私たちは1日にどれだけの時間をメディアに捧げているでしょうか。ボストンコンサルティンググループの最新調査で、安定していた個人の総視聴時間がついに減少へ転じたことが判明しました。背景にあるのは、全世代で加速するタイパ志向と生成AIの普及です。人々の消費行動を塗り替える驚きの実態に迫ります。
タイパ至上主義と生成AIが引き起こす能動的な情報取得へのシフト
経営コンサルティングファームのボストンコンサルティンググループ(BCG)は、日本のメディア利用者3717人を対象に「2025年度メディア消費者行動調査」を実施しました。これまで1日あたり約4.4時間で安定していた個人のメディア総視聴時間が、最新の調査で4.1時間へと減少に転じたことが明らかになりました。この地殻変動の主因は、消費者の間でタイムパフォーマンス(タイパ)を重視する行動が定着したことにあります。さらに、生成AIの急速な普及が情報取得のルートを根本から変えつつあります。人々はただ流れてくる情報を漫然と眺めるのをやめ、より選択的で能動的なコンテンツ消費へと移行しているのです。動画配信サービス(SVODやAVOD)を利用する理由としても、「隙間時間での視聴」や「倍速再生」といった効率性を求める声が強く、タイパ志向の強まりが如実に現れています。
この影響を最も深刻に受けているのがテレビです。テレビの1日あたりの視聴時間は2022年度の1.9時間から1.5時間へと落ち込んでおり、この減少トレンドは若者だけでなく全世代に共通してみられます。特に従来はテレビの独壇場であり、リアルタイム視聴が強みとされていたドラマやニュースの視聴率が大幅に減少しました。テレビの社会的役割である報道への信頼感も、前年の低下から回復せず低水準のまま推移しています。さらにスポーツ分野でも地殻変動が起きています。2026年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が動画配信サービスで独占配信されたことが象徴するように、放映権の獲得競争が激化しています。これにより、視聴者が地上波からネット配信へ流れる傾向が加速しており、国民が広くスポーツを視聴できる「ユニバーサルアクセス権」の議論も重要性を増しています。
一方で、生成AIをチャット形式などで使いこなす消費者は、目的意識を持って動的に情報を取得する傾向が際立っています。こうしたAI利用者はSNSや動画配信の視聴時間が長い反面、テレビの視聴時間が短いという特徴があります。デバイス別ではスマートフォンが中心の生活が続くものの、本や雑誌、新聞といった紙メディアの利用率は根強く、底堅く推移している点も興味深い事実です。調査を担当した同社東京オフィスのパートナー、黒川あやかは、企業にとって信頼性の確保やAI普及に伴う新たな構造でのポジション獲得が重要な課題であると指摘しています。限られた消費者の時間の中でいかに価値あるコンテンツを届けるか、そしてAIを含めた新しい情報流通の構造のなかでいかに独自のポジションを確立できるかが、今後のビジネスの成否を分ける鍵となります。
見解として、メディアの総視聴時間が4.1時間に減少したデータは、タイパを追求する消費者がコンテンツを厳選し始めたシビアな現実を物語っています。 企業は従来の受動的な広告モデルから脱却し、生成AIによる能動的な検索行動のなかに自社の価値をどう滑り込ませるかという、情報流通DXへの対応が不可欠です。
詳しくは「ボストンコンサルティンググループ」の公式ページまで。 レポート/DXマガジン編集部






















