OKIサーキットテクノロジー株式会社と沖電気工業株式会社は、AI半導体のHBM向けウエハー検査装置に用いるプリント配線板で、180層・板厚15mmを実現する設計・生産技術を開発しました。従来上限だった124層・板厚7.6mmから約45パーセント多層化し、板厚は約2倍に高めています。複数基板を導電ペーストで接続する新技術と、板厚15mmに対応する超高厚PCB製造技術を組み合わせた点が特徴です。新潟県上越市の上越事業所で量産技術と設備導入を進め、2026年10月の量産出荷を目指します。AI半導体の検査装置で求められる高密度化や積層数増に応えるもので、信号品質や電源性能の維持と超高多層化の両立を可能にします。高帯域かつ高周波のデータ転送ニーズに対し、検査工程の性能向上が期待されます。
技術開発の背景。検査装置PCBに迫る高密度化と積層の壁
最新のAI半導体は扱う信号数が膨大で、プロセス微細化によりウエハー上のチップ数も増えています。検査装置に用いるPCBには狭ピッチ化と積層増が不可欠となる一方、高板厚化に伴いビアの特性インピーダンス制御が難しくなる課題がありました。電源層を貫通するビアによる電源性能の劣化や、細く長いビアを正確に加工するドリル技術の制約も限界要因でした。結果として、1枚構造の超高多層PCBは124層・板厚7.6mmが実質的な上限でした。AI時代の高速・高周波・高密度データ転送において、従来構造では将来的な要求に応えにくい状況にありました。こうした制約を乗り越えるため、基板構造と製造プロセスの両面で抜本的なアプローチが求められていました。OKIサーキットテクノロジーはこれらの課題を整理し、個別最適と全体最適を両立させる積層接続という解を打ち出しました。
導電ペースト基板間ビア接続と超高厚製造。60層×3枚で180層を実現
今回の開発では、複数の多層PCBを積層し、表面のビア同士を導電ペーストで接続する「導電ペースト基板間ビア接続技術」を確立しました。これにより、60層の基板を3枚積層して180層・板厚15mmの構造を実現します。各60層基板は従来確立された技術でビア特性、信号品質、電源性能を最適化した上で製造し、その後に積層接続するため、総合としての性能を確保しやすくなります。加えて、板厚15mmまで対応可能とする「超高厚PCB製造技術」により、機械加工や熱プロセス、実装時の信頼性を担保した生産が可能になります。導電ペーストを用いたビア接続は、長尺ビアのドリル加工制約を回避し、電源層貫通による劣化リスクの低減にも寄与します。結果として、超高多層化と高周波特性の両立を同時に満たす設計自由度を確保しています。高層化のスケーリングパスを確立したことが、HBM時代の検査ボード高度化における意義となります。
量産計画と適用領域。上越事業所を中核に2026年10月の出荷を目指す
高多層・高精細・大型PCBに実績のある上越事業所を生産拠点とし、量産技術の確立と設備導入を進めています。2026年10月の量産出荷を計画し、HBMを搭載するAI半導体向けウエハー検査装置での採用を見込みます。技術の適用領域はAI半導体やAIサーバーにとどまらず、宇宙・航空・防衛、次世代通信といった高信頼かつ高周波特性が求められる分野も想定しています。扱う信号数が増えるほど配線の最適化とノイズ抑制が重要になる中、積層接続構造は設計段階での分割統治を可能にします。これにより、高層化と品質維持を両立した設計・製造フローを構築できます。OTCは今後も技術進化に対応し、設計技術と製造技術の両輪での強化を継続します。量産段階での安定供給体制整備も合わせて進められます。
展示情報。PCB East 2026で本技術を紹介
OTCは、米国マサチューセッツ州のDCU Convention Centerで開催される「PCB East 2026」に出展し、本技術を紹介します。会期は2026年4月28日から5月1日までで、OTCブース番号はNo.313です。展示では、導電ペースト基板間ビア接続技術と超高厚PCB製造技術の詳細、および180層・板厚15mmの実現に向けた設計と生産のポイントを取り上げる予定です。AI半導体検査装置における高密度配線やインピーダンス制御、電源設計の考え方について、具体的な適用イメージを示します。HBM対応の検査ボード需要が高まる中、来場者に対して量産ロードマップや適用範囲の説明も行われます。現地での情報提供により、今後の共同検討や採用に向けた対話が促進されます。
詳しくは「OKIサーキットテクノロジー株式会社」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部





















