「ググる」時代から「AIと対話する」時代へ、生活者の購買行動が劇的なパラダイムシフトを迎えています。博報堂買物研究所が発表した最新レポート「買物フォーキャスト2026」では、AIエージェントが検索・比較から決済までを自律的に行う「エージェンティックコマース」の到来を予測。AIが果たす「38の役割」から見えてきた、企業が次に取るべき方向性や視点を示唆します。
週8,400万件の衝撃とゼロクリック問題がもたらす「DREAM」モデルのリアル
博報堂買物研究所は、生成AIの急速な普及に伴う生活者の買物行動の変化を捉えた研究レポート「買物フォーキャスト2026 生活者とAIの『対話』から繙く買物の未来」を公開しました。同研究所は2025年に、AIエージェントと共に暮らす未来の新購買行動モデルとして「DREAM(対話・推奨・体験・確信承認・管理)」を提言していましたが、当初2030年頃と想定していたこのモデルは、2026年現在すでに現実のものとなりつつあります。米国ではChatGPTに対して週あたり8,400万件以上の買物関連の質問が投げかけられており、AIの要約機能によって検索結果のリンクをクリックしない「ゼロクリック問題」が顕在化。情報検索から「AIへの相談」への移行が爆速で進んでいます。
日本国内において買物に生成AIを活用している層は、まだ全体の一部(1年以内AI利用者のうち8.1%)の「先端生活者」にとどまるものの、SNS上の約1万件の投稿分析からはすでに多面的な活用実態が明らかになりました。「予算10万円以内で大きくて軽いディスプレイを探して」と雑に要望を投げてスペックを徹底比較させたり、冷蔵庫のストックから思いもよらない献立を提案させたりと、生活者はAIを単なる検索ツールではなく、有能なコンシェルジュとして扱い始めています。同研究所がこれらの対話データを精緻に分類したところ、買物におけるAIの役割は実に「38」にものぼることが判明しました。
4象限で紐解く生活者の本音と「食品・アパレル」カテゴリーが目指すべきAI最適化
レポートでは、AIが果たす38の役割を「生活起点/商品起点」という対話のキッカケと、「縮める(効率化)/拡げる(可能性の拡張)」という生活者のメリットを軸に4つの象限で整理し、ビジネス攻略の糸口を提示しています。
- 生活起点×縮める(正解に導く): 残り物レシピの提案や体調に合わせた栄養管理など。何度も同じ説明をする手間(説明コスト)を下げ、文脈に合わせた自己開示をしやすい設計が求められます。
- 商品起点×縮める(選択を楽に): バラバラなECの商品説明を標準化するスペック徹底比較など。ただし、AIによる結論の押し付けは不満を呼びやすく、「自分で選んだ感(選択の余地)」を残すことが重要です。
- 生活起点×拡げる(希望を叶える): 潜在的な願望を言語化する理想への指導。いきなり購入の選択肢を出すのではなく、まずは課題解決のアイデアから提示する「購入ありきにしない」姿勢が鍵となります。
- 商品起点×拡げる(目利きの力を借りる): 詳しくないジャンルでの選び方のレクチャーなど。シーンに応じてバトラー(執事)やカウンセラーのようにAIの口調や役割を変化させるパーソナライズが響きます。
この4象限のインサイトは、日常的な買物である「食品」や、嗜好性の高い「アパレル」のマーケティング戦略を大きく変えます。例えば食品カテゴリーでは、従来の検索上位を狙う「SEO対策」から、生活者の悩みや健康課題に自社商品を紐づける「生活起点でのAI最適化」へのシフトが必要です。また、アパレルカテゴリーにおいては、店頭でのその場限りの商品説明(販売員の代替)ではなく、個人の購入履歴や好みを記憶して長期的に伴走する「専属スタイリスト」のようなAI環境の構築が差別化の決定打となります。
見解として、生活者がAIと「対話(Dialogue)」を重ねることで、自分でも気づいていなかった潜在ニーズが掘り起こされるプロセスは、リテールDXの次なる主戦場です。 企業は、単に「自社商品をAIに効率よく検索させる技術(テックドリブン)」を追うだけでなく、AIを介して生活者自身の可能性や体験をどう「拡げる」かという情緒的・可能性を拡張する体験設計に目を向けることで、エージェント時代における強固なブランドロイヤルティを築くことができるでしょう。
詳しくは「博報堂 買物研究所」の公式ページまで。 レポート/DXマガジン編集部






















