ChatGPTやClaude、Geminiといった生成AIを、国民が一つのプラットフォームから利用できる。そんな大規模なAI政策がタイで始まりました。タイ政府が進める「TH-AI Passport」は、国民のAI活用を支援するプロジェクトです。中核となるプラットフォーム「AiPASS」は2026年8月31日に利用を開始しました。対象となるのは15歳以上のタイ国籍者で、最大500万人分の登録枠が用意されています。公式サイトでは、プロジェクトは2027年8月31日までと案内されています。期間中は利用料金を負担せず、さまざまな生成AIを利用できます。ただし、すべてのAIを無制限に使えるわけではなく、利用できる範囲にはレベルやクレジットなどの条件があります。
ChatGPTやClaudeなど「33モデル」を集約
特徴は、一つのプラットフォームから複数企業のAIを利用できることです。TH-AI Passport公式サイトには、2026年8月28日時点で15の提供元による33モデルが掲載されています。ChatGPTでは「GPT-5.6 Sol」や「o3 Deep Research」、Claudeでは「Claude Opus 5」「Claude Sonnet 5」、Geminiでは「Gemini 3.1 Pro」などが対象です。
ほかにもPerplexity、DeepSeek、Meta AI、Mistral AIなどのモデルが並び、テキスト生成だけでなく、画像や動画、音楽生成、コーディング、ディープリサーチなど幅広い用途に対応しています。タイ語に対応した「Pathumma ThaiLLM」も用意されています。
ただし「33モデル使い放題」ではない
注意したいのは、「タイ国民なら33モデルをすべて無制限に無料利用できる」という制度ではないことです。TH-AI Passportには利用者の学習状況などに応じたレベル制度があり、モデルによって利用できる範囲や消費するクレジットが異なります。例えば初期レベルでは「Gemini 3.1 Flash-Lite」を使った無制限チャットなどが提供されます。
さらに、AI講座の受講などでポイントを獲得して利用レベルを高めたり、講座やミッションなどを通じて追加のクレジットを得たりできる仕組みです。単に有料AIサービスを無料で提供するのではなく、「AIを学ぶこと」と「AIを使うこと」を組み合わせている点が特徴です。
100以上のAI講座も提供
TH-AI Passportの目的は、AIツールへのアクセスを提供することだけではありません。公式サイトでは100以上のAI関連講座を提供し、デジタル証明書も取得できるとしています。タイ政府は、学生や公務員、企業で働く人、事業者など幅広い層を対象に、AI LiteracyとAI Adoptionを高めることを目指しています。利用者の関心も高く、タイ政府によると、事前登録開始日の8月19日17時時点で登録者は532,692人に達しました。さらに翌20日17時には1,033,635人となり、事前登録開始から約32時間で100万人を突破しました。
「AIを使える国民」を増やす国家政策へ
生成AIを巡る政策では、AI産業そのものを育成するだけでなく、「国民がAIを使える状態をどう作るか」も重要になっています。TH-AI Passportが特徴的なのは、ChatGPTやClaude、Geminiなど複数企業のAIを一つの環境に集め、最大500万人に利用機会を提供すると同時に、AI教育まで組み合わせている点です。企業が社員向けに生成AIの利用環境や研修を整備するのと同じように、国が大規模な「AI利用+学習環境」を用意する取り組みとも捉えられます。
AIを開発する国だけでなく、「AIを使える人をどれだけ増やせるか」。タイの取り組みは、生成AI時代のデジタル人材政策を考える上でも注目されそうです。
詳しくは「TH-AI Passport」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部





















