人材の離職や採用難が企業活動に深刻な影響を及ぼしています。株式会社帝国データバンクは、2025年度の人手不足を要因とした倒産が441件に達し、前年度の350件から約1.3倍に増加したと公表しました。年度ベースで初めて400件を超え、3年連続で過去最多を更新しています。集計は2013年1月から2026年3月末までに発生した負債1000万円以上の法的整理を対象としています。背景には、採用難と人件費上昇、さらに離職の連鎖が重なり合う構図があります。労働集約型産業での増加が目立ち、現場の人員確保が経営の存続を左右する局面が広がりました。

業種別では建設業が112件で全体の25.4%を占め、最多となりました。施工に不可欠な資格やスキルを持つ現場作業員や営業担当の退職が相次ぎ、受注や工期の管理に支障が出た事例が見られます。足場工事の幸佳組は、職人不足を補うための人件費上昇も重なり赤字体質が続き、2026年2月に破産しました。道路貨物運送業は55件で、ドライバー不足や高齢化が深刻化しています。老人福祉事業は22件、飲食店は21件、労働者派遣業は12件と、それぞれ業種別で過去最多を更新しました。人手の確保が困難な状況で固定費負担が増し、資金繰りが悪化する傾向がうかがえます。
人手不足倒産のうち、従業員や経営幹部などの退職が直接の引き金となる「従業員退職型」は118件でした。年度として初の100件超で、4年連続の増加です。橋梁工事のライブディックは従業員の退職が相次ぎ、例年並みの工事受注ができず2025年9月に破産しました。日本公害管理センターは若手の退職が重なり、2025年10月に事業停止に至りました。企業からは、求めるスキルを持つ人材の応募が少なく、仮に応募があっても賃金水準の高い企業へ流出するという声が上がっています。特に中小や小規模事業者では十分な賃上げが難しく、賃金以外の魅力づくりが課題になっています。
採用難と離職増が重なる環境では、必要人員の前倒し確保や資格保有者の計画的な採用、技能承継の仕組み整備が欠かせません。離職が増えると受注やオペレーションの維持が困難になるため、業務量の平準化や教育投資の継続、処遇と働き方の見直しを同時に進めることが重要です。賃金での競争が難しい場合には、育成計画やキャリアパスの明確化、現場負荷を抑える配置の再設計など、非金銭的な魅力を整える取り組みが有効です。物価高で収益改善が進みにくい状況を踏まえ、収益性の低い案件の選別や価格転嫁の交渉準備、外注や業務提携の活用も検討の余地があります。特に労働集約型の業種では、退職シグナルの早期把握とバックアップ要員の確保により、連鎖的な人員流出を抑える体制づくりが求められます。
詳しくは「株式会社帝国データバンク」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部






















