デジタルシフトウェーブは2025年3月6日、定例セミナー「AI時代到来!クリエイターはどうなる?~これからのクリエイターの役割を考察する~」を開催しました。本稿では、このセミナーで語られた内容をもとに、AI時代におけるクリエイターの役割を、現在の環境も踏まえながら振り返ります。
生成AIの進化により、企業におけるAI活用は急速に広がっています。その中で、「AIはクリエイターの仕事を奪うのか」という問いは、現場レベルで向き合うべきテーマとなっています。実際に制作現場ではすでにAIの活用が前提となりつつあり、この問いは“未来の話”ではなく“現在進行形の課題”となっています。
クリエイターを取り巻く環境の変化
セミナーでは、クリエイターズマッチ代表取締役社長の呉京樹氏が、これまでのクリエイティブ業界の変遷について語りました。かつては、フォトショップやイラストレーターといった専門ツールを扱えること自体が価値となり、クリエイターは高い専門性を武器に収入を得ることができました。しかし、インターネットの普及やクラウドソーシングの登場、さらにはノーコードツールの進化によって、誰もが手軽にデザインに取り組める環境が整いました。
その結果、参入障壁が下がり市場競争が激化し、クリエイターの平均年収は横ばい、あるいは低下傾向にあるといいます。地域によっては生活が困難な水準にまで落ち込んでいるケースもあり、業界全体として構造的な課題を抱えていることが示されました。実際の現場では、スキルを持っていても単価が上がらず、仕事を取り続けなければ生活が成り立たないという声も聞かれます。
AI時代に問われるクリエイターの役割
こうした流れの中で登場したのが生成AIです。セミナーでは、AIの進化によってクリエイティブ制作のあり方が大きく変わる可能性について議論が交わされました。従来、人が担ってきた画像生成やデザイン制作の一部は、すでにAIによって代替可能な領域になりつつあります。しかし呉氏は、単に制作作業が自動化されること以上に重要なのは、「クリエイターの役割そのものが変わること」だと指摘します。
制作すること自体ではなく、何を作るべきかを定義し、どのように価値として成立させるのかを考える力が求められるようになっているのです。
企業に求められる「クリエイティブ戦略」
企業側の視点でも、クリエイティブの位置づけは変化しています。これまでは外注か内製かといった枠組みで語られてきましたが、AI時代においてはそれだけでは不十分です。セミナーでは、生成AIによって大量のコンテンツが生まれる中で、「その価値や信頼性をどう担保するか」が重要な課題になると指摘されました。そのためには、制作プロセスのデータを蓄積・可視化し、組織として再現性のある仕組みを構築する必要があります。
さらに、従来の制作部門は、単なるアウトプットを担う存在から、課題の定義や解決策の設計、さらには生成コンテンツの品質管理までを担う「クリエイティブ戦略部門」へと進化することが求められています。
AIと共存するという選択
セミナーの締めくくりとして呉氏は、AIの進化は避けられないものであり、むしろ積極的に取り入れることがクリエイターの生存戦略であると語りました。実際にAIツールを活用することで、従来のルーチンタスクから解放され、より本質的な課題に向き合うことが可能になります。クリエイターは、制作そのものから一歩引き、より上流の価値創出に関与する存在へとシフトしていくことが求められているのです。
今の時代における意味
セミナーでは「AIはクリエイターの仕事を奪うのか」が議論されましたが、2026年現在では、その答えはある程度見え始めています。クリエイターがAIを使って制作することは、すでに当たり前になりました。その中で、AIに置き換わっているのは「作業としてのクリエイティブ」です。一方で、「何を作るのか」「なぜ作るのか」といった意味を設計する役割は、これまで以上に重要になっています。
つまり今起きているのは、仕事がなくなることではなく、役割が分かれているということです。作るだけの仕事は減り、価値を考える仕事は増えていく。中間の役割は徐々に薄れていきます。2026年現在、生成AIはすでに実用段階に入り、「作れること」そのものの価値は下がりつつあります。クリエイターの仕事はなくなるのではなく、「作る人」から「意味と体験を設計する人」へと変わっているのではないでしょうか。























