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連載

近年のマーケティングに抱く違和感、顧客視点ではなく企業視点に走りがち?【ファンをつくる「顧客ロイヤルティ」の極意 Vol.2】

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マーケティング分野のトレンドとして台頭する「デジタルマーケティング」。しかし、その施策1つひとつを読み解くと、腑に落ちない違和感があるのも事実です。ここでは最近のデジタルマーケティング施策の傾向を探るとともに、筆者が抱く違和感を取り上げます。なお、本連載はリックテレコム『ファンをつくる顧客体験の科学「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本』の内容をもとに編集しております。

「デジタルマーケティング」に抱く疑問

・ハワイ旅行に関するWebサイトを見ていたら、それ以降ハワイツアーの広告がどんどん表示されるようになった。
・EC サイトでアパレル商品を買った翌日、購入商品とコーディネートされたグッズをお薦めするメールが届き、期間限定の割引クーポンが付いていた。
・旅行で観光地に着いた直後、近所のレストランや土産店の案内がクーポン付きでLINE から届いた。
・Facebook で「ダイエットしたいが長続きしない」と投稿をしていると、スポーツジムの広告が増えた。

これらはデジタル技術を駆使した「デジタルマーケティング」による主な展開例です。近年のマーケティング分野はデジタルを積極的に活用し、新たな顧客接点創出を図ろうとする取り組みが盛んです。購入意欲の高そうなお客様を効率的に見つけ出し、購入意欲を喚起する情報を提供するといった取り組みが目立ちます。

しかし、こうしたデジタルマーケティング施策は、顧客に寄り添った取り組みと呼べるのでしょうか。「顧客体験」や「顧客起点」などの言葉が飛び交うマーケティング業界では、顧客の体験価値や満足度をいかに高めるのかに主眼を置くようになっています。にもかかわらず、上記の例からは、こんな疑問を抱かずにはいられません。

「マーケティングは、結局のところ「売らんかな」のための方法論では?」

「新しい分析手法とデジタル技術を使って『売らんかな』を推進する」、これが近年のマーケティングの潮流と解釈することもできるのではないでしょうか。

「購買」をゴールにしがちなカスタマージャーニー施策

近年のマーケティング分野では「カスタマージャーニー」や、その表現方法である「カスタマージャーニーマップ」というワードも盛んに使われるようになっています。しかし、カスタマージャーニー(マップ)からもこんな疑問を抱きます。

「カスタマージャーニー(マップ)とは、広告代理店が広告の次のネタを売るためのバズワードでは?」

そもそもカスタマージャーニー(マップ)の定義をネットで調べると、一般的には次のように定義されています。

カスタマージャーニーとは、一言でいうと「顧客が購入に至るプロセス」のことです。特に、顧客がどのように商品やブランドと接点を持って認知し、関心を持ち、購入意欲を喚起されて購買や登録などに至るのかという道筋を旅に例え、顧客の行動や心理を時系列的に可視化したものを「カスタマージャーニーマップ」と言います。
 
カスタマージャーニー(マップ)は、顧客の行動や感情をプロセスベースで把握し、施策に活かす手法として多く活用されています。

しかし、カスタマージャーニーに基づくマーケティング施策を見ると、ゴールを「購買」にしがちです。さらに、顧客の行動を見える化する対象は、販売する商品やブランドをどう認知し、どんな関心があり、何に購入意欲を喚起されたのかに集まりがちです。つまり施策を紐解くと、購入意欲の高い顧客とその接点を見つけ出し、湯水のように情報を発信する手法に集約していると感じられます。

もちろん、お客様に届ける情報はお客様のニーズにあったものです。さらにお客様への情報の届け方もお客様のニーズにあった方法で送られます。その上で「購買」に至るならお客様も納得済、というのが大前提であることは否めません。

とはいえ、近年のマーケティング施策は顧客視点が叫ばれてはいるものの、企業視点の“販売促進色”が強すぎます。筆者はこれまで、近年のマーケティング施策から企業側の思惑しか感じ取れずにいました。「何か違うのではないか?」と思わずにはいられませんでした。

コトラーの著書を使って違和感に切り込む

しかし、筆者のこうした疑問を払拭してくれた人物がいました。その名は、あのマーケティングの神様、フィリップ・コトラーです。コトラーはMBA のマーケティング講座で教科書として使われるバイブル的存在の書籍「Marketing Management」の著者であり、現代のマーケティングの基礎を築いた一人です。

コトラーの一連の書籍を読んでマーケティングの変遷をまとめると、筆者の疑問は見事に解消しました。企業とお客様の関係が変化していることを理解するのが、近年のマーケティングでは極めて重要な意味を成すのです。

ではコトラーの著書では、マーケティングの変化をどう整理しているのか。筆者の違和感はコトラーの著書によってどう解消されるのか。次回はコトラーの著書から、企業とお客様の新たな関係を考察します。

著者プロフィール

渡部 弘毅 (わたなべ ひろき)
ISラボ 代表 〈www.is-lab.org〉
一般社団法人 地域マーケティング経営推進協議会 理事

日本ユニシス(現 BIPROGY)、日本IBM、日本テレネットを経て、2012年にISラボ設立。一貫してCRM分野の営業、商品企画、事業企画、戦略・業務改革コンサルティングに携わる。現在は心理ロイヤルティマネジメントのコンサルティングを中心に活動。お客様の心理ロイヤルティアセスメントに関する独自の方法論を提唱し、ファンづくりの科学的かつ実践的なコンサルティング手法を展開する。業界団体や学術団体での研究活動、啓蒙活動にも積極的に取り組む。

〈著書〉
ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本/リックテレコム(2023/11)
お客様の心をつかむ 心理ロイヤルティマーケティング/翔泳社( 2019/12)
営業変革 しくみを変えるとこんなに売れる/メディアセレクト( 2005/1)

本連載は、リックテレコム刊行の『ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本』の内容を一部編集したものです。

ファンをつくる顧客体験の科学 「顧客ロイヤルティ」丸わかり読本

出版社:リックテレコム
発売:2023年11月27日

<内容紹介>
多くの企業は「ファンづくり」の重要性を認めているものの、日常は「購買者づくり」のマネジメントに終始しています。これはファンづくりの科学的なマネジメントができていないからです。本書では、顧客ロイヤルティの定義からはじまり、構造化、定量化、分析、考察するロイヤルティアセスメント手法を、事例を交えながら解説しています。ファンづくりを、「思いのマネジメント」から「科学的なマネジメント」に変革するための知見が凝縮しています。

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