「果物屋はやめとけ」——子どもの頃、父からそう言われて育った27歳が、西荻窪で80年続いた「中村屋」を継ぐと決めた。プロボクサーからバックパッカーへ、意外な経歴を経て辿り着いた店の名は「果寮中村屋」。2026年12月、朝・昼・夜で表情を変える新しい果物屋が動き出す。
80年、二代目ただ一人で守ってきた小さな果物屋の岐路
1945年、東京・西荻窪で創業した果物屋「中村屋」は、80年以上にわたって地域に愛されてきた。
2025年当時、店を守っていたのは80歳を迎える二代目店主ただ一人。時代の変化と後継者不足のなかで、店は大きな転換点を迎えていた。
このまま歴史に幕を下ろすのか、それとも新しい役割をつくるのか。選んだのは「残すために、一からつくり直す」という道だった。

「果物屋はやめとけ」と言われた27歳が、継ぐと決めた理由
継承を決めたのは、1998年生まれ、まだ27歳の中村由樹氏。
高校時代はボクシング部主将として東京都代表を経験し、卒業後はプロボクサーとして活動。引退後は東南アジアを中心にバックパッカーとして各地を巡った経歴を持つ。
子どもの頃から果物屋は身近だった一方、父からは「果物屋はやめとけ」と言われて育ったという。海外約20カ国を訪れるなかで気づいたのは、日本の果物の品質と、生産者の技術、旬を贈る文化の価値だった。その想いから生まれたのが、新ブランド「果寮中村屋(KARYO NAKAMURAYA)」だ。

抹茶を点てる所作まで。朝・昼・夜で変わる果物屋の一日
果寮中村屋では、果物の販売に加え、演出カウンターで果実をカットし抹茶を点てる所作までを、ひとつの体験として提供する。
朝は果実と日本茶で一日の始まりに寄り添い、昼は旬の果実を主役にした甘味やコールドプレスジュースを、夜は昼とは異なるスタイルでより深く果実を味わう時間を構想している。スタッフは和装で迎える予定だ。
元プロボクサーが果物屋を継ぐと聞いて身構えたが、動機を知ると妙に納得してしまった。
場所は西荻窪駅から徒歩3分。2026年12月のオープンに向け、80年続いた旧店舗から新しい姿へと生まれ変わる過程が、いま静かに進んでいる。






















