企業でAI導入が急速に進む一方、「導入したAIが本当に利益につながっているのか」という新たな課題が浮上しています。AIを使っていることと、AIから成果を生み出せていることは同じではないようです。PwC Japanグループが2026年7月30日に公開した「AIパフォーマンス調査」によると、世界各地・25業界の企業を対象に分析した結果、AIによる価値は一部の企業に集中していることが分かりました。調査対象は世界各地・25業界の企業に所属する取締役以上の経営幹部1,217人です。
上位20%の企業が、AIによる成果の74%を占める
調査で特に目を引くのが、企業間で生じているAI活用の成果の差です。PwCによると、調査対象企業のうち、わずか20%の企業がAIの生み出す成果の74%を占めていました。AI導入の取り組みが、必ずしも目に見える成果につながっているわけではなく、AIによる価値が一部の企業に偏っていることが分かります。
では、成果を出す企業とそうでない企業では何が違うのでしょうか。PwCが注目するのが「AI適合性」です。これは、重要性の高い課題にAIを適用し、目的に合った基盤を整え、全社にAIを浸透させていく能力を指します。
AIに「適合」した企業は財務パフォーマンス7.2倍
AI適合性が最も高い企業では、AI活用による収益増や効率化といった財務パフォーマンスが、他の企業の7.2倍に達しました。PwCは、企業間の違いを生むのは単純に「AIをどれだけ使っているか」ではなく、強固な基盤の上でAIの取り組みを再現性を持って横展開できるかだと分析しています。
実際、AIリーダーでは、企業のバリューチェーンや各部署のワークフローへのAI浸透を示す「範囲と深度」のスコアが他企業の約2倍でした。また、自律的に動くAIを利用する確率も2倍高いとされています。
日本の「AI適合性」は4.8、中央値を下回る
日本企業には課題も見えています。PwCが算出した国・地域別の「AI適合性指数」は10点満点で、日本が4.8でした。全体の中央値5.5を下回り、中国6.9、韓国5.4、米国5.2にも届いていません。一方、日本企業でもAIの導入そのものは進んでいます。PwCが別途実施した「生成AIに関する実態調査2026 春 6カ国比較」では、AIを「活用中・推進中」と回答した割合について、日本と米国はほぼ同水準でした。
しかし、得られた効果を財務的還元につなげた割合は日本では40%にとどまり、米国・英国は7割を超えています。つまり日本企業にとっては、「AIを導入すること」から「成果を生み、還元すること」への転換が次の課題になっています。
AIにお金をかければ成果が出るわけではない
AIリーダーは、AIへの投資額そのものも大きい傾向があります。売上高に占めるAI投資額の割合は、他の企業の2.5倍でした。ただし、PwCは投資額の多さだけがAIリーダーを生んでいるわけではないとしています。AIリーダーは事業上の優先課題の変化に合わせ、高い価値が期待できるAIプロジェクトへ予算や人員を振り向ける確率が、他企業の1.3倍でした。
さらに、成果を測定しながら「横展開するのか、打ち切るのか」を判断することも重要です。PwCは、AIプロジェクトに明確な成功指標を設定し、継続的に評価しながら、優先順位付けや横展開、打ち切りを判断することなどを提案しています。
「AIを何個導入したか」ではなく「いくら成果を出したか」へ
AI活用が広がるほど、「AIを導入している」という事実だけでは企業間の差になりにくくなります。今回の調査では、わずか20%の企業にAIによる成果の74%が集中し、AI適合性が最も高い企業では財務パフォーマンスが他企業の7.2倍に達しました。
重要なのはAIツールの数を増やすことではなく、事業上の重要な課題にAIを使い、データやテクノロジー、人材、ガバナンスなどの基盤を整え、成果を測りながら全社へ展開していくことです。PwCの調査からは、AI競争が「導入数」から「投資対効果」へと移りつつあることが見えてきます。
詳しくは「PwC Japanグループ」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部





















