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コラム

なぜドンキもトライアルも食品を強化するのか?売上ではない狙いを考察

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小売業で「食品」の意味が変わり始めています。パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は食品強化型の新業態を打ち出し、惣菜や即食領域の開発を進めています。トライアルホールディングスも西友を完全子会社化し、「食」の強化と生産・物流の最適化を掲げています。一見すると、売場改革とM&Aという異なる動きに見えます。しかし、その根底には共通した方向があります。食品が、単なる一カテゴリーではなく、事業全体を支える中核として再定義され始めていることです。本稿では、事業変化の事実を整理した上で、そこから見えてくる変化を考察します。

各社は「食品」を事業の中心に据え始めている

PPIHは、食品のシェア拡大を成長戦略の重要テーマとし、「食品強化型ドンキ」や惣菜戦略を推進しています。加工食品や日配品、冷凍食品の強化に加え、即食・簡便といった日常利用を意識した商品開発を進めています。トライアルホールディングスは、西友の完全子会社化により、PBや製造拠点、調達ネットワークといった食品基盤を取り込みました。同社はこれにより「食」の強化と生産・物流の最適化を図るとしています。また、トライアル西友の店舗では、Skip Cartやインストアサイネージといったデジタル施策も導入され、購買データの活用や売場の高度化が進められています。ここまでは、各社の発表から確認できる事実です。

ここまで整理した内容は、各社の発表から確認できる事実です。ただし、これらの動きが何を意味するのかは、解釈の領域に入ります。そこで、DXマガジンとしての視点から、この動きを捉えてみます。

なぜ各社はここまで食品に寄せるのか

なぜ各社はここまで食品に寄せるのでしょうか。DXマガジンとしての結論から言えば、食品は「頻度×接点×データ」を同時に取りにいける、数少ない領域だからです。これは単純に「食品が売れるから」ではありません。小売の構造そのものが、食品を中心に再設計され始めていると見るべきです。

① 来店頻度を握れる──小売は“メディア化”する
アパレルや家電は、購入頻度が低いカテゴリーです。一方で食品は、週に数回、場合によっては毎日購入されます。この差は決定的です。食品を強化することで、小売は顧客の生活の中に入り込むことができます。結果として、「来店の理由」を継続的に持つことができる。

DXマガジンとしては、この変化を小売が「商品を売る場所」から「生活のハブ(メディア)」へと変わりつつある兆しだと捉えます。

② LTVが設計できる──単発から習慣へ
食品はリピート前提のカテゴリーです。惣菜、ミールキット、プライベートブランド。これらはすべて、継続的な購買を前提に設計できる商材です。特に最近は、冷凍食品の高付加価値化や即食(Ready-to-eat)の強化が進み、外食と内食の間を取りに来ています。これはつまり、単発の買い物を「習慣」に変える装置です。
一度使わせるのではなく、繰り返し使わせる。食品は、小売にとってLTV(顧客生涯価値)を設計できる数少ない領域になりつつあります。

③ データが取れる──食品はDXの核になる
食品は購買頻度が高く、かつ嗜好や健康状態、家族構成といった個人差が強く出るカテゴリーです。つまり、極めて密度の高いデータが蓄積される。このデータは、レコメンド、クーポン、在庫最適化、需要予測など、あらゆるDX施策の精度を引き上げます。食品は“売る商品”であると同時に、“データを生み出す装置”でもあるのではないでしょうか。

④リアル店舗の価値を守る最後の砦
非食品はECとの競争が激化しています。価格比較もしやすく、利便性でもオンラインが優位な領域が増えています。一方で食品は、鮮度や即時性、さらには体験価値といった要素が残ります。この領域では、リアル店舗の優位性は依然として大きい。だからこそ食品は、リアル小売が存在価値を維持するための重要な領域でもあります。

事実として、小売各社は食品を強化し、売場、商品、供給、データの再設計を進めています。その上でDXマガジンとしては、小売が食品を強化する理由は売上そのものではないと考えます。食品は、「頻度」「接点」「データ」を握り、顧客の生活そのものに入り込むための武器になっている。いま小売で起きているのは、カテゴリー戦略の変化ではなく、「生活をどう押さえるか」という競争へのシフトなのではないでしょうか。

レポート/DXマガジン編集部

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