サイバー犯罪者が最も信頼した「洗浄システム」の正体とは。世界中で猛威を振るうランサムウェア集団の資金を裏で支え、3億3600万ユーロもの大金を闇に葬ってきた国際的なネットワークが、ついに白日の下に晒されました。日本を含む世界各国の法執行機関が連携した、歴史的な大捜査網の全貌を暴きます。
「アウディA6」という隠れみの、ダークウェブと数千の偽口座を駆使した産業規模の犯罪
欧州刑事警察機構(ユーロポール)や日本の警察庁を含む国際的な法執行機関は、2026年6月10日に大規模な共同作戦を決行しました。今回の標的は、世界中のサイバー犯罪者から絶大な信頼を集めていた暗号資産の資金洗浄(マネーロンダリング)サービス「アウディA6」です。この組織は、2022年から2025年の間に3億3600万ユーロを超える不正利益を洗浄した疑いが持たれています。主にランサムウェア攻撃や大規模な仮想通貨窃盗によって得られたデジタル資産を、当局の追跡から隠蔽して現金化するための中心的な闇の拠点として機能していました。さらに、彼らはサイバー犯罪のマーケットプレイスであるダークウェブ上のフォーラム「Dark2Web」も運営し、世界中の犯罪者を結びつける役割を担っていました。
今回の国際共同捜査により、犯罪組織の産業規模におよぶ極めて巧妙な手口が暴かれました。彼らは、盗難や購入によって不正に取得した他人の身元情報を悪用し、様々な仮想通貨取引所に数千もの架空アカウントを開設していました。捜査当局は、マネーミュール(資金移動用の名義人)口座に関連する6,000件以上の本人確認(KYC)記録を特定しています。これらはロシア語を話す仲介者らとつながっており、グループが管理する特定のドメイン(テクノブレインズ・デヴやキューブブラックなど)のメールアドレスを使って登録されていました。犯罪者はプライベートメッセージでこの組織と連絡を取り、盗んだ暗号資産を送金するだけで、わずか1時間以内に複雑な取引を通じて「洗浄」された資金を受け理ることができました。組織は、その見返りとして3%から10%という多額の手数料を徴収し、莫大な富を築いていたのです。
この巨大な犯罪インフラを解体するため、アメリカのシークレットサービスや内国歳入庁、ポーランド警察などがユーロポールやユーロジャストの支援のもとで緊密に連携しました。作戦当日にはジョージアでウクライナ人とロシア人の容疑者2人が逮捕され、現地では80台以上の車両や複数の不動産が押収されました。同時に25のドメインが閉鎖され、30台以上のサーバーが押収されたほか、計77万8000ユーロ相当以上の仮想通貨が凍結・押収されています。ユーロポールは、最新のインターネット組織犯罪脅威評価(IOCTA)において、暗号資産の資金洗浄がチェーンホッピングなどの技術を用いてプロ化・産業化していると警告しています。この深刻化する脅威に対抗するため、ユーロポールは2026年6月30日にサイバー犯罪のプロ化に関するウェビナーを開催し、最新の対策技術について検証を行う予定です。
見解として、サイバー犯罪の裏側で3億ユーロ超を動かす資金洗浄サービスがプロ化・産業化している現状は、デジタル経済における最大の脅威です。 チェーンホッピング等の高度な技術に対抗するためには、日本を含む国際機関がデータを共有し、国境を越えたガバナンスを構築することが不可欠です。
詳しくは「欧州刑事警察機構(ユーロポール)」の公式ページまで。 レポート/DXマガジン編集部





















