株式会社帝国データバンクは、2025年1月から2026年1月に決算期末を迎えた約9万社の財務データを用い、ガソリンや軽油など燃料費の高騰が業績に与える影響を試算しました。トリム平均を用いた分析の結果、燃料費が2025年比で30%上昇しレギュラー230円相当となった場合、企業1社あたりの年間負担は平均48.4万円増え、営業利益は平均4.77%減少する見通しです。営業損益が黒字から赤字に転落する企業は約2700社、全体の2.93%に膨らむ可能性が示されました。イラン情勢の緊迫化を発端とした燃油価格の急騰が背景にあり、燃料費の急激な上昇が幅広い業種の収益を圧迫する構図が浮き彫りとなりました。なお、試算は決算期末時点のデータに基づき、その後の燃料費の増減は反映していません。
運輸業への影響が突出 30%増で平均利益は約8割減、約25%が赤字転落
業種別の試算では運輸業の影響が最も大きく、燃料費が1割上昇すると年間支出は平均470.4万円増、営業利益は平均27.88%減となり、新たに10.29%が赤字へ転落すると見込まれます。上昇幅が3割に達すると、年間支出は約1400万円増に拡大し、営業利益は平均で約80%減少、4社に1社に相当する24.57%が赤字に転落する結果となりました。運輸業は売上高に占める燃料費比率が高い一方、燃油サーチャージなどの価格転嫁が追いつかない場合が多く、経営体力の毀損が顕著になりやすいことが示唆されています。製造業でも影響は大きく、セメント焼成炉などを持つ窯業・土石製品製造や、高温殺菌などで蒸気を要する食料・飲料・飼料製造は、製造原価に占める燃料費比率が高いケースが目立ちました。重機を多用する鉱業も軽油高騰の影響が大きく、サービス業では大浴場を備えた旅館・ホテルや温浴施設、リネン類の洗濯や乾燥工程がある事業で負担増が顕在化しています。
全産業で試算値を提示 価格転嫁が不十分な構造下で赤字転落が拡大
全産業平均では、燃料費が1割上昇した場合に1社あたりの年間負担は16.1万円増で、営業利益は1.59%減、約1000社の1.09%が赤字転落となる見込みです。30%上昇時には負担が48.4万円増、営業利益は4.77%減に拡大し、赤字転落は約2700社で2.93%へと増える試算です。帝国データバンクが2025年7月に実施した調査では、エネルギーコスト上昇分の価格転嫁率が30%にとどまっており、多くの企業が燃料費の上昇分を自社で吸収してきた実態が示されています。資源エネルギー庁の公表では、レギュラーガソリン価格は3月18日時点で1リットル190.8円と、前週から29円、17.9%の上昇となりました。燃料コストの急騰を即時に転嫁できる企業は少なく、今後は価格転嫁の限界に直面する事業者が増える可能性があります。特に運輸業では、30%増シナリオで営業利益の平均8割が消失するなど、他業界と比べても影響が突出して深刻です。
政策対応の動向と今後の注視点 企業経営への波及リスク
政府は、ガソリン小売価格を全国平均で1リットル170円程度に抑制する措置として、3月19日出荷分からガソリン元売り各社への補助金支給を予定しています。こうした対策が企業業績に与える影響は注視が必要で、補助金による価格安定化が図られたとしても、燃料費の高止まりが続けば、価格転嫁の遅れやコスト吸収の限界が業績を圧迫する局面が想定されます。帝国データバンクの試算は、燃料費上昇が企業の損益に与える定量的な影響を示し、赤字転落比率の拡大という形でリスクが可視化されました。燃料費の比重が高い業種では、値上げの実行可能性や契約形態、運賃や料金への反映速度など、個別の条件により影響度が大きく変動します。短期的な価格変動に加え、構造的な価格転嫁の難しさが残る限り、業績の下押し圧力は続く可能性があるといえます。動向を見極めつつ、コスト構造の見直しやサプライチェーン上の負担配分に関する議論が焦点となります。
詳しくは「株式会社帝国データバンク」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部






















