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コラム

父の遺志を継ぐということ—次の時代の変革者へ【父・鈴木敏文が遺したもの—次の時代の変革者へ贈る経営者の背中】

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第5回|父の遺志を継ぐということ—次の時代の変革者へ

父が逝った後、私はしばらく、父からもらった言葉を繰り返し思い返していた。

「知らないことを話すから緊張するんだ」「率先垂範」「目の前のことを一所懸命やることだ。後は運と縁が決める」「お客様もマーケットも、常に変化しているのだから」。

どれも短い。どれも飾りがない。しかしどれも、父が実際に生きた言葉だ。理論として語ったのではなく、自分がそうやって生きてきたから、そう言えた言葉だ。そしてその言葉はいずれも、息子である私が人生の節目に「聞きに行った」ときに返ってきたものだ。父から進んで説教されたことは、ほとんどなかった。聞けば答える。ただし、一言で。それが父のスタイルだった。

この連載で私が一番伝えたかったのは、この「生きた言葉」の重さだ。

鈴木敏文という経営者の偉大さは、セブン-イレブンを世界的なチェーンにしたことでも、流通業の革命を起こしたことでもない。自分が信じることを、自分の行動で証明し続けたことだ。言葉と行動の間に、一切の隙間がなかった。だから言葉に力があった。だから組織が動いた。だから時代が変わった。

遺志を継ぐとはどういうことか、と問われれば、私はこう答える。

父の言葉を「名言」として額に飾ることではない。父がそうだったように、自分が信じることを自分の行動で証明し続けることだ。

私は今、デジタルシフトウェーブ(DSW)の社長として、日本の企業のDX推進に微力ながら尽力している。当社のミッションは「人を育て、企業を変え、未来をつくる」だ。言葉として掲げるのは易しい。しかし私が率先垂範でそれを体現していなければ、ただのスローガンだ。社員に「変革せよ」と言う前に、私自身が変わり続けているか。顧客に「DXで未来をつくれる」と言う前に、私自身がその現場に立ち続けているか。毎日、自分に問い続けている。

DX時代の変革者に、最後に伝えたいことがある。

技術は道具だ。AIも、データも、クラウドも、すべて道具だ。道具を使いこなす人間の質が、変革の深さを決める。そして人間の質とは、知識でも経験でもなく、「自分が信じることに、どれだけ正直に生きられるか」だと私は思っている。

父は最後まで、自分が信じることに正直だった。顧客のために変わり続けることを、誰よりも信じていた。その姿が、私の原点だ。

次の時代の変革者は、AIに仕事を奪われることを恐れる人間ではなく、AIを道具として使いながら、自分の頭で仮説を立て、自分の足で現場を歩き、自分の言葉で人を動かせる人間だ。

父が問い続けたことを、私たちも問い続けよう。

顧客のことを、本当に知っているか。自分が先に動いているか。目の前のことに、全力を尽くしているか。変化から逃げず、顧客とともに前へ進んでいるか。

父へ。

あなたが見ていた未来に、少しでも近づけるように、私はこれからも挑戦を続けます。
そしていつか、「お前なかなかやったな」と、少しだけでも認めてもらえるように。
まだまだ、挑戦の途中です。

【週刊SUZUKI 特別連載「父・鈴木敏文が遺したもの——次の時代の変革者へ贈る経営者の背中」その5】

筆者プロフィール

鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
富士通、ソフトバンクを経て99年に現セブンネットショッピングを設立。セブン&アイHLDGS.取締役執行役員CIOとしてグループのデジタルトランスフォーメーションを推進。17年にデジタルシフトウェーブを設立し現職。日本オムニチャネル協会会長等も務める。

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