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コラム

給料は増えた。でも買い物は減った。平均消費が7.2ポイント急落、家計が選ぶ“攻めのレジャー”と“守りの貯蓄”

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総務省が2026年5月12日に公表した家計調査(2026年3月分)によると、二人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり334,701円となりました。前年同月比で実質2.9%の減少、4か月連続の実質減少です。一方、同じ調査で勤労者世帯の実収入は1世帯当たり557,663円と、前年同月比で実質4.7%増加し、3か月連続の実質増加となっています。

「収入は増えているのに、消費が減っている」。この一見矛盾した構図が、いま日本の家計で起きていることです。

数字が示す「費目ごとの明暗」

内訳を見ると、費目によってはっきりとした明暗が分かれています。増加が続いているのは「保健医療」(前年同月比実質20.1%増、10か月連続の実質増加)と「教養娯楽」(同4.6%増、5か月連続の実質増加)、そして「住居」(2か月連続の実質増加)です。なかでも保健医療サービスは前年同月比で38.3%増と大きく伸び、歯科診療代が実質寄与度0.43ポイントと増加を牽引しました。一方、消費支出全体を最も大きく押し下げたのは「交通・通信」です。前年同月比で実質16.8%の減少、4か月連続の実質減少となっており、消費支出全体への寄与度は▲2.67ポイントと、全費目のなかで最大の下押し要因となりました。内訳では自動車購入が▲2.15ポイントの寄与度を占めています。「その他の消費支出」も6か月連続の実質減少で、交際費が寄与度▲0.72ポイントと続きます。

平均消費性向の急落が示すもの

最も注目すべき数字の一つが、平均消費性向です。可処分所得に対する消費支出の割合を示すこの指標は、今回82.7%と前年同月(89.9%)から7.2ポイントも低下しました。勤労者世帯の可処分所得は前年同月比で実質4.7%増の453,448円に達しているにもかかわらず、消費に回す割合は下がっています。手取りが増えても財布のひもを緩めない──この「貯蓄・温存」姿勢こそが、家計調査が示す現在の家計行動の核心です。

なぜ「稼いでも使わない」のか

ここからは、調査データに基づいた考察です。食料費は1世帯当たり97,100円と、名目では0.6%増にとどまるものの実質では2.9%の減少です。物価上昇によって名目支出は維持されているにもかかわらず、実質的に購入量や質が落ちているという状況を示しています。食費を抑えながらも医療や娯楽・レジャーには支出するという、優先順位の「選別」が起きていると見ることができます。光熱・水道費は前年同月比で実質3.2%減少しました。電気代の押し下げが主因ですが、名目では依然として家計の重荷であり続けています。消費支出の「除く住居等」ベースでも4か月連続の実質減少となっており、特定費目の変動を除いてもトレンドとして消費抑制が続いていることが確認できます。

「収入増・消費減」という構造的課題

今回の家計調査が示す「収入増・消費減」の構図は、単月の揺れではなく、複数月にわたって継続しているパターンです。実収入の実質増加が続く一方で消費支出の実質減少も続いているという事実は、物価上昇への根強い警戒感と将来不安が、家計行動を保守的にし続けていることを示唆しています。

消費が動くとき、それは家計が「使っても大丈夫」と確信したときです。データはその確信がまだ戻っていないことを静かに伝えています。

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