DXという言葉が広がってから、多くの企業がさまざまな取り組みを進めてきました。
システムを刷新する。紙をなくす。データを活用する。AIを導入する。
こうした取り組み自体は、決して間違っていません。でも私は、もう一度問い直したいと思います。それによって、会社そのものは変わったでしょうか。
「デジタル化」と「変革」は違う
DXは、Digital Transformationの略です。ところが実際には、「D」、つまりデジタル化に取り組んだところで止まっている企業が少なくありません。業務をデジタルに置き換える。新しいツールを導入する。システムを新しくする。
これらは効率化にはつながります。
しかし、本来のDXで重要なのは、その先にある「X」、Transformationです。仕事のやり方を変える。組織を変える。事業を変える。そこまで踏み込んで初めて、変革になるのだと思います。
なぜ「X」まで進めないのか
では、なぜ多くの企業は「X」まで進めないのでしょうか。私は、一つには、今までの仕事や組織を残したままデジタル化しようとするからだと思っています。昔から続いている承認プロセス。部門ごとに分かれた組織。
誰のためにあるのか分からなくなった会議や資料。こうしたものをそのまま残して、そこにデジタルを乗せても、会社は大きくは変わりません。場合によっては、古い仕事をデジタルで高速化しているだけ、ということさえあります。
本当のDXでは、
「この仕事はそもそも必要なのか」
「この組織の分け方は今も正しいのか」
「この事業はこれからも続けるべきなのか」
というところまで問い直す必要があります。
「変えない理由」はいくらでもつくれる
ただ、それは簡単ではありません。今までのやり方には、それなりの理由があります。関係者もいます。責任者もいます。
過去に成功した経験もあります。
だから、
「現場が混乱する」
「今の仕組みでも問題はない」
「失敗したらどうするのか」
といった、変えない理由はいくらでも出てきます。しかし、変革とは、今あるものを守りながら新しいものを足すことではありません。
時には、今まで正しいと思っていたものをやめることでもあります。ここに、「X」の難しさがあります。
DXは、経営そのもの
私は、DXをIT部門だけの仕事にしてはいけないと思っています。何をデジタル化するかよりも、会社をどんな姿に変えたいのか。顧客にどんな価値を提供したいのか。そのために、何をやめ、何を始めるのか。これは経営そのものです。テクノロジーは、その変革を実現するための手段です。目的ではありません。
だからこそ、DXを成功させるために最も必要なのは、新しいシステムでも最新のAIでもない。
「会社を変える」と決めることです。そして、その決断を実行する人がいることです。第1回で、DXの主役は「変革する人」だと書きました。今回あらためて思うのは、その人が本気で「X」に向き合わない限り、DXはいつまでも「D」で止まってしまうということです。
最後に、皆さんに一つ問いかけます。
あなたの会社が進めているDXは、仕事をデジタルにしていますか。それとも、本当に会社を変えていますか。

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
富士通、ソフトバンクを経て99年に現セブンネットショッピングを設立。セブン&アイHLDGS.取締役執行役員CIOとしてグループのデジタルトランスフォーメーションを推進。17年にデジタルシフトウェーブを設立し現職。日本オムニチャネル協会会長等も務める。





















