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コラム

「そんな話を聞きたくて呼んだんじゃない」DX推進で管理ばかりしていた私の失敗【怒られながら実践したこと】

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「そんな話を聞きたくてあなたを呼んだんじゃない」
私は思わず言葉を失いました。

生成AIを活用した業務改革プロジェクトの初回打ち合わせ。私はプロジェクトマネージャー(PM)として、ツール活用による効果、AI導入までのスケジュール、推進体制、進捗管理方法を整理し、自信満々で提案していました。どの部署にいつ導入するのか。どのような工程で進めるのか。リスクをどう管理するのか。PMとしては当然の準備です。

しかし、提案が終わった瞬間、クライアントの責任者から返ってきたのは予想外の言葉でした。
「ツールを使うことによる便利さや導入管理の話は分かりました。でも、それで結局、私たちの仕事はどう変わってくるの?」
その一言で、自分が大きな勘違いをしていたことに気付かされました。

クライアントが本当に知りたかったこと

後から振り返ると、クライアントはAIツールの説明を求めていたわけではありませんでした。彼らが知りたかったのはもっと本質的なことです。AIを導入したら、自分たちの仕事はどう変わるのか。これまで積み上げてきた業務はなくなるのか。本当に効率化されるのか。本当に現場は回るのか。部下たちはついてこられるのか。

つまり彼らは「技術」を求めていたのではなく、「未来」を知りたかったのです。
私はプロジェクトマネージャーとして、システム導入を成功させるための話ばかりをしていました。しかしクライアントが求めていたのは、技術と業務をどうつなぐのかという答えでした。

DXの次に来る「AX」という考え方

クライアントから指摘を受けたあと、私はなぜ自分の提案が響かなかったのかを考え続けていました。そんなとき、頭に浮かんだのが、弊社代表の鈴木が以前から話していた言葉です。

「熊谷、今はDXの時代じゃない。その先のAXの時代だ」

当時の私は、その意味を正直よく理解できていませんでした。しかし、現場でクライアントの声を聞く中で、少しずつその言葉の重みが分かるようになってきたのです。

鈴木は、IT化とDX化のステップを次のように説明します。第一段階の「IT化」は、紙の伝票をデジタル化するような情報のデジタル化と、既存業務をITを使い効率化する業務のデジタル化。第二段階の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、デジタル技術を活用してビジネスモデルや組織そのものを変革する事業変革であると。
そして現在、その第二段階の中で、私たちが今まさに向き合っているのが「AX(AIトランスフォーメーション)」です。AXとは、AIの自律的な判断や生成能力を前提として、業務のあり方や人間の役割そのものを作り直し、AI前提で企業を再設計していくフェーズだと鈴木は語ります。

この考え方を聞いたとき、私はクライアントとの会話を思い出しました。クライアントが不安に感じていたのは、AIツールの機能ではありませんでした。AIによって自分たちの仕事がどう変わるのか、人はどのような役割を担うのかという、もっと本質的な部分だったのです。

AXの時代は、従来のシステム導入とは大きく異なります。事前に完璧な仕様を決めることはできません。AIは日々進化し、昨日できなかったことが今日できるようになります。実際に使ってみなければ分からないことも数多くあります。

だからこそ、従来のように「計画通りに進めること」だけを目的にしたマネジメントでは限界があります。スケジュールやタスクを管理することはもちろん重要です。しかし、それだけでは現場は置いていかれ、最終的には誰も使わない仕組みだけが残ってしまいます。

私がクライアントから指摘されたのも、まさにそこでした。彼らが求めていたのは管理ではなく、変化し続ける技術と現場の業務をどうつなぐのかという答えだったのです。

管理者ではなく、「人と技術をつなぐリーダー」になれ

そんなとき、私が何度も思い出したのが、弊社代表でありDXマガジン総編集長、日本オムニチャネル協会会長でもある鈴木の言葉でした。

「管理を捨てろ」

最初に聞いたときは衝撃でした。プロジェクトマネージャーなのに管理を捨てるとはどういうことなのか。しかし鈴木は続けてこう話していました。

「人と技術をつなぎ、変革を動かすリーダーになれ」

この言葉を理解したとき、自分の役割が見えてきました。PMは正しい理屈やきれいな計画書で進行する人ではありません。経営者が描く理想と現場の現実をつなぐ人です。現場に眠る暗黙知と最新技術をつなぐ人です。そして、異なる立場の人たち、部署間の考え方を一つずつつなぎながら、新しい価値を共創する人です。

共創リーダーというPM像

私は今、PMの本当の仕事は管理ではなく、共創リーダーとして、異なるものをつなぎ、新しい価値を生み出すことだと考えます。経営者のビジョンを現場の言葉に翻訳する。現場の不安を経営層に届ける。AIの可能性を、実際の業務や新しい働き方につなげる。そのために現場に出向いて声を拾う。対話を重ねる。泥臭く現場に入り続ける。

そうした役割こそが、これからのAX時代に求められるPM像です。

私自身、クライアントに怒られたことで大切なことを学びました。技術を導入することが目的ではありません。人と技術をつなぎ、新しい未来を共につくること。それこそがDXの先にあるAX時代のプロジェクト成功の鍵なのだと思います。

プロフィール

熊谷 仁樹

株式会社デジタルシフトウェーブ
DXソリューション部 シニアマネージャー

多数のDX・システム導入プロジェクトにおいて、経営層と現場、ITベンダーの間に立ち、業務改革を推進するプロジェクトマネージャー(PM)。

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