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日本オムニチャネル協会は2023年5月17日、定例のオンラインセミナーを開催しました。今回のテーマは「メーカーの仕事~メーカービジネスにもとめられる精度と俊敏性~」。書籍「メーカーの仕事」の著者4人が集結し、これからのメーカーが果たす役割や必要な機能などを議論しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。
 日本の「ものづくり」を支える製造業。近年は海外メーカーとのし烈な競争に加え、新型コロナウイルス感染症による景気悪化、原材料費や人件費の高騰など、さまざまな課題に直面しています。そんな中、メーカーが生き残るにはどんな強みを打ち出し、何に注意すべきか。

今回のセミナーでは、ダイヤモンド社発行の書籍「メーカーの仕事」の著者4人が登壇。メーカーにとって基幹業務とも言える需要予測や在庫管理、生産管理、ロジスティクスのスペシャリストが集結し、これからのメーカーの業務を考察しました。セミナーでは、著者4人がそれぞれ「需要予測」「SCM」「S&OP」「物流」の4つの切り口で解説しました。

需要予測:予測精度より需要予測の本質を見抜け

 「需要予測」については、NEC AI・アナリティクス事業部 需要予測エヴァンジェリストの山口雄大氏が解説。山口氏は需要予測について、「予測の当たり外れや予測精度がフォーカスされがちだが、需要をなぜ予測するのかといった本質を考えることが大切だ。予測に必要なさまざまな情報を冷静に考慮、分析し、その時点のリスクを洗い出す。そのリスクを解消するアクションを先んじて打ち出し、ビジネスに良い結果をもたらす。こうした流れを意識することが需要予測の本質ではないか」と強調します。財務や人事、営業などの各部署が「需要予測」という共通言語のもと、リスクヘッジの施策を考えられるようになるべきだと指摘します。
図1:需要予測の本質的役割

図1:需要予測の本質的役割

 AIによる需要予測に取り組む際のポイントにも言及します。「AIで予測精度を高めることばかりに目を向けるべきではない。例えばセグメントが細かく分類され、複雑な因果関係を持つ領域(エッジ・フォーキャスティング)にAIは向く。一方、AIによる予測はその過程がブラックボックスである。そこでAIが導出した予測から根拠を考えるというアプローチも考えるべきだ。これを「リバース・フォーキャスティング」と呼ぶ。どんな情報から予測したのかが分かれば、逆に考慮していない情報を割り出せる。このように根拠を探ることで予測の確実性を高められる」(山口氏)と、需要予測AIの効果を高める考え方を提示します。

そのほか、常時モニタリングによる需要の変化を捉える「アジャイル・フォーキャスティング」、複数の予測モデルを使ってさまざまなリスクを評価する「リスク・フォーキャスティング」も需要予測AIに取り組むなら留意すべきだと指摘しました。

SCM:売れないものを減らす生産体制を視野に

 「SCM」については、オペレーションズ・マネジメント・グループ代表の行本顕氏が解説しました。「『売れないもの』はなぜうまれるのか?」というテーマで講演しました。行本氏は「メーカーの製造工程において、売れるものだけを作ることはできない。需要変動に対応しようとすればするほど、売れないものは増幅される。大切なのは売れないものをいかに減らすか。ここに目を向け取り組むことが不可欠だ」(行本氏)と指摘します。そこで多くのメーカーが、売れないものを少しでも減らそうと試行錯誤しているといいます。限られた生産能力の中で、売れるものの生産量を増やし、売れないものの生産量を減らすといった取り組みを検討すべきで、日本の製造業の多くが、すでにさまざまな工夫を凝らし、こうした対策に打って出ているといいます。これらの取り組みを標準化したのがSCM(サプライチェーンマネジメント)となります。

行本氏は、「今、売れ筋商品だとしても『売れないもの』が必ず生まれる。では『売れないもの」をどう減らせばよいのか。このときの考え方を体系化するのがSCMであり、今後はSCMの重要性がより増すだろう。製造業は今後、SCMはもちろん、 サプライチェーンの製造と実績を把握するSCE(Supply Chain Execution:サプライチェーン実行管理システム)にも目を向けるべきだ。より緻密に製造実績を把握することで、売れないものを最小化できる。SCEに取り組むことで施策の効果を最大化できるようになる」と考察します。

S&OP:デジタルを駆使して受給バランス最適化を目指す

 「S&OP」については、泉啓介氏が解説。需要と供給のバランスをとる意思決定プロセスについて説明しました。泉氏は「グローバル展開するメーカーの多くが、S&OPに取り組む。需要予測と供給計画の双方を考慮し、バランスを踏まえた上で販売計画や生産計画に落とし込む。そのためには事業戦略を前提に意思決定できるかどうかが重要となる」と指摘します。さらにS&OPプロセスで必要なのは、「販売部門や製造部門の担当者間で需給バランスを調整するのではなく、経営層や財務部門のほか、販売部門や製造部門の責任者といったトップが製販調整に関わるべきだ。さらにSKU単位で調整せず、製品群単位で中長期の期間を対象に考えることも大切だ。定期サイクルで少なくとも月に一度、KPIやアクションの進捗を確認し、意思決定の参考にすることも必要である」(泉氏)と指摘します。
図2:需要と供給のバランスとる意思決定プロセス

図2:需要と供給のバランスとる意思決定プロセス

via ダイヤモンド社「メーカーの仕事」
 需給バランスの意思決定にデジタルを活用する事例も紹介し、デジタル化を進める際のポイントも指摘しました。「サプライチェーンのデジタル化は、自動化すること、さらには洞察を得るという2つの視点が重要だ。そのためには、現時点の正確かつ完全かつ関連するデータを取得できるようになること。センサーやトランザクションからも取得できるようになるのが望ましい。データが自動的に処理され、意味ある内容に変換され、可視化されていることも必要だ。これにより、リアルタイムの計画や意思決定に役立てられる」(泉氏)といいます。さらに、AIを使って将来の予測やリスク、シナリオを評価できるか。つまり洞察を得られる環境であるかも大切だといいます。洞察をもとに迅速なアクションに実行できるかも必要だと続けます。「製品開発は、製造と販売との一貫したプロセス改革が欠かせない。これにより消費者の動向に迅速に対応できるようになる。その結果、自社の財務指標の改善も見込めるようになる」(泉氏)と指摘します。

物流:全体最適化と共創が成功のカギ

 「物流」については、リンクス 代表取締役社長で日本オムニチャネル協会のSCM部会リーダーの小橋重信氏が解説しました。物流業界の時間外労働の規制やドライバー不足などといった問題を機に、物流体制に目を向けるべきと訴えました。小橋氏は、「サプライチェーンを見ると、企画や製造、物流などの顧客に商品を届けるまでの過程は部門ごとにばらばらで部分最適にとどまっていた。しかしデジタルを活用することでこれらをつなげられるようになる。バリューチェーンをつなげ、全体最適を目指すことがより重要になる」と指摘します。先に解説した山口氏、行本氏、泉氏が指摘する通り、「需要予測や生産計画、販売計画など、サプライチェーン全体の情報を俯瞰することで物流の効率化も見込めるようになる。物流危機は、サプライチェーン全体の問題に他ならない。全体最適を目指さない限り、解決も見込めない」(小橋氏)と強調しました。

その上で今後、どんな物流戦略を打ち出すべきか。小橋氏は「大量生産体制から脱却し、必要なものを必要な量だけ必要とする場所に届ける仕組みをいよいよ考えなければならない。さらに製造業は作って終わりではない。作ったあとの責任まで負うことが大切だ。『循環型社会』が叫ばれる中、商品を製造、販売したあとのリサイクルする仕組みまで含めた体制構築が求められる。個々の企業同士が競い合うのではなく、企業同士が手を取り、サプライチェーンや物流などのインフラを共有する仕組みづくりも目指すべきだ。『共創』を前提とした物流プラットフォームを構想すべきである」とまとめました。

図3:今後の物流戦略

図3:今後の物流戦略

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