会社員が本業とは別の仕事に挑戦する「副業・兼業」。収入を増やすだけでなく、「会社の外で経験を積む機会」として捉える企業もあるようです。労働政策研究・研修機構(JILPT)は2026年9月9日、「副業・兼業に関する企業ヒアリング調査」を公表しました。今回の調査は企業8社へのヒアリングを通じて、副業・兼業を認める企業や受け入れている企業の実態、制度を運用するうえでの課題などを調べたものです。企業全体の割合を示す調査ではなく、具体的な企業事例を掘り下げています。
なぜ企業は社員の「副業」を認める?
調査では、企業が副業・兼業に期待することとして、自律的なキャリア形成の促進や社員のスキルアップ、副収入の確保、モチベーション・満足度の向上、副業経験の本業への還元などが挙げられています。中でも注目したいのが、社員が社外で経験を積めることです。JILPTは、自社の事業領域外での経験や、自社では育成できないキャリアを社外で形成できることにメリットを感じている企業があるとしています。副業は「本業以外で収入を得る手段」だけではなく、一つの会社の中だけでは得にくい経験やスキルを身につける機会にもなっています。
「会社では育てられないキャリア」を社外で
企業にとって、社員が社外で働くことは人材育成の新たな選択肢にもなり得ます。自社にはない仕事を経験したり、異なる環境で自分のスキルを試したりすることで、そこで得た経験を本業に生かすことも期待されています。企業がすべての経験やキャリアを社内だけで提供するのではなく、社員が社外で経験を積むことにも価値を見いだしている点は、今回の調査の特徴の一つです。
副業を認めれば終わりではない
一方、副業・兼業には企業側の課題もあります。JILPTの調査では、職務専念義務や健康への配慮、企業秘密の保持、競業避止や利益相反などが、副業を運用するうえで企業が注意するポイントとして挙げられています。
特にフルタイムで働きながら副業をすれば、全体の労働時間が長くなる可能性があります。そのため、健康への影響を懸念する企業もあります。企業によっては事前に申請を求め、副業先との契約形態や仕事内容、活動時間、契約期間などを確認したうえで許可する仕組みを設けています。
外部人材を必要な仕事で活用するケースも
今回の調査では、社員を社外へ「送り出す」側だけでなく、外部人材を受け入れる側についてもヒアリングしています。事例の中には、自社の事業領域外にあたる単発のプロジェクトで、デザイナーやコンサルティングなど必要な人材を業務委託で活用するケースもありました。ただし、こうした外部人材が別の企業で本業を持つ「副業・兼業者」なのかを、企業側が必ずしも確認しているわけではありません。
そのため、今回の調査だけから「企業が副業人材を積極的に活用している」とまでは言えませんが、必要な知識や経験を社外から取り入れる働き方の事例は確認されています。
AI時代、「会社の外で得る経験」の価値は?
今回の調査は、生成AIと副業の関係を分析したものではありません。ただ、生成AIによって仕事のあり方が変わる中で、「自社では育成できないキャリアを社外で形成できる」という企業の捉え方は、これからの人材育成を考える一つの材料になりそうです。一つの会社、一つの仕事だけでは得られない経験をどう増やしていくのか。副業・兼業は収入のためだけではなく、働く人が自らキャリアや経験の幅を広げる選択肢としても注目されます。
詳しくは労働政策研究・研修機構(JILPT)「副業・兼業に関する企業ヒアリング調査」をご確認ください。レポート/DXマガジン編集部





















