NTT株式会社は、JAXAと共同で革新的衛星技術実証4号機 小型実証衛星4号機に低軌道衛星MIMO/IoT伝送装置(LEOMI)を搭載し、軌道上実証実験を開始しました。衛星は2025年12月14日12時09分に打ち上げられ、その後のチェックアウト試験でLEOMIの正常動作を確認し、初期運用フェーズを完了しています。定常運用を開始した後、MIMO方式による信号処理が想定どおりに行われていることを確認しました。今後は約1年間の定常運用期間で継続実験を行い、技術の確立をめざします。将来的には衛星通信の伝送速度向上や、地上通信網が整備されていない海洋や山間部などでのIoT活用とセンシングサービスへの応用が期待されます。なお、本件はNTTの宇宙事業ブランド「NTT C89」の取り組みの一つとして位置づけられています。
実証の背景と狙い。LEO市場の拡大と超広域センシングプラットフォームの実現
近年、低軌道衛星の分野は世界的に急成長し、2025年時点で地球周回中の衛星は1万機近くに達し、10年前の約10倍となっています。SpaceXやAmazonなどの民間企業が牽引する形で国際競争が激化する中、NTTは宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想の推進やスペースコンパス社の設立など、宇宙事業への取り組みを強化してきました。超広域衛星センシングプラットフォームの実現に向けては、衛星から地上基地局への伝送効率を高める低軌道衛星MIMO技術と、無線局免許が不要な多様なLPWA端末の収容を可能にする衛星センシング技術が鍵となります。NTTとJAXAは、革新的衛星技術実証プログラムの4号機で実証テーマに選定され、世界初となる衛星MIMO技術を活用した920MHz帯衛星IoTプラットフォームの軌道上実証に取り組んでいます。打ち上げ成功後、初期運用を終えて定常運用に入り、MIMO伝送の通信確立を確認しました。今後の実験成果は、高精細観測や遠隔地のデータ収集の高度化につながる可能性があります。
技術概要。低軌道衛星MIMOで大容量化、衛星センシングで超広域IoTを実現
本実証は、超広域衛星センシングプラットフォームの要素技術を小型実証衛星向けスケールモデルであるLEOMIに実装し、軌道上で検証します。低軌道衛星MIMO技術では、衛星の複数アンテナから地上の遠隔配置アンテナ群へMIMO伝送を行い、地上で受信信号を集約して同期とチャネル推定を経た等化処理により多重信号を分離します。これにより、将来の衛星通信の抜本的な大容量化が可能となり、伝送速度や収容端末数の拡大に加え、高精細な画像やレーダー情報の取得が期待されます。衛星センシング技術では、複数のLPWA方式のIoT端末が同一時間と周波数で同時送信する通信を実証し、衛星で受信した920MHz帯の波形データを用いて電波環境を評価します。さらに、衛星IoTネットワーク利用時の端末電池寿命が地上IoTと同等の年単位になることを検証します。これらが確立されれば、小型省電力端末を地球上のあらゆる場所で大規模に収容でき、地上基地局を必要としない低コストの広域展開が見込まれます。
実験の進捗。チェックアウト完了から定常運用へ、MIMO等化で信号分離を確認
打ち上げ後、クリティカル運用期間と衛星バス機器のチェックアウトを経て、衛星MIMO/IoTの初期運用フェーズに移行し、LEOMIの軌道上での正常動作を確認するチェックアウト試験を実施しました。試験では制御コマンドへの応答が適正であることを確認し、定常運用に問題なく移行できる状態が整いました。定常運用は2025年度第4四半期から2026年度第4四半期までの約1年間を予定し、両技術の有効性を実証します。衛星MIMO技術では、2026年3月13日の初回実験において、LEOMIに保存された二つのデータ系列をそれぞれ変調し、同一周波数で二つのアンテナから送信しました。二局の地上局で受信した後、等化処理により干渉を補償し信号を分離できることを確認しています。干渉補償後の信号点が四か所に明確に収束したことから、MIMO方式による信号処理が想定どおりに機能していることが示されました。これらの結果は、軌道上でのMIMO伝送実現に向けた重要なマイルストーンとなります。
期待される効果と今後の展開。遠隔地IoTと高精細観測の高度化へ
技術確立によって、衛星通信の大容量化と小型端末の大規模収容が可能になります。これにより、観測衛星から高精細な画像やレーダー情報を取得し、気象情報、地形変化、海洋観測、災害予測などの観測精度向上が見込まれます。さらに、衛星IoTにより地上基地局が不要になることで、インフラ設備の点検、環境モニタリング、スマートメータなどのIoTサービスを低コストかつ広域に展開できる可能性があります。NTTは「NTT C89」ブランドのもと、衛星を活用した社会インフラ課題の解決を継続し、約1年間の定常運用を通じて衛星MIMOと衛星IoTの実証を重ねていきます。関連する過去の発表として、2019年のJAXAとの共同研究開始や、2020年の実証テーマ採択、2023年の軌道上実証への挑戦が挙げられます。なお、本技術は2026年5月27日と28日に開催予定の「つくばフォーラム2026」に展示予定とされています。今後の成果報告が、衛星通信とセンシングの新たな実装指針となることが期待されます。
詳しくは「NTT株式会社」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部






















