変革のIT化 第1フェーズ、デジタイゼーションの本質は「情報を整えること」です。システムを導入し、紙をデータに変え、アナログをデジタルに置き換える。このフェーズを「単なる電子化」と軽く見る経営者がいますが、私はそう思いません。デジタイゼーションこそが、その後のすべての変革を支える土台になるからです。
世界平均取組率が80〜90%に達しているとはいえ、取り組んでいることと、きちんと整備されていることは別の話です。データはあるが活用できない状態、システムはあるが部門間で連携していない状態、デジタル化はしたが品質が低い状態。こうした「形だけのデジタイゼーション」が多くの企業に見受けられます。このフェーズの成果は「”使える状態にする”だけ」と定義されていますが、その「使える」の水準をどこに置くかで、後のフェーズの成否が大きく変わります。
デジタイゼーションで最も重要なのは「データの質」です。DX 第2フェーズのAIトランスフォーメーションでは、データの質がそのままAIの判断の質に直結します。今の段階でデータをきちんと整備することは、将来の変革への最大の先行投資です。顧客データ、購買データ、業務ログ。これらが一貫したルールで整備されている企業は、AIを導入したときに驚くほど早く成果を出します。
実践として「データの定義と管理ルールを全社で統一すること」から始めることをお勧めします。顧客IDの付け方、商品コードの体系、日付フォーマットの統一。こうした地味に見える取り決めが、後のフェーズでデータを活用できるかどうかを左右します。部門ごとにバラバラのルールでデータを管理していると、後で統合しようとしたときに莫大なコストがかかります。
また、IT化 第1フェーズを経営資産の観点から捉え直すことをお勧めします。DX 第2フェーズのAIトランスフォーメーション時代においては、データ資産の質と量が企業価値を決める重要な要素になります。今日整備したデータが3年後・5年後の競争力を作ります。デジタイゼーションを「コストセンター」ではなく「戦略資産の構築」と捉えることが、このフェーズへの正しい向き合い方です。
「量が質をつくる」という私の信念は、データ整備にも当てはまります。「石の上にも3年」の精神でデータの品質を継続的に維持・向上させ続けることが、IT化 第1フェーズの本当の価値を生み出し、その後の変革のすべてを支えます。自社のデータは、次のフェーズで活用できる水準にあるか。今日から問い直してください。 デジタイゼーションを推進するうえで「全社横断のデータガバナンス体制」の整備も重要です。データを誰が管理し、品質をどう担保し、活用のルールをどう定めるか。この体制なしには、組織全体でデータを資産として活用することができません。小さな会社でも、データオーナーを明確にし、品質管理のルールを作ることから始めてください。
IT化 第1フェーズの整備は、一見地味に見えますが、その先の変革のすべてを支える基盤です。「退路を断つ」覚悟でデータ整備に向き合い、次のフェーズへの土台を確かなものにしてください。 デジタイゼーションを丁寧に積み上げることが、DXフェーズの変革速度を決めます。「量が質をつくる」精神でデータ整備に向き合い続けることが、AI時代の競争力の源泉になります。
【DXでビジネスを変え、AXで会社を作り直せ 第2回】

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
富士通、ソフトバンクを経て99年に現セブンネットショッピングを設立。セブン&アイHLDGS.取締役執行役員CIOとしてグループのデジタルトランスフォーメーションを推進。17年にデジタルシフトウェーブを設立し現職。日本オムニチャネル協会会長等も務める。






















