持続可能な農業に向けて、山間部でもロボット農機の遠隔操作と遠隔監視を安定して行うための通信実証が進みました。NTT株式会社、株式会社クボタ、株式会社NTTドコモの3社は、モバイル通信と衛星通信を組み合わせた最適制御と映像制御技術により、通信の不安定さが課題となる地域でも映像の視認性と伝送継続性を確保できることを確認しました。日本の耕地の約4割を占める中山間地域では、地形や遮蔽物の影響で通信品質の変動が起こりやすく、遠隔監視の安全性確保に直結する通信の安定化が求められてきました。本実証はその課題に対し、複数回線の制御と映像の重要領域優先という二つのアプローチで解を示しています。さらに、本取り組みは今後の完全無人化の実現やデータ活用による農業の社会実装にもつながる位置づけとされています。なお、NTTは本実証の内容を2026年5月27日と28日に開催予定の「つくばフォーラム2026」で展示する計画です。
山間部で顕在化する通信課題と安全確保に向けた要件
日本政府は、ロボット農機の公道走行に関して、遠隔監視による安全性確保を前提に規制緩和の制度整備を進めています。こうした環境整備の一方で、中山間地域ではモバイル通信の遅延や切断が発生しやすく、ロボット農機の遠隔操作や遠隔監視の実用化に立ちはだかる要因となっていました。通信が不安定になると、操作者が確認すべき映像が乱れたり、操作指示の遅延が生じたりするため、作業の継続性や安全確保に影響が出ます。農地内だけでなく、ほ場間の移動区間でも同様の課題が起きやすく、安定した通信経路の確保が鍵でした。NTTと株式会社クボタはこれまでもICTを用いた営農の見える化や自動化に取り組んできましたが、遠隔運用の前提となる通信品質の課題は依然として残っていました。今回の共同実証は、このボトルネックの解消を狙いとして実施されています。
モバイルと衛星のマルチパス制御で安定性を確保
実証では、通信状況に応じてモバイル通信と衛星通信を組み合わせるマルチパスの最適制御を実装しました。モバイル通信回線の品質が低下しやすい区間に入った際、衛星通信回線を併用することで、回線断や大幅な遅延のリスクを低減する構成です。各回線の通信品質に基づき複数回線を制御する技術により、相互補完が機能し、山間部でも安定した通信が可能であることを確認しました。結果として、ロボット農機の遠隔操作や遠隔監視に不可欠なデータ伝送の継続性が高まりました。モバイル単独では厳しい局面に対し衛星を重ねるアーキテクチャが有効に作用した点が、本実証の主要な成果と位置付けられます。現場の通信品質変動を前提に、複数経路を選択的に使うことが安定化の鍵であることが示されました。
重要領域の画質を守る映像制御で視認性と継続性を両立
遠隔操作と監視においては、映像の視認性が安全と作業品質を左右します。実証では、予測される通信帯域に応じて映像圧縮率を自動調整しつつ、ロボット農機の進路や農作物が映る重要領域の画質を優先的に確保する技術を適用しました。通信帯域が細る状況でも、操作者が必要とする領域の解像感を保ち、それ以外の領域を圧縮して全体の伝送を継続します。これにより、回線品質が変動しても映像伝送の安定性と視認性の両立が可能であることが確認されました。映像全体の均一品質ではなく、タスクに直結する領域を優先するアプローチが、実運用での有効性を示しています。遠隔作業時の安全と効率に関わる映像の要件を、通信制約の中で満たす工夫が反映されています。
各社の役割と適用技術の位置づけ
本実証には、NTT株式会社、株式会社クボタ、株式会社NTTドコモの三社が明確な役割分担で参画しました。NTT株式会社は、無線品質予測技術「Cradio」と、品質予測に基づく複数回線の最適制御技術「協調型インフラ基盤」を提供し、実証全体の実施を担いました。株式会社クボタは、ロボット農機と実証フィールドを提供し、実運用に近い条件での検証を支えました。株式会社NTTドコモは、重要領域の映像品質を確保しつつ、無線品質予測と連動して重要領域以外のデータを圧縮する映像制御技術を提供しました。これらの組み合わせにより、ネットワークの変動を前提にした伝送の最適化と、映像のタスク優先制御が一体的に機能しています。通信、機械、映像の三位一体で、遠隔運用のボトルネックを現実的に解消する構成が形づくられました。
将来展望と展示予定
本実証で得られた通信安定化と視認性確保の技術は、ロボット農機の遠隔操作と遠隔監視における通信と映像伝送の実用性を高め、将来的な完全無人化の実現に向けた基盤となる計画です。加えて、データ活用を通じて国内外での農業の社会実装に取り組み、持続可能な農業の実現をめざすとしています。NTT株式会社は、衛星を活用して社会課題の解決を進める「NTT C89」ブランドの取り組みを引き続き展開する方針です。本実証の内容は、2026年5月27日と28日に開催予定の「つくばフォーラム2026」で展示される計画で、技術の具体像に触れられる場が用意されます。現時点で示された成果は、山間部を含む全国エリアでのスマート農業実現に向けた重要な一歩とされています。社会実装に向けた次段階では、さらなる現場適合性の検証や運用設計の具体化が進むことが期待されます。最後に、詳細は公式な展示の場で確認できる予定です。
詳しくは「NTT株式会社」「株式会社クボタ」「株式会社NTTドコモ」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部





















