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AIは人を減らすためではない。米ウォルマートに学ぶ、業務自動化と接客価値のハイブリッド経営

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新卒で小売業に入り、店長を経験した私は、常に人手不足に頭を抱えていました。

欠員が出れば自ら売場に立ち、繁忙期にはシフト調整に追われる。採用しても定着しない、育成したと思ったら退職してしまう。そんな状況は決して珍しいものではありませんでした。

当時から人手不足は大きな課題でしたが、今はさらに深刻になっているように感じます。少子高齢化によって働き手そのものが減少し、働き方や価値観も多様化しています。小売業に限らず、多くの企業が人材確保に苦労する時代になりました。

しかし、小売業が抱える課題は人手不足だけではありません。

お客様の生活スタイルはますます多様化し、買い物の選択肢も大きく広がっています。ECの普及によって、欲しい商品は自宅にいながら購入できるようになりました。価格比較も簡単です。以前であれば近所のスーパーや店舗に行くしかなかった買い物が、今ではスマートフォン一つで完結します。

そんな時代だからこそ、私はある問いが重要になっていると思います。

「なぜお客様は、この店舗に来るのか」

昔は立地が良ければ、ある程度お客様は来店してくれました。しかし今は違います。近くには競合店があり、ECもあり、ドラッグストアも食品を販売しています。お客様には無数の選択肢があります。その中で選ばれる理由がなければ、お客様は来店してくれません。

私が店長をしていた頃も、競合店のチラシや売場は常に意識していました。しかし実際には、一番安い店が必ず選ばれるわけではありません。

「あの店の魚がおいしい」「お惣菜が好き」「店員さんが親切」「なんとなく買いやすい」

お客様には、それぞれお気に入りの理由があります。価格だけでは説明できない価値が確かに存在しているのです。

実際に地方へ行くと、全国チェーンを抑えて地域密着型のスーパーが圧倒的な支持を集めているケースがあります。地元のお客様が求める商品を理解し、地域の生産者とつながり、地域の暮らしに寄り添っている。こうした積み重ねが「この店に行く理由」になっています。

一方で、世界に目を向けると、小売業の新たな姿を示している企業があります。それが米国の小売大手Walmartです。ウォルマートは長年、「EDLP(Everyday Low Price)」という毎日低価格を実現する戦略で成長してきました。しかし現在は、それに加えてオムニチャネルとAI活用を積極的に進めています。店舗とECを連携させ、どこからでも買い物できる環境を整えながら、AIによる需要予測や在庫管理、物流の最適化を進めています。

重要なのは、AIが人を不要にするために使われているわけではないことです。AIによって単純作業や繰り返し業務を効率化し、人はより付加価値の高い仕事に集中する。その考え方が根底にあります。
では、小売業における付加価値の高い仕事とは何でしょうか。私は、その一つがお客様がわざわざ買いに来たくなる商品をつくることだと思っています。

近年、多くのスーパーがお惣菜や店内調理商品に力を入れています。同じ商品を仕入れて並べるだけでは差別化が難しくなっているからです。実際に私自身も、「あの店の唐揚げが食べたい」「あのお惣菜を買いたい」という理由でスーパーを選ぶことがあります。

お客様が店舗へ足を運ぶ理由は、価格だけではありません。その店ならではの商品や味、体験が来店のきっかけになっています。だからこそ、発注や在庫管理、シフト作成などAIが得意な業務は積極的に活用し、人は売場づくりや商品開発、お惣菜づくり、お客様とのコミュニケーションなど、選ばれる理由を生み出す仕事に時間を使うべきではないでしょうか。

AIは万能ではありません。しかし、人手不足が避けられない以上、活用しないという選択肢も現実的ではありません。

重要なのは、AIがすべてを自ら生み出しているわけではないということです。AIは無から有を生み出しているように見えますが、実際には膨大な知識や事例、データを組み合わせながら新しい答えを作り出しています。そして、その方向性を示しているのは人間です。

どんな商品を提案するのか。どんな売場を作るのか。どんなお客様体験を目指すのか。

その問いやヒントを与えるのは人であり、AIはそれを実現するためのパートナーだと私は考えています。だからこそ、これからの小売業では「AIに仕事を奪われるか」ではなく、「AIと協力しながらどんな価値を生み出すか」が重要になってくるのではないでしょうか。

6月17日には、「人が辞める時代に、企業はどうつながり続けるか」をテーマにしたセミナーを開催します。人手不足が深刻化する中で、企業はどのように従業員との関係を築き、働き続けたいと思える環境をつくるべきなのか。小売業をはじめ、さまざまな業界に共通する課題について考える機会になればと思っています。

人手不足を単なる採用課題として捉えるのではなく、企業のあり方や働く価値そのものを見直す機会として、一緒に考えてみませんか。
お申込み:https://dxmagazine.jp/seminar/260617sem/

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