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インタビュー

学生の不満を自分たちの手で変える――追手門学院大学がOIDAIアプリで証明した、愛される大学DXのリアル

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追手門学院大学では、学生生活に必要な情報や手続きをスマートフォン上に集約した「OIDAIアプリ」を中心に、学生体験をより良くするためのDXを進めています。業務を効率化するだけではなく、「学生の体験にとってどうなのか」を考えながら、学生の生の声を聞いて改善を続けているのが特徴です。今回は、取り組みを進める岡野氏と河村氏に、DXマガジン総編集長の鈴木康弘氏が話を聞きました。

大学で感じていた不便を、自分たちで変えていく

鈴木氏:まず、お二人が現在のDXの取り組みに関わるようになった経緯を教えてください。

岡野氏:私は新卒でSIerに入社し、SEやセールスエンジニアとして2年ほど働いていました。その後、2021年に追手門学院大学に入職しました。最初は情報メディア課で、ネットワークやLMSの管理などを担当していました。2023年度に「2025学院DXプロジェクト」が始まり、CXを重視したDXに取り組むことになりました。

河村氏:私は以前、別の大学で学部の改組や学生募集、全学的な教学改革などに関わっていました。追手門学院大学に来たとき、フリーアドレスの導入等働き方改革の推進や、さまざまなデジタルツールの導入など業務改革や教育DXを戦略的に推進する構想が策定されつつある時期でした。部署横断で様々なDX推進に着手するフェーズにおいて、システム部門には統括的役割が重要になり、これまで大学業界で感じていたアナログさを、学生体験という軸で自分たちの手で変えていけるのではないかと思ったのがきっかけです。

鈴木氏:大学のDXというと、まずは事務局の業務効率化から始めるイメージがあります。

岡野氏:追手門学院大学でも、それ以前からデジタル化自体は進んでいました。ただ、各部署がそれぞれでシステムを導入していたため、学生からすると「お知らせはこちら」「アンケートはこちら」というように、利用するサービスがバラバラになっていました。職員側では便利になっていても、学生にとっては「どこを見ればいいのか分からない」という状態だったんです。そこで改めて学生を中心に考え、CXを軸にDXを進めていこうというところから始まりました。

写真:学校法人追手門学院 CXデザイン部 システム企画推進課 主任 岡野 圭一郎氏

なぜポータルサイトではなく「スマホアプリ」だったのか

鈴木氏:学生向けの窓口として、ポータルサイトではなくアプリを選んだのはなぜですか。

岡野氏:当初は「ポータルサイトでもいいのではないか」という意見もありました。アプリを作っても、そもそも学生がインストールしてくれないのではないか、という懸念もありました。ただ、学生の日常を考えると、基本的にはスマートフォンを使っています。それならば、スマホアプリの方が気軽に利用でき、学生生活にもなじみやすいだろうと考え、アプリを選びました。結果的には、アプリにしてよかったと感じています。

鈴木氏:開発する中でも、学生から何度も意見を聞いていたそうですね。

岡野氏:はい。最初に一度意見を聞いて終わりではなく、アルファ版、ベータ版、リリース前と、段階ごとに学生に実際に触ってもらいました。「ここが使いにくい」という声があれば改善し、もう一度使ってもらう。それを繰り返しながら開発を進めました。リリース後もアンケートを実施したり、学生団体と意見交換をしたりしながら、継続的に改善しています。最近では、プログラミングを扱う学内の学修機会のテーマとして、「「OIDAIアプリに搭載するならどのような機能を提案・実装するか」というテーマを設定するというような話も出ています。今後は、学生が作ったサービスとOIDAIアプリがつながるような展開もできるのではないかと考えています。

反対の声もあった。それでも入学式で見えた手応え

鈴木氏:新しいことを始める中で、学内から反対の声もありましたか。

岡野氏:かなりありましたね。ちょっと冷ややかに見られていた部分もあったと思います。

河村氏:特に印象に残っているのが入学式です。「高校を卒業したばかりの学生が、本当にアプリをインストールできるのか」「そこでつまずいたらどうするんだ」といった声もありました。ただ、実際に入学式で新入生がアプリを使ってチェックインし、楽しそうに利用している姿を見たときに、「この方向性は間違っていない」と感じました。

岡野氏:その後も、さまざまな行事で実際にアプリを活用し、大きな問題なく運用することができました。大学には1年間を通してさまざまな行事があります。一通りの行事で使ってみて、「これなら大丈夫だね」という認識が学内に広がるにつれて、徐々に反対の声も少なくなっていきました。

写真:学校法人 追手門学院 CXデザイン局 システム企画推進課 課長 河村 泰文氏

DXプロジェクトが、若手職員を育てる場になった

OIDAIアプリのプロジェクトには、システム部門だけでなく、いくつもの部署から職員が参加しています。

鈴木氏:なぜ、さまざまな部署の方に参加してもらったのでしょうか。

岡野氏:学生の体験は、システム部門だけではすべてを把握できないからです。実際に学生と接している部署の職員の方が、「この場面で学生が困っている」といった具体的な課題をよく知っています。もちろん、ヒアリングによって他部署の意見を聞くということはできますが、同じチームに入ってもらい、一緒に考えて動いていく進め方の方がいいと思いました。「こうしたいと思っているけれど、部署の課題感としてはどうですか」と、その場で意見を交わしながら進められることは大きいですね。

鈴木氏:若手職員の育成にもつながっているそうですね。

岡野氏:そうですね。毎年、年度末頃に管理職へプロジェクトの成果を説明し、「来年度もこの職員に続けてもらうのか」「新たに別の職員に参加してもらうのか」といった話をしています。その中で、「このプロジェクトに参加して、この人がとても成長したので、次はこの人も参加させたい」と言ってもらえるようになりました。要件を考えたり、ベンダーや他部署と調整したりと、通常の業務だけではなかなか経験できないことに取り組めます。結果として、DXプロジェクトそのものが若手職員の育成の場にもなっていると感じています。

窓口に並ぶ大学から、スマホでつながる大学へ

鈴木氏:OIDAIアプリによって、学生の大学生活はどう変わりましたか。

河村氏:大きな変化の一つが、「デジタルフロント」という考え方です。以前であれば、何か聞きたいことがあると大学の窓口へ行き、列に並ぶ必要がありました。しかし今では、デジタル上でいつでも問い合わせができます。大学からのお知らせも集約されていますし、分からないことがあればスマートフォンから確認・相談ができます。一方で、本当に対面でサポートを必要とする学生には、職員が丁寧に時間をかけて対応する。すべてをデジタルにするのではなく、デジタルでできることはデジタルで行い、人による対応が必要なところにはきちんと人が向き合う。そのような形を目指しています。

鈴木氏:卒業した後も使える仕組みがあるのですか。

岡野氏:はい。「卒業生モード」を用意しています。卒業後も大学からのお知らせを受け取ったり、自分の職歴や資格を記録したりすることができます。ただ、すでに卒業した方に新たにアプリをインストールしてもらうのは、なかなか難しい部分があります。だからこそ、今OIDAIアプリを使っている学生が、卒業後もそのまま使い続けてくれるような仕組みにしていきたいと考えています。

写真:株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木 康弘氏

DXの次はAIへ。「一発屋のDX」で終わらせない

鈴木氏:これからのDXを、どのように進めていきたいと考えていますか。

岡野氏:学生の声を聞きながらアプリを改善していくことは、これからも続けていきたいです。ただ、すべての機能をOIDAIアプリの中に作る必要はないとも考えています。学生が作ったサービスや、学内にあるさまざまなサービスがつながり、OIDAIアプリがそれらを結ぶハブのような存在になっていけばいいと思っています。

河村氏:これまでの大学は、何か課題があれば要件を整理し、ベンダーと相談してシステムを開発・改修してもらう、という課題解決の形が多くありました。ただ、そういった外注による開発を続けていくと、どうしてもその都度コストが積み上がります。これからは、各部署の職員が「ここを変えたい」「もっとこうしたい」と思ったときに、自分たちで工夫し、内製によってデジタルで課題を解決できるようになることが必要だと思っています。生成AI活用もその一つです。職員一人ひとりが生成AIやデジタルの活用方法を工夫し、その知見を共有できる仕組みが浸透すれば、自分たちの手で解決できることも増えていくはずです。

鈴木氏:AIを使うこと自体が目的ではないということですね。

河村氏:そうですね。DXも生成AIも、それ自体はあくまで手段だと私たちは考えるようにしています。学生の体験や教職員の業務を変え、効率化することで多くの余白が生まれる。その余白を何に使うのかが大切です。その分、学生は新しい挑戦が、職員は学生の学びや経営のための企画が、教員は教育研究や社会貢献が、存分にできるようになればと思います。DX大賞の受賞によって、DXへの取り組みを評価していただけたことはありがたいですが、「DXを頑張った大学」で終わってしまってはいけない。そうではなく、今後も新しい技術を積極的に活用して、学生の学びや学生体験の質を高め、大学そのものの魅力や競争力を高めるところまで取り組んでいかなければならないと思っています。

取材後記

変化のスピードが速い時代だからこそ、大学自身も変わり続ける力が求められます。追手門学院大学が進めてきたDXは、OIDAIアプリという一つのシステムを導入する取り組みだけではありません。学生の声を起点にサービスを見直し、部署を越えて職員が協働し、その経験が新たな人材を育てていく。そして次は、AIも活用しながら教職員自身が課題を解決できる組織へ。学生体験を変えるところから始まったDXは、大学そのものを変える取り組みへと広がり始めています。

DXマガジン編集部/戸田

【関連リンク】
追手門学院大学
https://www.otemon.ac.jp/index.html

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