OECDが2026年5月13日に公表した日本経済調査は、日本経済の現状と課題をくっきりと描き出しています。数十年にわたるほぼゼロのインフレを経て、日本経済は新たな高インフレ均衡に向かいつつある——そう診断したうえで、OECDは財政・生産性・労働市場・エネルギーの4つの領域にわたる改革の必要性を訴えています。
成長は続くが、勢いは鈍化する
まず経済の現状から見ると、OECDは2025年の成長率を1.2%と見込んだうえで、2026年には0.7%、2027年には0.9%へと成長が緩やかになると予測しています。エネルギー価格の上昇や中東情勢による不確実性が短期的な下押し圧力となっています。インフレ率は2026年に2.0%、2027年には1.9%と予測されており、日本銀行の目標である2%付近で推移する見込みです。OECD事務総長のマティアス・コーマン氏は東京での発表で、日本経済が国内需要に支えられて回復力を示していると評価しつつも、「公的債務の削減と財政緩衝の構築に向けた改革の勢いを維持すべき」と明確に釘を刺しました。
財政の持続可能性が最優先課題
OECDが最初に掲げるのは財政問題です。公的債務を確実に減少させることが優先事項とされており、年金・医療・長期介護に関連する支出の成長を抑制し、付加価値税率を段階的に引き上げて歳入を最適化する包括的な改革が必要だと指摘しています。また、補助予算の使用を制限することで、ルールに基づく財政枠組みの強化と財政規律の向上が求められるとしています。高齢化が進む日本において、社会保障支出の増大は避けられない課題です。OECDはその圧力に正面から向き合う改革なしに財政の持続可能性はないと見ています。
生産性向上のカギは「行政の効率化」
次に生産性について、OECDは行政手続きの効率化を具体的な処方箋として挙げています。企業の開設や登録にかかる行政手続きを簡素化することでビジネスの活力が増し、生産性向上につながると指摘します。ワンストップショップ機能の強化による手続きの複雑さの軽減、言語・その他の障壁を緩和する措置の強化が外国直接投資の誘致に寄与するとも述べています。
中小企業支援のあり方についても踏み込んでおり、より的確な支援によって若手で革新的な企業の成長を促し、生産性の低い企業の退出を促すことが必要だとしています。一律の支援ではなく、選別的・重点的な支援へのシフトを求める内容です。
労働市場改革——女性・高齢者・外国人の活用が焦点
労働供給の面では、非正規雇用における女性や高齢者の割合が依然として高いことが問題とされており、労働市場改革の継続が必要と明記されています。通常の雇用契約の柔軟性を高めることが、労働市場の二元論(正規・非正規の分断)を打破する手がかりになるとしています。
さらに外国人労働者の誘致・統合を促す政策の強化と、高齢労働者や非標準契約労働者を対象とした成人学習プログラムの充実も求めています。人口減少が続く中で国内の潜在労働力を最大化し、外国人人材もより効果的に活用する——その両輪が日本の労働供給拡大に不可欠だというのがOECDの見立てです。
エネルギー転換の加速も急務
最後にエネルギー問題について、日本が化石燃料に大きく依存していることを踏まえ、ネットゼロ排出目標の達成とエネルギー安全保障強化に向けた取り組みの加速を求めています。カーボンプライシングの詳細を迅速に発表することで投資の確実性を高め、グリーントランスフォーメーション(GX)2040ビジョンの効果的な実施を促進することが重要だとしています。また、複数行政機関にまたがる許認可プロセスを集中化・効率化することで再生可能エネルギーの普及を後押しすべきと指摘しています。OECDが今回の調査で繰り返し強調するのは「改革の継続」という言葉です。財政・生産性・労働・エネルギーのいずれの分野においても、既に議論されてきた課題への対応を止めないことが、人口動態と外部環境の逆風の中で日本経済が成長を維持するための条件だということです。
レポート/DXマガジン編集部 權
(出典:出典:OECD「日本経済調査」プレスリリース)






















