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売上を追うだけでは儲からない?小売DXの本質は「仕組み改革」にあった

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DXマガジンは、DX実践セミナーを開催しました。今回のテーマは「利益を生む“仕組み”の作り方~小売・流通の構造改革とDX実装」。本セミナーでは、デジタル化や環境変化が進む中で、企業がどのように利益を生み出し、組織を変革していくべきかについて議論が交わされました。

「人口減少?EC化の波?システム導入こそがDX?」多くの方が小売・流通業界の課題と聞いて思い浮かべるのはこのような事ではないでしょうか。実際のデータを見ると、日本の物販市場におけるEC化率はまだ10%に満たず、残りの9割は依然として実店舗で買われています。人口減少を背景に国内市場全体のパイは伸び悩んでおり、ただ売上拡大を追う従来のやり方は限界を迎えています。一方で、企業は原価高騰への対応や、働き手に対する賃上げ要請という喫緊の課題に直面しています。

今回のセミナーでは、モデレーターの日本オムニチャネル協会理事の逸見光次郎氏を筆頭に、在庫マネジメントの専門家であるディマンドワークス代表の齊藤孝浩氏、ロジスティクスの専門家であるリンクス代表取締役の小橋重信という、異なる専門領域を持つ3名のスピーカーが登壇し、小売・流通業の収益構造と現場の革新に焦点を当て、深く掘り下げました。

顧客IDに基づく評価モデルと「関与売上」の衝撃

逸見氏がまず指摘したのは、従来の「商品」や「店舗」といった軸から、「顧客ID」を軸としたデータ分析への転換の重要性です。売上を「新規客」と「既存客」に分解すると、既存客は新規客に比べて客単価が高く、販促費もかからないため、営業利益に大きく貢献することがデータから明確になります。

しかし、オムニチャネル化が進む中で壁となるのが、昔ながらの「独立採算制」です。ECで注文して店舗で受け取った場合、売上の奪い合いが生じ、店舗側がECに協力しないという問題が起きていました。

これを打破するために逸見氏が提唱したのが、組織を超えた共通の評価軸である「関与売上」の導入です。ECが送客した売上を店舗とEC双方の評価につけることで、組織間の対立がなくなり、本部と店舗が協力して顧客に向き合う環境が生まれるといいます。逸見氏は「デジタル時代の顧客行動を追いかけるには、独立採算制の壁をぶち壊す必要がある」と語りました。

生産性を奪う「過剰在庫」の裏側と、店舗を解放するDX

続いて齊藤氏が登壇し、賃上げの原資を生み出すためには、従業員1人当たりの生産性(粗利高)を上げるしかないと強調しました。

サプライチェーンにおいては、メーカー、バイヤー、物流、店舗の各部門が「良かれと思って」個別最適に走った結果、過剰な在庫を抱えてしまう構造的な問題が発生しています。過剰在庫は値下げによる利益圧迫や資金の固定化を招くだけでなく、店舗のバックヤードを圧迫し、スタッフを入荷や移動といった過剰な作業に追いやることで、最も重要な「接客(お客様に向き合う時間)」を奪ってしまいます。

齊藤氏は「DXの本質は単なるシステム導入ではなく、ルールを見直して店舗スタッフを過剰な作業から解放すること」であると指摘。ユニクロやJINSといった企業は、セルフレジなどの明確な目的を持ったオペレーション変革により、1人当たりの生産性や営業利益を劇的に向上させている事例が紹介されました。

コスト部門からの脱却、ロジスティクスが拓く利益創出の未来

一方、小橋氏は物流の視点から、従来の「いかに安く効率的に運ぶか」から、「いかに顧客体験(UX)やLTVを上げるか」へのシフトが起きていると分析しました。コロナ禍において米ウォルマートが圧倒的に売上を伸ばした背景には、BOPIS(店舗受け取り)や駐車場の自動倉庫(マイクロフルフィルメント)といった、消費者のニーズに迅速に応える先進的なロジスティクス戦略がありました。

昨今、物流費の高騰が課題となっていますが、実はその原因の多くは、調達部門の過剰な大量仕入れや営業部門の無理な即日配送要求など、物流部門以外に起因しているケースが多いといいます。

小橋氏は、物流を単なる「コスト部門」として見るのではなく、「ROA(総資産利益率)」の視点を持つことの重要性を説きました。マーケティングが売上(トップライン)を上げる仕組みであるのに対し、ロジスティクスは少ない在庫で利益とキャッシュを生み出す仕組みであり、両輪が揃って初めて本当に儲かる会社になると強調しました。また、今後の物流危機(2024年問題)を乗り越えるためには、企業間で協力して荷物を運ぶ「共同物流」への移行も不可欠になると展望を語りました。

データと経験の融合が拓く共創の未来

セミナーの最後には、ディスカッションを通じて変革に向けた組織づくりの重要性が語られました。

逸見氏は、過去の成功体験を持つベテラン層を否定するのではなく、彼らの長年の「経験」と、現在の「データ」を掛け合わせることが変革への近道であると指摘しました。AIなどの最新テクノロジーも万能ではなく、最終的にAIが提示したデータを読み解き、決断を下すのは人間の役割です。

そして、ルールの見直しや「やめること」を決断できるのは経営層だけです。経営層が現場の負担を正しく理解し、組織間の壁を取り払いながら、デジタルを活用して変化し続ける柔軟な体制を構築することが、真の「構造改革とDX実装」であると結論づけられました。

関連リンク
日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/

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