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ゼロからDXに取り組んだ地方企業が「日本DX大賞」受賞、現場の声と徹底的に向き合った地道な活動が成功呼び込む

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デジタルシフトウェーブは2024年8月7日、定例のDX経営セミナーを開催しました。今回のテーマは「地方企業がDXを成功させる秘訣~社員の理解がDXを加速する~」。佐賀県で着物の販売店を営む鈴花の担当者をゲストに迎え、同社がDXにゼロから取り組んだ成果と、成功に導いた秘訣に迫りました。

佐賀県佐賀市に本社を構える鈴花は着物を中心に販売し、九州から近畿にかけてグループで販売店約70店舗を展開します。そんな同社はDXを推進し、昨年には優れたDXの取り組みを表彰する「日本DX大賞」のUX部門で大賞を受賞しました。

ITやDXに精通する人材はいない、店舗の販売員は属人的な営業スタイルが確立済、着物を販売する顧客は高齢者が中心…。そんな同社がなぜDXを成功へ導けたのか。今回のセミナーでは、鈴花 代表取締役社長の森啓輔氏と、総務部長兼DX推進室長の有田裕次氏がゲストとして登壇。具体的にどんな取り組みを打ち出したのか、DXをどのように進めたのかの秘訣を解説しました。

3つの柱を軸にDXを推進

鈴花は、明治33年に創業し、現在では佐賀県を拠点に西日本を中心に約70店舗を展開する老舗の着物販売店です。鈴花は、着物の販売だけでなく、イベントを通じて着物の着用機会を創出し、顧客に「体験」を提供することを重視しています。特に、10月29日を「いい和服の日」と定め、顧客を巻き込んだイベントを積極的に展開するなど、着物文化の振興に力を入れています。

鈴花がDXに取り組むきっかけとなったのは、2015年のクラウドツール導入です。当時、鈴花では全国に点在する店舗の店長会議をリアルで行っており、移動時間やコストが大きな課題となっていました。この問題を解決するために、Skypeやサイボウズ、チャットワークなどのクラウドツールを導入し、コミュニケーションの効率化を図りました。

鈴花 代表取締役社長 森啓輔氏
鈴花 総務部長 兼 DX推進室長 有田裕次氏

これらのツール導入がDX推進の第一歩となり、その後の業務改革に繋がる基礎を築きました。特に、2016年の熊本地震の際には、チャットワークを活用して被災地の店舗と迅速に連絡を取り合い、業務の継続を可能にしました。この経験から、クラウドツールの重要性が社内に浸透し、DX推進の基盤が固まっていきました。

鈴花はDX推進において、以下の3つの柱を掲げています。
1.デジタルを活用した新たな顧客体験の立ち上げ
鈴花は、「和服ライフ」というオリジナルアプリを開発しました。このアプリは、着物のデジタルクローゼット機能を備えており、ユーザーは自分が所有する着物や小物の写真を登録し、どこからでも簡単に確認できます。また、コーディネート相談や着物に関する情報提供も行い、着物初心者でも気軽に和服を楽しめるように工夫されています。

2.顧客に寄り添い、顧客の課題を解決するコミュニケーション設計
鈴花は、LINE公式アカウントを活用して、顧客との直接的な接点を強化しました。顧客の興味関心に合わせたセグメント配信を行い、個別にカスタマイズされた情報を提供することで、よりパーソナライズされた顧客体験を提供しています。また、LINEを通じて顧客からのフィードバックを直接受け取ることで、サービスの改善に繋げています。

3.顧客情報の属人化解消とデータ分析の強化
鈴花は、顧客情報の電子カルテ化を進めました。従来は担当販売員が個別に管理していた顧客情報を、タブレットを用いたシステムで一元管理し、社内で共有できるようにしました。これにより、担当者が不在でも高品質なサービスを提供できるようになり、顧客満足度の向上に寄与しています。

鈴花のDX成功の鍵は、社員の理解と協力です。DX推進にあたり、技術的な専門知識だけでなく、現場の声を反映させるために、店長や販売員をDX推進室のメンバーに加えました。また、ITリテラシーの低い社員向けにリモート勉強会を開催し、LINE教室を通じて顧客も巻き込みながら、DXの浸透を図りました。

さらに、外部からの評価も大きなモチベーションとなりました。全国規模のDX活用事例コンテストでの受賞や、メディアでの紹介により、鈴花の取り組みが正しい方向に進んでいることが確認され、社員の自信と意欲が高まりました。

鈴花は今後、これまでのDXの取り組みをさらに深化させ、着物文化を広げるための新たなチャレンジを続ける意向です。特に、地域を超えた顧客エリアの拡大や、着物ファン同士が繋がるコミュニティの形成を目指しています。また、DXの本質を「顧客に寄り添い続けること」と捉え、リアルとデジタルを融合させた新たな顧客体験を提供することで、顧客ロイヤリティを高めていくことを目標としています。

鈴花のDX成功の背景には、社内外からの積極的な評価と社員の理解・協力がありました。地方企業であっても、適切なツールと戦略を用いることで、DXは成功へと導けることが示されました。鈴花の事例は、他の地方企業にとっても大いに参考になるでしょう。今後も鈴花の取り組みに注目が集まることでしょう。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください
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