早稲田大学の「第20回世界デジタル政府ランキング2025」で英国が初の首位、日本は9位に回復しました。AI導入の潮流、格差とサイバーリスクの拡大が主要課題として浮上しており、日本の政策対応の速さと持続性が問われます。
2025年版の注目点と日本への含意
早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所が66か国・地域を主要10指標で評価した「第20回世界デジタル政府ランキング2025」で、英国が95.5353点で初めて総合1位となりました。上位にはデンマーク(94.8924点)、シンガポール(94.7332点)、エストニア(94.4940点)などが並び、人口の小さい国や地域の優位性が際立っています。今回の評価は20年分の時系列データに基づく分析の集大成として位置づけられています。
本報告はAIの行政実装が急速に進んでいる一方で、その社会変革効果はまだ十分でないと指摘します。日本はデジタル庁の「ガバメントAI」計画を公表し、UAEやシンガポール、韓国でも行政業務へのAI導入が進展していますが、生成AIや偽情報への対応、国民や職員のAIリテラシー、人材育成の遅れが懸念されています。サイバーセキュリティの脅威増大も共通課題として明記されています。
また、技術進化にう初期投資と保守運用費の高騰が多くの国の財政規律にプレッシャーを与えている点も報告書の重要な指摘です。特に地方自治体では高齢化・人口減少の下でAI導入による効率化が期待される一方、財政と人材の制約によりデジタル格差が拡大するリスクが強調されています。中央と地方での実装面の標準化不足も依然として課題です。
国際的には、気候変動やエネルギー・食料、災害対策が十分に統合されておらず、民主主義と権威主義の対立や自国主義の台頭が国際協調に摩擦を生んでいると報告書は述べています。デジタル政府の進捗は経済成長と相関しており、デジタル資産やデータ重視の国家戦略は経済・安全保障の双方に影響を与えるとの分析です。
日本向けの提言として報告書は五つの重点を挙げています。AIの効用とリスクヘッジを政策の中心に据えること、デジタル政策を経済成長や生産性向上に直結させる戦略再構築、行財政改革による無駄の排除と財政健全化、将来のAI・ロボット協働型政府を視野に入れた投資と制度設計、「誰一人取り残さない」人間中心のデジタル社会の実現です。これらは20年にわたる時系列分析に基づく具体的な示唆です。
詳しくは「早稲田大学総合研究機構電子政府・自治体研究所」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部 權






















