自治体のDX推進は、全国的に加速しつつある一方で、その進み方には大きなばらつきと構造的な課題が存在しています。株式会社うるるが公表した「自治体ドックランキング2026」では、全国1,741自治体を対象にDX推進度を偏差値で可視化し、大阪市が77.2で1位、江戸川区、都城市が続く結果となりました。地域や規模を問わず多様な自治体が上位に入る一方で、フロントヤード改革、すなわち市民接点のデジタル化は平均63点にとどまり、依然として改善余地が大きい領域であることが示されています。
上位自治体は、デジタルデバイド対策や行政サービスの高度化で高得点を記録しており、特に江戸川区は情報セキュリティとデジタルデバイド対策で満点を獲得しています。しかし、ランキング全体で見ると、TOP20におけるデジタルデバイド対策の平均は48と低く、包摂性の確保が全国的な課題として残されています。また、昨年と比較して大規模自治体のスコア伸長が目立ち、DXの推進力が自治体の規模や体制に依存しやすい実態も浮き彫りになっています。
一方で、建設分野におけるDXの遅れはより深刻です。209自治体を対象とした調査では、工事管理業務の負荷が図面や提出書類に集中し、紙正本の保管やExcelなどの属人的な運用が依然として主流であることが明らかになりました。電子納品といった基盤的な取り組みは一定進展しているものの、BIMや点群といった高度施策は関心段階にとどまり、実装には至っていません。予算確保の難しさ、人材不足、施策理解の不足という三重の課題が、DXを「検討」から「運用」へ進める障壁となっています。
さらに、費用感の不透明さが意思決定を遅らせる要因となっており、結果として現場では日々の業務負荷に追われ、変革に踏み出せない状況が続いています。この構造を打開するためには、提出書類の標準化や情報の一元管理といった足元の改善から着手し、小さな成功を積み上げていく段階的なアプローチが有効とされています。
こうした課題が存在する一方で、自治体DXの新たな方向性も見え始めています。横浜市立図書館では、AIを活用した本探し支援の実証が行われており、音声対話を通じて利用者の曖昧な関心を言語化し、検索につなげる取り組みが進められています。ここではAIはあくまで補助的な役割に徹し、既存の蔵書システムと組み合わせることで、信頼性を維持しながら新たな価値を提供しています。これは、DXが単なる効率化ではなく、体験の質を高める方向へ進んでいることを示しています。
また、松戸市では行政サービスを一元化した「デジタルまつどポータル」を導入し、情報提供から手続きまでをアプリ上で完結できる環境を整備しています。さらに佐賀市では、遠隔操作型ロボットによる窓口案内の実証が行われており、業務効率化と新たな就労機会の創出を同時に検証しています。これらの取り組みは、単なるデジタル化にとどまらず、行政サービスの在り方そのものを再設計する動きといえます。
総じて、自治体DXは「先進事例の拡大」と「現場課題の停滞」が併存する段階にあります。ランキング上位のように成果を出す自治体がある一方で、多くの自治体では基盤整備や組織課題がボトルネックとなり、実装が進まない状況です。今後は、標準化や一元管理といった基礎を固めつつ、AIやデジタル技術を補助的に活用しながら、住民体験の向上へとつなげていくことが求められます。DXの本質は技術導入ではなく、業務とサービスの再設計にあるという前提に立ち返る必要があります。






















