日本電信電話株式会社(NTT)および株式会社NTTドコモビジネスは2025年10月8日、レベル4自動運転の遠隔監視や制御を支援する新しい通信ソリューション「Communication Stabilization Solution(コミュニケーション・スタビライゼーション・ソリューション)」を正式に発表しました。本サービスは、移動体における通信の安定性とリアルタイム性を確保するための技術を統合したもので、自動運転車や建設機械、倉庫ロボット、ドローンなどの分野への導入が期待されています。
移動中でも“つながり続ける”通信を実現
「Communication Stabilization Solution」は、モビリティ環境特有の通信課題を解決するために開発されました。自動運転車や無人機などの移動体は、常に異なる電波環境を走行するため、通信の途切れや遅延が大きなリスクとなります。同ソリューションでは、以下の3つの機能をパッケージ化しています。
- 通信品質予測機能
AIと統計モデルを活用して、走行ルート上の通信品質を事前に分析・予測。リスクの高い区間を早期に把握し、最適な経路や運用計画を立てることが可能になります。 - 複数経路制御機能
モバイル通信やWi-Fi、専用線など複数の通信経路を同時に管理し、瞬時に最も安定した回線へ切り替えます。これにより、映像監視や遠隔操作中でも通信の途切れを最小限に抑えることができます。 - リアルタイムデータ伝送機能
自動運転車やドローンから送信される高解像度映像、センサー情報、走行データを低遅延でクラウドへ伝送。複数拠点での同時監視や緊急時の即時対応を可能にします。
NTTドコモビジネスは、「通信をただ“つなぐ”だけでなく、“制御する”時代へ進化させる」ことをテーマに掲げています。モビリティや産業機器におけるリアルタイム通信の重要性が増す中で、同社が長年培ってきた通信制御技術を応用し、業種横断で利用できる通信基盤を提供する狙いがあります。
モビリティ産業の課題に応える通信インフラ
近年、日本国内では少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化しており、建設・物流・製造分野では自動化・遠隔化の需要が急速に高まっています。政府も2025年度にレベル4(特定条件下での完全自動運転)を前提とした制度整備を進めており、実証実験から商用運用への移行が進行中です。
NTTの新ソリューションは、こうした社会的潮流を支える「通信インフラの次なる形」として注目を集めています。自動運転バスや無人配送車のほか、建設現場の遠隔操作や倉庫ロボットのリアルタイム制御など、さまざまな応用が見込まれます。
NTTグループでは、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想のもとで“超低遅延・高信頼”な通信を実現する技術開発を進めており、「Communication Stabilization Solution」もその成果の一部です。従来の通信事業の枠を超え、社会インフラとしての通信技術を活かす新しい事業モデルが形になりつつあります。
企業・自治体との連携も進展
同ソリューションはすでに複数の実証実験で活用されています。たとえば、地方自治体と連携した自動運転バスの遠隔監視実験、物流企業との無人搬送車(AGV)の通信安定化テストなどで成果を挙げています。特に地方では通信環境のばらつきが課題となっており、NTTのネットワーク最適化技術が安全性と運用効率の両立に貢献しています。
また、NTTドコモビジネスでは、同サービスを企業の既存システムと連携できる形で提供しており、クラウド環境やエッジコンピューティング基盤との統合も可能です。今後は5G SA(スタンドアローン)通信や衛星通信との連携も視野に入れ、モビリティ分野における通信インフラの標準化を目指します。
通信から「社会ソリューション」へ
NTTが進める今回の取り組みは、通信事業から「社会課題解決型サービス」へのシフトを象徴しています。単なる通信網の提供にとどまらず、現場の安全・生産性・持続性を支えるための仕組みづくりへと進化しているのです。同社は今後、自治体・企業・研究機関との協業を強化し、「人と機械が安全に共存する社会」の実現に向けた新しい通信インフラの開発を続けていく方針です。






















