DXマガジンは2025年4月2日、定例セミナー「AIアプリでECが10倍得する?!~AI買い物アシスタントの衝撃~」を開催しました。本記事では、このセミナーで語られた内容をもとに、AIとECが融合することで購買体験がどのように変化するのかを、現在の環境も踏まえながら振り返ります。
ECでの買い物が当たり前となる中、商品検索や比較、購入といった一連のプロセスにAIが入り込み始めています。その中で提示されたのが、「AIが買い物を支援する」というレベルを超えた、新しい購買のあり方です。
ECとAIが融合する世界のキーワードは「買い物エージェント」
セミナーでは、STRACT代表取締役社長の伊藤輝氏が登壇し、同社が提供するショッピングアシストアプリ「PLUG」について解説しました。伊藤氏は、PLUGを単なる価格比較ツールではなく、「ユーザーとECサイトの間に立つ“買い物エージェント”」と位置づけます。従来のECでは、ユーザーが複数のサイトを行き来しながら価格や在庫、配送条件などを比較する必要がありましたが、PLUGはそのプロセスをAIが代替します。
例えば、Amazonで商品を閲覧しているだけで、他のECサイトも横断的に検索され、より条件の良い選択肢が自動で提示されます。伊藤氏は、この仕組みによって「ユーザーが自分で比較する必要がなくなる」と説明しました。
AIが変える「比較」と「意思決定」のプロセス
PLUGの特徴は、単に価格を比較するだけではなく、ユーザーごとに最適な選択を提示する点にあります。
購買履歴や閲覧履歴をもとに、パーソナライズされたクーポンやキャッシュバックが提示されるほか、レビュー情報も整理され、判断に必要な情報が自動的に提供されます。その結果、ECサイトのコンバージョン率が1.5倍に向上したといいます。
さらに、ブラウザ上で動作する仕組みによって、ユーザーが一度サイトを離脱した後でも最適なオファーを提示することが可能となり、従来のリターゲティング広告とは異なるアプローチも実現しています。
今の時代における意味
伊藤氏が提示した「買い物エージェント」は、単なる一つのアプリの話にとどまりません。むしろ、AIとECが融合したときに起きる購買体験の変化を象徴する概念だといえます。伊藤氏が提示した「買い物エージェント」という考え方を踏まえると、AIによってECの購買体験は大きく変わりつつあるといえます。
これまでの買い物は、「探す → 比べる → 決める」というプロセスをユーザー自身が担っていました。しかし現在は、その一連の流れをAIが引き受け、「任せる」という形に変わり始めています。この変化は単なる利便性の向上ではなく、購買行動そのものの構造が変わっていることを意味します。
まず、これまでのようにキーワードで検索するのではなく、AIが文脈を理解して商品を提案するようになっています。例えば、旅行の予定や肌質といった条件をもとに、最適な商品を提示するような形です。検索という行為は、より自然な“会話”へと変わりつつあります。
次に、比較のあり方も変わっています。価格やレビューを自分で見比べるのではなく、AIが「自分にとって最適な選択肢」を提示するようになります。ここでは、単に評価が高い商品ではなく、ユーザーに合わない選択肢が排除されることが重要になります。
さらに大きな変化は、購買が「買う瞬間」で終わらなくなる点です。AIは購入後も関与し、使い方の提案やリピートのタイミング、関連商品の提示などを行います。買い物は単発の行為ではなく、継続的な体験へと変わっていきます。
加えて、ECの場所そのものも変化しています。これまでのようにECサイトにアクセスするのではなく、SNSやチャット、音声など、あらゆる接点が購買の入り口になります。買い物の場は、特定のサイトから日常のあらゆる接点へと広がっています。
そして最終的には、AIがユーザーの代わりに商品を購入するフェーズに入っていきます。生活データをもとに日用品や消耗品が自動で発注されるなど、「買う」という行為そのものが減少していく可能性もあります。こうした変化を踏まえると、本質的に起きているのは、技術の進化ではなく意思決定の変化です。買い物は「自分で選ぶ行為」から「AIに任せる行為」へと変わりつつあるのではないでしょうか。























