富士通と横浜国立大学は、スーパーコンピュータ「富岳(Fugaku)」を活用し、台風に伴って発生する竜巻をリアルタイムで予測する気象シミュレーション技術を開発したと発表しました。従来、4時間後の竜巻発生を予測するために約11時間かかっていた計算を、わずか約80分で完了できるようにしたもので、今後の災害対応における実用化が期待されています。
台風は数百キロメートル規模の大気現象である一方、竜巻は数百メートル単位の非常に局所的な現象です。そのため、両者を同時に再現することは計算負荷が極めて高く、予測が難しいとされてきました。今回の研究では、横浜国立大学が開発する気象シミュレータ「CReSS(Cloud Resolving Storm Simulator)」を軽量化し、富岳の高い並列処理性能に合わせて最適化することで、計算速度の大幅な向上を実現しました。
実証実験では、2024年に発生した台風10号を対象に、富岳の約5%の計算資源を使用してシミュレーションを実施。実際に九州東岸で観測された複数の竜巻を、風の渦や雲の動きとして再現することに成功しました。この成果により、台風の進路や構造とともに、局所的な竜巻発生の可能性を高精度に可視化できる可能性が示されました。
今回の技術は、竜巻警報などの発表精度を高めるほか、自治体やインフラ事業者の防災対応を支援する基盤としても期待されています。富士通は、AIによる解析技術を組み合わせることでさらなる高速化と精度向上を図り、アンサンブル(複数シミュレーション)による将来予測への応用も視野に入れています。
横浜国立大学と富士通は今後、研究成果を広く共有し、気象庁や地方自治体などとの連携を深めながら、台風・竜巻などの気象災害に対してより迅速に対応できる社会の実現を目指すとしています。DXの力が、災害リスクの軽減と命を守るための新たな防災基盤を支えようとしています。
レポート/DXマガジン編集部






















