ソフトバンクとシスコは、光電変換を不要にするAll optical技術をメトロネットワークへ拡大し、大阪で初期展開を完了しました。400GbE対応ルーターや新型光モジュールを組み合わせ、従来比で約90%の消費電力削減を実現する次世代インフラです。DX時代の大容量化と脱炭素を両立する狙いが鮮明になりました。
メトロ網の「All optical」展開で何が変わるか
ソフトバンクとシスコが発表したAll opticalネットワークのメトロ展開は、通信インフラの省電力化と拡張性を同時に追求する試みです。光信号を途中で電気信号に変換しない方式を採ることで、従来のO/E/O(光→電気→光)変換に伴う大きな電力負荷を排除します。ソフトバンクは2025年9月に大阪で初期展開を完了し、2027年までに全国のメトロネットワーク適用を目指します。これは、AIやクラウドサービスの普及で急増するトラフィックに対応するための基盤整備でもあります。
技術面では、シスコの400GbE対応トランシーバー「OpenZR+」や、同社の最新チップ「Silicon One Q200」を活用する点がポイントです。OpenZR+により長距離・大容量のコヒーレント伝送をIPルーターに直接統合し、途中の光電変換を不要にします。これにより、帯域当たりで約90%の消費電力削減(従来比)を達成するとされています。さらにSilicon One Q200の導入で、スイッチ容量は従来比で約7倍になりつつ、消費電力は半減に近い改善を見込んでいます。こうした組み合わせにより、大容量化と電力効率の両立が可能になります。
メトロ向けのアーキテクチャも実務的な工夫が施されています。コア網向けのラック型光増幅器に代わり、ルーターに直接搭載できる小型の光増幅モジュール「QSFP-DD OLS」を採用します。ソフトバンク独自の外部電力不要の光多重装置(最大6.4Tbps)と組み合わせることで、設置面積と消費電力の双方を大幅に低減します。これにより、基地局やエッジに近い拠点までのメトロ網で、小型化・省電力・拡張性を両立する現実的な運用が可能になります。
ネットワーク制御面では、SRv6などIP技術と光伝送の融合により、エンドツーエンドでの柔軟な経路制御が期待されます。一般にAll opticalは伝送効率に優れる一方で柔軟性が課題とされてきましたが、IPルーティング技術との組合せで、コアからエッジまでの一貫した制御が可能になります。結果として、サービス提供側はトラフィック需要の急増にも迅速に対応でき、DXを支える通信基盤としての価値が高まります。
一方で、現場導入には注意点もあります。光とIPの融合は運用体制や障害対応の要件を変えるため、運用手順の見直しやエンジニアのスキル整備が求められます。また、初期段階では既存装置との相互接続や移行計画が重要になりますが、ソフトバンクはコア網ですでにAll optical展開を完了しており、メトロ展開でのノウハウ蓄積が期待されます。
今回の取り組みは、単なる装置更新にとどまらず、通信インフラをDXの基盤として再設計する試みです。省電力化と大容量化を両立することで、AIやBeyond 5G/6Gの時代に求められるネットワーク性能を確保しつつ、カーボンニュートラルの実現にも寄与する狙いが明確です。事業者側は導入効果を見極めつつ、運用面の体制整備を進めることが重要になります。
詳しくは「ソフトバンク株式会社」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部 權






















