような成果を得られないことが起こります。  地方の広告主が「Web制作会社」や「総合広告代理店」にネット広告の運用を依頼する理由には、元々付き合いのある企業であれば、コミュニケーションに時間をかけずにやり取りできるという点もあります。  新しい取引先が増えることによるコミュニケーション負担を懸念する広告主は一定数います。過去に取引実績のある企業ならば、自社の商材やサービス、ネット広告以外のプロモーション状況などを把握しているため、広告主はストレスを感じることなく依頼できるのです。  これらの理由から、地方の広告主は「Web制作会社」や「総合広告代理店」にネット広告運用を依頼する傾向がとりわけ高いのです。

ネット広告に精通した人材への投資に消極的

 地方の広告代理店が新たにネット広告事業を拡大していくために、「ネット広告に詳しい人材を採用する」選択肢もあります。しかし、地方でネット広告に明るい人材を採用するのは難しいのが実情です。  さらに、地方では現在の経営状況を維持することを優先し、新規事業への人材投資に消極的な企業が珍しくありません。新規事業に参入せずとも地方経済が問題なく回っていれば、自分の身の回りのものだけしっかり守り、維持するという考えは当たり前とも言えます。“あえて参入する必要がない”という地方ならではの事情が、消極的な姿勢を打ち崩せずにいるのです。

地方広告代理店の抱える3つの課題

 こうした環境を踏まえた上で、地方の広告代理店が抱えるネット広告の運用課題は3つあります。 ・ネット広告に関する情報が不足している
・世代間でネット広告運用に対する考えが異なる
・組織体制を構築するマンパワーが不足している
 それぞれの課題を解説します。

課題1. ネット広告に関する情報が不足している

 例えば日本で展開されてから6〜7年が経つFacebook広告の場合、地方では「これからFacebook広告を、まずは10万円からやってみたい」という広告主が多数います。首都圏で行われていることが、5〜6年後に地方で展開されることが少なくありません。  このように、地方では情報がなかなか入って来ないのです。その背景には、首都圏と比べると市場規模が小さい上、地方に行くほど打ち合わせに掛かる時間や費用もかかってしまうため、コミュニケーションを積極的に取りづらい対象となってしまうのです。  もっともコロナ禍でオンライン会議やウェビナーが一気に浸透し、物理的な距離の問題は多少解消されつつあります。しかしそれでも、地方への情報提供は今なお圧倒的に少なく、首都圏で当たり前のように取り組まれている最新情報が手に入りづらい状況なのです。

課題2. 世代間でネット広告運用に対する考え方が異なる

 広告代理店の社内では、ネット広告運用に対する姿勢が「30代までの世代」と「40代より上の世代」で2パターンに分かれる傾向があります。それぞれの考え方の違いが、ネット広告を運用する上での障壁にもなります。  例えば30代までの世代は、ソーシャルメディアに日々触れているので、SNS広告を当たり前に知っています。どのようなネット広告が感覚的に流れているのかを知っているため、自分でも顧客(広告主)にネット広告を提案して取り組みたいという意欲があります。  しかし、いざ提案しようにも、ネット広告に関するインターネット上の情報量は膨大かつ玉石混在で、正しい情報を判別できません。ネットから仕入れた情報だけでは顧客(広告主)に正しい提案をできず、顧客もネット広告で期待した成果を得られません。顧客から「やっぱりネット広告はダメだね。やめておこう。うちはチラシを打っとくわ/DM送っとくわ/新聞に出すわ」と言われてしまいかねません。そのため30代までの世代は、ネット広告を提案するのを諦めてしまう悪循環に陥るのです。  一方、40代より上の世代は、新聞やテレビ、チラシなどのマス広告で満足しています。そのため、積極的にネット広告に関する情報を取りにいきません。  若い世代は「ネット広告に意欲的」で、40代より上の世代は「ネット広告に消極的」です。一見、若い世代と40代より上の世代でネット広告に対する考え方は真逆のように思えるでしょう。しかし、どちらのパターンも根底には情報不足という課題があります。  地方でも正しい情報を得られるようになれば、ネット広告に意欲的に取り組む若い世代は成果を上げられるでしょう。40代より上の世代もネット広告に関する知識を深めることで、マス広告と合わせてネット広告に意欲を持って取り組める可能性があります。

課題3. 組織体制を構築するマンパワーが不足している

 ネット広告の運用業務は、広告素材の作成から入稿、運用、運用結果のレポート作成や分析、改善など多岐に渡ります。もし、これらの業務を営業担当者が独学で勉強して知識を身につけたとしても、顧客(広告主)への営業活動と並行して一人で兼任するにはマンパワーが足りません。  営業担当者だけで対応できないなら、社内で体制を構築しようと考えるかもしれません。しかし、例えば首都圏のネット専業広告代理店の体制や運用フローを真似ようにも、そもそもどのような体制なのかが分からず、効率的な運用体制を作れません。結果、組織体制を構築できず業務が属人化しやすくなっています。  このように、組織体制を構築できないといった課題も、背景には情報不足が起因します。  では、これらの課題を解消し、地方広告代理店がネット広告を前提とした新たな事業基盤を構築するにはどういった取り組みが必要でしょうか。後編では、ここで触れた「情報不足」を解消してDXを推進するための3つのポイントを紹介します。
筆者プロフィール
SO Technologies株式会社 執行役員
荒木 央
2006年、リスティング広告の草分けであるオーバーチュア株式会社へ入社。大手Web専業広告会社の営業に従事。2013年、株式会社オムニバスに入社。当時最先端の海外製のDSPや動画DSPの拡販を行う。2016年、サーチライフ(現SO Technologies)へ入社。ソーシャメディアの仕入~運用代行~レポーティングを一括支援するパッケージサービスの開発と営業責任者、運用代行本部の本部長を経て、2018年より取締役に着任。2019年7月の社名変更時より現職。

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