1986年、長崎の一軒のカメラ店からスタートしたジャパネットたかた。ラジオ、テレビ、チラシ、カタログ、インターネットへと伝える場を広げながら、時代の変化に挑み続け、成長を遂げてきました。その歩みを支えてきたのは、「今を生きる」姿勢でした。変化の激しい時代に、企業はいかに挑戦を続け、人の可能性を引き出していくのか。そして、AIが進化する今だからこそ、人間にしかできない「伝える力」とは何か。ジャパネットたかた創業者・髙田明氏と、長年MCとしてお茶の間へ商品や想いを届け続けてきた中島一成氏に、その本質を伺いました。
挑戦とは、「今」を積み重ねること
鈴木:ジャパネットたかたは1986年にお父様が経営されていたカメラ店から独立し創業されて、今年でちょうど40周年を迎えられます。この40年間、ラジオ、テレビ、チラシ、カタログ、インターネットと、時代の変化を捉えながら挑戦を重ね、進化を遂げてこられました。髙田さんにとって、挑戦とはどのような意味を持つのでしょうか。
髙田:実は、私は何か遠くに大きな目標を掲げ、そこを目指して走ってきた人間ではありません。あえて言うならば、「今を生きる」ということの積み重ねです。目の前の山を一つひとつ懸命に登っていると、その先にまた次の山が見えてくる。そして、またその山に向き合って登っていく。そうして一歩一歩進んでいくうちに、ふと遠くにさらに高い山が見えてきて、「あそこまで近づけたらいいな」と思えるようになるのです。
その山に近づくためにも、やはり「今」という瞬間に徹底的に向き合うしかありません。特別なことをやってきたわけではないのです。
鈴木:なるほど。「今を生きる」という積み重ねが、結果として40年にわたる挑戦を支えてこられたのですね。
一方で、現在は多くの企業が変化の激しい時代に直面し、変わらなければならないという焦りを抱えています。そうした中で、挑戦を続けられる企業と、そうでない企業の違いは何だとお考えでしょうか。
髙田:セブン-イレブンを創業された鈴木敏文さんのお言葉に、「企業は世の中の変化に対応していかなければならない」という教えがあります。私は現役時代からこの言葉に深く共感し、実践してきました。
そしてさらに、その先の進化を実現するためには、単に変化へ対応するだけではなく、変化を自ら生み出す企業になることが極めて重要だと考えています。 もちろん、新たな変化を起こそうとすれば、周囲がついてこられないのではないかという不安もあります。それでも諦めることなく、信じてついてきてくれた仲間がいたからこそ、今のジャパネットがあります。ここにいる中島も、その大切な一人です。

中島:髙田から「こういう変化を起こす」という強い意志や方向性が示されると、私たちはそれを信じ、「今日よりも明日、明日よりも明後日へ、少しでも成長しよう」と必死に走り続けてきました。たとえ1メートルずつでも成長を積み重ねてきたことが、今の私たちにつながっているのだと思います。
鈴木:変化を生み出す企業には、その挑戦を信じ、ともに歩む人たちがいるのですね。中島さんご自身は、そのようなジャパネットにどのような魅力を感じて入社されたのでしょうか。最初からテレビMCを目指されていたのですか。
中島:実は、まったく違います。私は長崎県出身なのですが、大学時代、深夜にたまたまテレビショッピングを見ていた際、画面でプレゼンテーションする髙田の姿に衝撃を受けました。「日本発でこんなことをやっている会社があるんだ。地元にこんなに面白い会社があるなら、ぜひ働いてみたい」と思ったのがきっかけでした。入社当時は、自分がMCとしてカメラの前に立つなど、夢にも思っていませんでした。
髙田:当時、生放送でディレクターとして「5、4、3……」とキューを出していた中島の姿を見て、「この子は人柄も良く、柔軟に対応できる。喋らせてみたらどうだろう」と思ったのです。中島には、何事も素直に受け止め、挑戦してみようという姿勢がありました。
鈴木:人を肩書きや経験だけで判断するのではなく、その人の可能性を見極めて役割を任せる文化があるのですね。その背景には、制作や技術まで自社で育てる自前主義という考え方があるようにも感じました。実は、セブン-イレブン創業時のメンバーも、小売業界ではまったくの素人集団でした。だからこそ業界の常識にとらわれることなく、お客様の視点を徹底的に追求することができたのです。
本日、ジャパネットの最先端のスタジオや、多様な社員の皆様がローテーションしながら自社で番組をつくり上げている姿を拝見し、その精神と非常に通じるものを感じました。
髙田:自前のスタジオを立ち上げた当時は、人もノウハウもありませんでした。周囲からも『自社でスタジオを運営するなんて無謀だ』と、言われることもあり、悔しい思いをした時期もあります。
それでも諦めることなく、社外の方々の力もお借りしながら、とにかく今できることを一つひとつ積み重ね、生放送をスタートさせました。あの時の挑戦がなければ、今のジャパネットはなかったと思います。
伝えるとは、相手を想い続けること
鈴木:ジャパネットたかたは、ラジオ、テレビ、チラシ、カタログ、インターネットと、その時代に合わせて伝え方を進化させながら、お客様との信頼関係を築いてこられました。そして今、AIの進化によって、多くの仕事や働き方が大きく変わろうとしています。だからこそ、人間にしかできない伝える力の価値は、これまで以上に高まっていくのではないかと感じています。長年にわたり、お茶の間へメッセージを届け続けてこられたお二人は、「伝える」ということにおいて、何を最も大切にされているのでしょうか。
髙田:「相手の心にどれだけ配慮し、寄り添えるか」結局のところ、すべては相手を思う気持ちに尽きるのだと思います。それは、ビジネスの場面だけに限ったことではありません。今、地球環境問題や紛争など、世界中でさまざまな課題が起きていますが、その根本には、人と人との伝える力や伝え合おうとする努力が足りていないこともあるのではないかと感じています。
本気で伝え合えば、お互いに理解し合えないことはないと思いませんか。「一つでもいいから、人のために、人類のために、地球のために」そうした広い視野を持ち、お互いの思いを重ね合わせていくことこそが、本当に価値のあるコミュニケーションなのだと思います。
中島:私が髙田から徹底的に教わったのは、まず謙虚であることです。そして、もう一つが人感力(お客様を感じ取る力)です。私たちはスタジオでカメラに向かって話しているため、お客様の表情を見ながら話すことはできません。だからこそ、カメラの向こう側にいる、姿の見えないお客様を感じ取る力が何よりも重要なのです。
髙田:ただ、「自分は伝わる話し方ができている」と慢心してはいけません。ラジオやテレビをご覧になっているお客様は、私たちが思っている以上に、話し手の心を敏感に感じ取られています。
「この人は本当に心からこの商品を薦めているのか」「本気で語っているのか」そうしたことは、すべて伝わるものです。だからこそ、どこまでも謙虚に、そして本気で相手と向き合い続けることが、お客様との信頼につながるのだと思います。

人を育てるのは、「愛」と「関心」
鈴木:お二人のお話を伺い、相手に思いを伝えるためには、まず相手に関心を持ち、その心に寄り添うことが大切なのだと感じました。一方で、企業ではハラスメントへの懸念から、上司と部下が本音で向き合うことを避けるケースも増えています。人と人との対話がこれまで以上に重要になる中で、組織におけるコミュニケーションについて、どのようにお考えでしょうか。
髙田:最近は、叱ることを極端に避ける傾向があります。しかし、本当に大切なのは、その根底にある愛です。
ジャパネットの社員からは、「社長は100回叱って1回しか褒めない(笑)」と言われていましたが、私はそこに深い愛があると自負しています。最も避けるべきなのは、愛の反対である無関心です。相手に関心を持ち、その小さな変化に気づく。
そうした温かさがあるからこそ、注意も相手の心に届きますし、励ましの言葉も生まれます。関心を持つことは、ビジネスにおけるアイデアの源泉でもあるのです。
中島:私も50代になって、ようやく本当の意味で愛の大切さを語れるようになってきました(笑)。誰かを愛し、あらゆることに関心を持つことこそが、人間のエネルギーの源なのだと思います。AIがどれだけ進化しても、人間が最後に立ち戻るべきものは、この愛ではないでしょうか。

鈴木:まさに、愛や関心は人間ならではの価値ですね。そうした人間力を育みながら、目の前の仕事に向き合う若い世代へ、ぜひメッセージをいただけますでしょうか。
髙田:若い皆さんには、今という瞬間に全力で向き合ってほしいと思います。遠くの夢ばかりを見つめ、現実とのギャップに苦しむ必要はありません。私は「夢持ち続け、日々精進」という言葉を大切にしています。ここでいう夢とは、「今、自分がやりたいこと」「今、自分がやるべきこと」です。そこに8割、9割の力を注ぎ込んでください。
それを愚直に積み重ねていくと、ある瞬間、階段を一段ずつ上るのではなく、一気に何段も飛び越えるような成長が必ず訪れます。一生懸命取り組んだ結果、うまくいかなかったことは、決して失敗ではありません。それは次の成長へとつながる自分への試練なのです。恐れずに、今を生き抜いてほしいですね。
鈴木:今に全力で向き合うこと、相手を想い、伝え続けること。そして、その力を社会のために生かしていくこと。今日のお話を通じて、挑戦を続ける上で大切なことを改めて学ばせていただきました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。
髙田・中島:ありがとうございました。
関連リンク
ジャパネットたかた
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