2026年上半期に発生した医療機関の倒産は39件となり、過去最多だった2025年上半期の35件を上回りました。対象は法的整理で負債1000万円以上の病院、診療所、歯科医院の経営を主業とする事業者です。負債総額は123億8000万円で前年同期比32.6%減と、小規模倒産が多い構図が示されています。背景には物価高や人件費の高騰に伴う収益力の低下、経営者の高齢化と後継者難が挙げられています。地理的には東京が9件で最多となり、大阪4件、北海道、兵庫、福岡が各3件など18都道府県に広がりました。このペースが続けば、年間では過去最多の更新が見込まれ、80件到達の可能性があります。
上半期39件の内訳と特徴 小規模倒産が中心、破産が多数を占める
内訳は病院4件、診療所19件、歯科医院16件でした。負債総額は病院が35億5500万円、診療所が79億800万円、歯科医院が9億1700万円です。態様では39件中37件が破産で構成比は94.9%となっています。負債10億円以上の大型倒産は4件で、病院2件と診療所2件が該当しました。前年同期比では病院の倒産は5件少なく、上半期として3年ぶりに減少しましたが、依然として一部で大口案件が発生しています。負債規模の分布からは、全体として小規模事業者の資金繰り悪化がより深刻であることがうかがえます。地域分布の広がりは、個別要因だけでなくコスト上昇や人員確保難といった共通課題が全国的に作用している実態を示しています。
診療所が過去最多 内科中心に影響が拡大し事業継続を断念
診療所は19件で過去最多となり、2009年上半期の16件を上回りました。診療科別では内科が9件で最も多く、外科4件、眼科3件、婦人科2件が続きました。内科の一部では、並行運営していた老人福祉施設やデイサービス事業の悪化が倒産の引き金となった事例もみられました。負債規模では3億円未満の小規模倒産が6割強を占め、中規模も発生しています。コロナ禍を通じた業績の落ち込みに、物価高、人手不足、賃金上昇が重なったことが収益圧迫につながりました。さらに、経営者の病気や死亡が要因となったケースが4割に達し、全業種平均の3.8%に比べて突出して高い比率となっています。
歯科医院は2億円以下に集中 競争と人材不足が継続的な重荷
歯科医院は16件で、すべてが負債2億円以下でした。競争の激化による患者獲得難や単価競争に加え、歯科衛生士や歯科医師の人手不足が採用コストを押し上げ、経営を圧迫しました。経営者の死去や体調不良を契機に、事業継続を断念する事例も確認されています。負債水準が比較的低い一方で件数が多いことは、小規模経営体の脆弱性が表面化していることを示しています。コスト構造の硬直性が高く、短期的な需要変動や材料費の上昇を価格転嫁しにくい点も課題です。地域密着型で固定費がかさみやすい事業特性が、外部環境の変動に対する耐性を弱めています。
業界環境の変化と今後の焦点 診療報酬改定と経営課題、M&Aの進展
医療機関は人口減少の進行下で、医療機器や消耗品の価格、光熱費、人件費の上昇に直面し、診療報酬改定のペースが追い付かず収支が悪化してきました。診療所では2024年度に赤字経営の事業者が前年度比で3割増加したとの日本医師会の動きがあり、業績悪化が顕在化しています。今年6月から令和8年度の診療報酬が適用され、収益環境の改善材料となる一方、働き方改革や賃上げ、医療DXへの対応など課題は多岐にわたります。医師である経営者の高齢化と事業承継問題を背景としたM&A需要は高まり、医療分野を専門とした再生のプロによる買収の動きもみられます。中には医療機関を狙った詐欺や悪質なM&Aも確認され、注意喚起が必要です。金融機関担当者からは診療報酬の上り幅では収益性の本格改善につながらないとの厳しい見方が示されています。
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